- 運営しているクリエイター
記事一覧
EVEN, if... <序>①
彼と私が出会ったのは、ある晴れた日のことだった。私が彼と出会った時、彼は同時に今後彼を苛むこととなる呪いと出会っていた。
これは、彼の死後私のもとに送られてきた彼の手記と、彼との思い出を基に、彼の生きた証と、彼を苛んだ呪いの正体を書き記した、彼の伝記だ。絢爛で、掴みどころがなく、本性の分からない彼の歩んだ十数年の人生の、そのうちの僅か数年を、ここに書き記そうと思う。
私が彼と出会ったのは、20
EVEN, if... <序>②
さて、ここまでたらたらと文章を連ねてきたが、いよいよ私も記憶が混乱してきたので、今一度整理しようと思う。
まず一つ目、「彼」。彼は私が十歳のころから知っている幼馴染だ。まるで兄弟のような存在で、私の一部であるように思えるほど、彼は私を理解し、私は彼を理解していた。知り合った当時から大人びていて、掴みどころのない、どこか絢爛としている少年だった。琥珀色の瞳の奥には、煌々と燃える「彼女」への愛と、深
EVEN, if... <「彼」の手記Ⅰ>①
―それは2018年、5月14日のことだった。その日は晴れ、空はペンキで塗ったように真っ青だった。そんな空に点々と白い雲が浮かび、のどかな雰囲気だったのを覚えている。まだ5月だということも相まってか風は涼しく、しかし季節は夏へと変わろうとしていたため、太陽の光は温かかった。涼しい風と温かい日の光は、春の一日を彩るには十分だった。そんなときに僕は彼女と出会った。それはほんの偶然から始まったのだ。
す