痛む、痛むぞボクのケツ ~毛巣洞という地獄~
「毛巣洞」という病気を、あなたは知っていますか…?
この病気は、まさに僕のような「肥満で」「毛深く」「座りっぱなしな」「男性」がおおよそ3000人に1人の割合で発症する、珍しいといえば珍しいし珍しくないといえば珍しくない病気なのです。
そんな「毛巣洞」に罹患したので、その体験記を記していこうと思っています。といっても、僕の場合は相当イレギュラーなので、同じ症状で悩まされている人の参考になるとは微塵も思っていませんし、そもそもたぶん僕のやていることはアンチパターンです。あくまで「コイツこんな感じで生きているんだな」って鼻で笑う程度に留めておいてください。
はじめは、ケツの違和感からだった
ある日のこと、「いつものように」ケツが痛み始めます。昔からデスクワークが中心で、かつ家に帰ってもずっと椅子に座ってPCをイジイジしていたので、それに伴ってケツが痛むことはしょっちゅうありました。
なので、今回の場合もいつもと同じくすぐに治るだろう、ということで安定の放置を決めることにしました。
普段起こる痛みは、圧痛がメインです。あの柔らかい双璧のクッションがカチコチチェアに当たると、なんか「痛いなあ…」という感じの感覚。ただしばらくすると落ち着くんですよね。
ですが、今回の痛みはそうではありません。椅子に座ると「うおっふ(書き起こし)」と叫んでしまいたくなるような痛みが瞬時に襲ってきます。
ただ、その電が走った後は体制を変えなければ問題ないんですよね。これが放置をさらに招く原因となりました。
トイレに行くのが怖くなりますよね
そして1週間くらいたち、いつもなら治まるはずの痛みが治まりません。それどころか、電の強さがだんだんレベルアップしている気がします。勇者よ、魔王(ケツ)をいじめないでおくれ。
と、ここで、僕はよく下痢をします。なんでかわかりませんがなります。腸が死んでいるのかもしれませんし、食生活が偏っているからかもしれません。で、今回も下痢です。
下痢の中トイレに駆け込むと、まあ「ズボズボ」って勢いで水分と不純物が出ていくんですね。もう慣れっこです。なんですが、今回はいつもと違う感覚がありました。
「あれ……? 待って??? なんか違和感が…」
勢いよく落下した大便により便器の水が飛散してケツにつく、という経験をした方は多いのではないでしょうか。あの感覚がずっと付きまとうのです。
おかしいな、僕は下痢のはずだ。下痢だから飛散しないはず。そう思って便器の中を覗いてみると…
「「「おっと???????? 便器に赤色の液体が…????」」」
赤色の液体が出ている時点で、僕がその辺にいる小虫とかテントウムシとかその辺でない限り、答えは一つに決まっています。恐る恐るケツを吹く僕。まあ、AIなんて必要なく誰でも予期できる結果が戻ってきました。
そうです。ケツから血が出ていたのです。
しかも、それは偶然にも圧痛がするところと一致しています。
ここで僕は、「切れ痔やっちまったかな…」と少し不安になりました。不安にはなりましたが病院嫌いでもあったので、とりあえず放置しておけばかさぶたになって直るでしょ理論で二度目の放置を行うようになりました。
オムツを履きましょうね~
次の日、いつも通り外に出かける僕。ある異変に気付きます。
「妙に…ケツが冷ややかだなあ…」
で、この感覚は覚えがあります。電車の中とかで急に催して、我慢の限界を迎えすべてがどうでもよくなったあの時に発生する感覚と全く同じです。
慌ててトイレに駆け込み、下着をのぞくとまあ真っ赤。出血がそれなりに多いのです。どのくらいかというと、下着の真ん中が血で染まるレベル。
切れ痔の場合、便を排出した後に痛みと出血があるのが特徴ですが、切れ痔は出血量が少ないことが多いとされます。ここで僕は「血栓性外痔核」かな…と判断することに。どうして自己判断するんですかね。それだから出先でもインシデント起こすんですよ。
風呂に入り、ケツを改めて触ってみるわけですが(本来これはいけませんよ)、するとBB弾くらいと思わしきしこりができていることに気付きます。触ると痛い。この時感じる痛みは「鈍痛」です。体の奥深くにズモモモモってくる感じの痛み。とりあえずこの日は念入りにケツを洗い、そのまま寝ることに。
次の日も、その次の日も出血が止まりません。といっても出血量は大したことではないので、要は常に擦りむいた傷からじわりじわりと血が出ている感じです。あ、これやばいっていうのか?
