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二度は観たくない映画【ロード・オブ・カオス感想】
先日、映画「LOADS OF CHAOS ロード・オブ・カオス」を鑑賞しました。
(観るなと言われて、まんまと観たくなりました)
その感想です。途中まで、はっきりとしたネタバレは無しです。
ストーリー
ノルウェーの若きギタリスト・ユーロニモスはブラック・メタル・バンド「メイヘム」を結成する。ボーカル・デッドのカリスマ性もあり、バンドは人気を博していったが、次第に「狂気」に巻き込まれていく……。
狂気的で猟奇的な実話
寡聞にして元の実話を知らなかったため、これもうどうなるの……? という気持ちでいっぱいでした。「嘘でしょ!?」みたいな展開も多く、正に「真実は狂気をはるかに超えていた」だなあと。
「元の逸話をあまり知らない」という方は、Wikipediaや事前情報を読まないで観ても面白いと思います。
グロテスクなシーンも多かったですが、それだけで終わらず「理想と現実の背反」「信頼と疑心暗鬼」「友情とビジネス」「狂気と正気」「凡人と天才」など様々な切り口から語れる物語だと思いました。
全てを投げうって理想を追い求めるのか、音楽業界という枠組みの中で上を目指すのか。決して両方は選べない、残酷な展開でした。
迫力のライブシーン
もう誰にも止められないような、ライブハウスの熱狂的な空気が感じられて良かったです。煽られて上がるファンたちのテンション、それにより更に加速するパフォーマンス、という「熱」がありました。
ライブシーンの映し方自体も、メイヘムってバンドはこんなにかっこいいんだぜって感じで好きでした。あとライブが恋しくなりました。
ユーロニモス役の演技
主人公・ユーロニモスを演じるのはロリー・カルキン(マコーレー・カルキンの弟)だったのですが、今書いたように「弟」という紹介がやはり多かったなと。
リーダーとしての自我、周囲への憧れとギャップなどの間で揺れ動く若者として魅力的な演技だったので、「弟」という紹介がいつか取れるといいなあと勝手ながら思いました。一生付き合わないといけない宿命かもしれませんが……。
総括・二度は観たくない映画
グロテスクなシーンが多く、途中まで「大人しく『水を抱く女』を観ればよかったかな……」と思わなくもなかったのですが、だんだんと物語に引き込まれていきました。
鑑賞後は、「二度は観たくないな~!」と思いました。「二度と」ではなく、「二度は」です。
グロテスクなの苦手だし、強烈すぎて忘れられなさそうだし、その日は悪夢見そうだし……と思ったので、二度は観たくないです。
ただ、「二度と観たくない」とは言えない。
そんな映画でした。
映画「LOADS OF CHAOS ロード・オブ・カオス」公式サイト
※グロテスクなシーンがあります。私は「目を閉じる」という古典的手法で乗り切りましたが、「血は一滴も見たくない」という方にはお勧めできません。R-18指定です。
※以下、ネタバレを含んだ短いコラムです。
コラム・越境の強制という"青春"
物語を「越境」という観点で解釈するならば、「ロード・オブ・カオス」は様々な人物の越境だったなと思いました。
序盤で頭を撃ち抜くデッドは、当然のように「生き物としての生と死」を超えています。元々、常軌を逸し気味ではありましたが、「生死」というより大きな境界線を超えてしまった。
個人的には、ライブ中に自ら自傷したにも関わらず、打ち上げの席で傷だらけの腕を不安気に眺める様子がどこか人間的で、印象的な場面でした。
「死」に魅入られ、引きずり込まれてしまったデッドは、本当は死を好んでいたというよりも「逃れられないように取り憑かれていた」ように思えました。傷だらけの腕に眉を顰めたように、生死の境を越えずに済む方法はなかったのかなと悲しくなりました。
同じく作中で死んでしまったユーロニモスも、メンバーの死体写真をジャケットにするあたりそこそこ狂っているのですが、ヴァーグと比べてしまうとかなりリアリストです。「お前はここまで狂えるのか、それとも狂えないのか」と作中でずっと試されている存在のように感じました。
それでもやっぱり、彼には越えられない一線があったのではないかと(アーティスト・ミュージシャン・人間としての善悪は置いておいて)。どうしても踏みとどまってしまった。
一方、ヴァーグは周囲から「やり過ぎだ(=現実世界に即した生き方をしろ)」と求められていたのですが、それは出来なかった。その結果が、追い詰められた末のセンセーショナルなユーロニモス殺しだったのかなと思いました。
元々「(所謂)普通の人」ではないけれど、「かつてのバンドメンバーを殺す」というのも、本当はある種の境界だったのではないかなと。
ヴァーグはもう釈放されているそうですが(その後も逮捕されたり有罪判決を受けたりと話題に事欠かないようです)、越境した彼が気になるような、あまり見たくないような。不思議な気分です。
作中の若者たちの越境は、あまりにも残酷で悲惨でした。しかし、成長過程の越境である「通過儀礼(=イニシエーション)」のような苦悩をそこに感じられるからこそ、この映画は「青春映画」でもあったのではないかと思いました。
おまけ~ブラック・メタルサンドは、これだ。~
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「高円寺メタルめし」さんのコラボメニュー「ノルウェージャン・ブラックメタルサンド」は、ふわふわのパンとシャキシャキのレタス、みずみずしいトマトの触感が楽しく、サーモンの旨味と程よい辛さがマッチしていました! 映画を観た方も、まだの方も是非。期間限定とのことです。
ちなみに、注文時に「青井いんくのnoteを見た」と言うことで1円も安くなりません(それはそう)。でも美味しいのでおすすめです!
以上、青井いんくでした。
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