まあ、でも大丈夫だろうということで三度目の放置。もはや病院嫌いもここまでくるとね。
ズンズン、カユカユ、ヒリヒリ
鈍痛がしばらくして終わり、次はめちゃくちゃかゆくなってきます。しかし経験上かきむしると悪化することが分かっています(以前ぞうさんの耳を包む皮が蒸れてかゆくなり、かきむしったことで無事に皮膚科のお世話になることになった経験から)。なので我慢。するとカユカユムーブはすぐに収まります。しかし、次はヒリヒリタイム。刺激物をたくさん摂取した時のヒリヒリしたケツの痛みがやってきて、しかもこれが始まるとまた軽度の鈍痛が始まります。
そして、ヒリヒリタイムが終了すると、電が走り始めます。ズンズンタイムです。同じずんずんなら東北姉妹とズンズンしたかった。あ、意味が違いますね。はい。ごめん。
このサイクルを繰り返すうちに、なんかもうこれが定着してしまい、血を見ても「あ、まーた出血」、痛みも「はいはいズキンズキン」と軽く流すようになりました。いや痛いので叫びますけどね。でももうしんどい無理ダメあああんって感じの痛みではないのです。それこそ、股間をけられた時の痛みとか、みぞおちのあたりをやられた時よりは痛みが少ないので、我慢もできます。
そうこうして、3か月近くがたちます。もちろん病院にはまだ行っていません!
寝返りをこれほど恨んだことはあるだろうか
ある日の夜。いつも通り寝ます。仰向けになりケツに全体重をかけるとしっかり痛むので、普段から少し横向きになり寝ています。
今回も、横向きになり寝ます。そして3時間後、しっかりと中途覚醒するんですが(これは別のお話)、今回はこの後が地獄でした。
何もしていないのに(圧を加えていないのに)鈍痛が響きます。雷が5秒に1回来ます。ズキン、ズキン、ズキン。片頭痛と似たような感じでしょうか。もちろん、軽く触ると「おえうえあ(文字起こし)」と叫びます。体勢を変えると、ケツが引っ張られてしまうからかさらに痛みを増し、「ねひゃとりあぽ(Could not translate it)」と暴れまくることに。異常成人国家は今日も眠れない日々を過ごす…。と思いきや痛みのピークは30分くらいで落ち着きます。そして、この時ケツに猛烈な汗をかいていることに気付きます。
「汗のせいで蒸れて痛んだ…?」と、布団を取っ払い寝たところ、しっかりとおなかを壊し下痢になったとさ。それがいけないんじゃないのですかね。
これ以降、時々雷が連続で落ちることが発生し、どうにもこうにもいかなくなってきたのでいよいよ病院へ行くことを決意します。ケツだけに。さむ。もう今冬ですよ。
ついに明かされる、「毛巣洞」
とりあえず、近所にある肛門科に受診することに。手続きを終え、血圧を測ります。しかしこの血圧を測る作業がまず地獄です。僕は脈を感じるのが大の苦手です。血圧計で締め付けられた瞬間、過呼吸が発生するレベルの苦手具合です。おかげでいつも高血圧。
今回もしっかり高血圧患者もびっくりの血圧を記録して、この旨を伝えると「あら~」と看護師。あら~ですよね。あら~しか言えませんよね。あら~ですよ。
で、番号が呼ばれいよいよ受診。院長先生の指示で、肛門科あるあるのプリプリしたナマケツを大公開します。看護師(女性)一人に下着を脱がされ、ベッドに胎児の格好で寝転がります。赤ちゃんってこんな体制でくるまっていたんだなあ…と、初心に帰りました。帰りすぎか。
幸い、僕は誰かにケツを見られるのも別にどうとも思っていなかったので抵抗なく晒せましたが、だめな人はダメみたいです。院長先生の、
「キミみたいに堂々とお尻を晒す人はなかなかいないよw」
となんかあおられました。気にしません。そして触診が始まります。長丁場を覚悟しました。しかし触診はわずか15秒で完了。下着を履き、赤ちゃんから一気に成人男性に成長したところで結果を聞きます。
「毛巣洞ですね」
実は、僕は病院にかかる直前に痔の種類について調べていました。「血栓性外痔核」「切れ痔」「内痔核(いぼ)」「痔ろう」とあり、最悪のケースは痔ろうを覚悟していましたが、まさかのどれも外してくるとは…盲点でした。なんなら最初きいたとき病名わかりませんでしたもの。後から調べて判明しました。
「とりあえず切開するね、んじゃベッドに横たわって」
待ってくれ、切開!?
そう、ここから、第二の地獄が始まる。
毛巣洞とは
とりあえず出てきたサイトの引用。
毛巣洞は、臀部に生えている毛が皮膚の下に膿瘍(膿のたまり)を作る病気です。 多くは臀部正中上部の割れ目に小さな穴と、その下に触れる膿のしこりとして認識されます。 多くは体毛の濃い男性に認められ、タクシーやトラックの運転手など、長時間座位で過ごす人に多く発症します。
ぴったりだね! 運転は免許ないからできないけど、「割れ目にできている」し「体毛の濃い」「男性」なのでもうかからない理由がないです。
で、今回の切開ではこの化膿した炎症にメスを入れて、膿を排出する、というものとなります。
さて、ここで合点が行きました。出血がするというもの。これは、確実に「膿(と血)が破れて出てきた」ということになります。
確信しました。
そして、切開の手術を待つ間、さらに衝撃の事実を告げられます。
「これね、根治するには入院して手術する必要があるよ」
頭が真っ白になりました。病院嫌いの僕、麻酔とか手術とか聞くともう震えが止まりません。まあ、何はともあれ、まずは今行われる切開。不安になりつつ、ベッドで再び赤ちゃんに退化することに。
麻酔が効かないってことはないそうです
切開は膿を出すだけなので30分で終わりますが、また膿がたまって化膿を起こすので根本的な解決にはならないとのことです。それでも今の痛みを抑えるにはそれしかないと思い、いざ切開開始です。
看護師さんが「局所麻酔を打ちます。ちくっとしますよ~」と宣言。僕は身構えました。まず1回。チクっとかそんな次元じゃないです。ブスッです。死にそうです。「ミッ」と叫びました。病院で。もともと感覚過敏なので…。
麻酔が効いたかを確認するために、おそらくメスで患部をちょんちょん触られます。「これ痛いですかぁ?」と看護師。痛いです。普通に痛いです。なんならさっきの注射と同じくらい痛いです。死にそうです。って長文で言いたいくらいなんですが、「みっ」「あっ」「つっ」しか言えません。赤ちゃんポーズをしているせいで知能や言動まで赤ちゃんになっています。
ちなみにこの時、言葉では説明しづらいですがケツを背面に思いっきり突き出している状態で、もちろんケツと反対方向に顔は向いているため、手術で何をしているかはよくわからない状態です。しかしわかるのは、全然麻酔が効いていないということです。
「●●さん、(聞き取れず)追加で!」と院長先生。たぶん麻酔の成分でしょう。2度目の注射が入ります。「え¨っ」ともはや声にもならない叫びをあげ、麻酔が入ります。「これ、痛いですか??」「はい…(小声)」全然ダメ。そして3回目。しかし変わりません。ここでもう入れられる限界量に達したとのことで、衝撃の一言が。
「麻酔なしで切開するか!」
地獄に落とし穴ができたみたいです。
待合室の人ごめんなさいほんと
さて、手術室(といっても簡易的な処置を行うだけの部屋)は待合室の隣にあり、扉1枚とカーテンだけで仕切られています。そんな中、麻酔なしで切開が行われることになりました。響き渡る悲鳴。23歳男性が喚くその声は、おそらく待合室にも届いていたことでしょう。ごめんなさい。怖がらせてしまって。でも痛いんです。許してください。
切開はおそらく15回くらいメスが患部に入りました。そのくらい痛かった覚えがあります。
「はい、終わりましたよ~」
看護師の言葉でほっと一息。ジンジン来る。でも、鈍痛というよりは一時的にその傷口をえぐられた痛みに変わったので少し落ち付きました。
そして、「抗生物質」と「痛み止め」を出されることになりました。抗生物質は膿の炎症を抑える効果があるらしく、経過観察で3日後、1週間後に来るように言われました。
早速処方された薬を飲み、帰路へ。その日の夜はシャワーもウォシュレットも禁止ですが、痛み止めが効いたのか、安眠できました。
薬とは、偉大なものである
そして処方された5日分の薬を飲んでいる間は、多少違和感はあれどもあまり痛みを感じない。なんて晴れ晴れしているのだろう…といった爽快な気分になりました。なるべく座らないように立ち座り寝っ転がりをローテーションしながら、3日後の経過観察がやってきます。
いつも通りベッドで赤ちゃんになり、触診です。何も言われずに患部を引っ張られたのは今もわけがわからないですが、とりあえず経過は良好なので次は1週間後。ちょうど薬が切れ2日後となります。
薬を飲んでいる間は痛みはほぼないので、少し持病持ちの人が薬を飲んで落ち着いている理由が分かった気がします。
1週間後…
そんで、1週間後の経過観察。再び赤ちゃんになり、触診を受けます。
「うん、大丈夫そうだね」と言ったそばからメスを1回入れられました。だあっと膿が出たらしく、
「んで、これ治すには切除手術をしなきゃいけない。大きい病院で入院して手術受けることになるよ。どーする?」
と言われました。はい。先延ばしにしていた重大な決断の時期がやってきました。ここで僕が出した答えは、
「今は様子見します。ですが、次腫れたときは検査をしっかりとやってもらいたいので、(行くかわかりませんが)紹介状を書いてください。なお、紹介状の病院は(今住んでいる場所ではなく)実家の近くの××病院にしてください」
チキンにも程があります。そしてわがままが強い。しかし、第三者しかも初対面の人にナマケツを堂々と晒せる僕にとって、こんなプライドを捨てたわがままな強気な発言をすることなどたやすいことでした。そしてそんなわがままな僕の要求にもこたえてくださり、紹介状をもらって通院は終了しました。この時点ではなぜか入れられたメスの痛みがじわじわ来る程度でした。
そして、いま。
結論から申し上げますと、痛いです。
痛み止めをやめてからまたぶり返したようで、やはり治すには根治手術を行うしかないのかなあ…と思っています。
しかし、抗生物質で一時的に収まるなら、あんな怖い手術を経験するならば…ということで、しばらくは抗生物質で耐えてみようと思ったりしています。そうです。冒頭に書いた注意事項、この決断はアンチパターンとしてみてほしいということです。
根治手術をすれば、確かに基本的に治りますし、(同じ生活習慣をしていなければ)再発率も10%以下と(低くはないものの)高くはありません。医者もそういうんですから、普通の人は根治手術を受けるべきです。
しかし、世の中にはそんなことをするお金がない人、度胸がない人がいます。それが僕です。根治手術をした体験談とかはほかの方が結構ブログを残してくださっているので、そちらを見ていただければと思いますが、根治手術をしないという意気込みでどこまで行けるのか、それを一つのアンチパターンとしてみていただければ幸いです。
マジで、痛いんですよ?
なんかすごいまじめな文章になってしまいましたが、この病気は珍しいとは言えども他人ごとではありません。皆さんも気を付けましょう。
僕は幸いまだ人生最大の激痛、としては認定していませんが、放置するとこのような状況になることもあるそうです。
今後も、治ったり悪化したりした場合は適宜別記事か何かで追加していこうと思いますが、まあ悪化したらこんな記事を書けなくなりそうなのでどうなるか。。。ですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
NOTEはこのような形でなんとなーく書き記すブログのような使い方を今後もしていく予定です。
ちなみに
Twitterはもうほとんど見ていませんがMastodonをやっています。
時々「ケツイタァァ」とか叫んでいるので興味があれば見ていってくださいな。
https://mstdn.gingarenpo.com/@Gingarenpo