見出し画像

【エンジニアインタビュー】Ginco主力プロダクト「Ginco Enterprise Wallet」・全62通貨対応までの軌跡

こんにちは、『経済のめぐりを変えていく』をミッションに掲げるGincoの採用担当です!
「エンジニアインタビュー」では、Gincoで実際に活躍するメンバーが取り組む業務や達成したトラックレコードについて、現場の社員の声を掘り下げていきます。

今回の記事では、Gincoの主力プロダクトの1つ、業務用暗号資産ウォレット「Ginco Enterprise Wallet(GEW)」において対応通貨が全62種類を突破したことを踏まえ、開発初期から今日に至るまでの経緯や苦労、エンジニアから見たGEWの強み、Gincoエンジニアチームが考える開発方針、率直な感想などを、GEWのPM及びフロントエンド開発を担う吉井さんに伺ってみました。ぜひご覧ください。

また、今回の記事は、2022年にプロダクトの開発思想について伺ったインタビューをベースにしています。ぜひそちらの記事もご覧いただけると幸いです。


業務用暗号資産ウォレット:Ginco Enterprise Walletとは

主に暗号資産交換業者など暗号資産を扱う金融機関向けの業務用ウォレットサービスです。暗号資産の入出庫管理や、操作アカウントの権限管理、ダッシュボードでの在庫状況確認や監査や税務に対応したデータのエクスポートなど、事業者が必要とする用途をカバーしたシステムパッケージです。

サービスのポイント

①暗号資産交換業者などが扱える通貨数をすぐに増やせる

2024年、日本国内には29の暗号資産交換業者が存在します(※1)。いまの市場環境において、取り扱う暗号資産(仮想通貨)の豊富さは各交換業者を差別化し事業の成長を左右します。
GEWは豊富なブロックチェーンに対応し、スピーディに必要な通貨を追加することが可能なため、導入することで競合する大手取引所との距離を一気に縮めることや、新規に利用者を獲得することが可能になります。
(※1)金融庁『暗号資産交換業者登録一覧』令和6年8月31日現在https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf

②堅牢なセキュリティと使い勝手のいいシステム

マルチシグ(暗号資産を安全に管理するために、複数の人やデバイスを介さないと送金等の操作ができない仕組み)を前提にコールドウォレットや日常的に活用するホットウォレットを柔軟に組み合わせることができ、堅牢ながら使い勝手のいいシステムを実現しています。

③サードパーティを利用せず秘密鍵を自社管理

お客様である暗号資産取引所は少ない鍵管理端末で、何十万のアドレスを扱うことが可能になります。人為的なミスが起きにくく安心してご利用いただけるサービスです。

開発者視点で解説:フロントエンド視点でのポイントや工夫

吉井 竜太さん(開発部門 開発部 フロントエンドエンジニア)

経歴
大学卒業後、都内IT企業に入社し、SaaS事業部にてフロントエンド開発に従事。2019年1月より株式会社Gincoへ入社し、GEWのフロントエンドエンジニアとして構想段階から携わる。現在はGEWのPMと新規機能のフロントへの組み込みを担当。チームメンバーからは物腰も柔らかいと評判で、ブロックチェーン業界の動向にも敏感。フロントエンドの開発だけでなくお客様へのヒアリングや要望のくみ取り、サービス改善に関わる交渉など、広範囲に渡りフロント領域で活躍中。

以前のインタビューでは、「UIはできる限り汎用性を持たせていること」や「ブロックチェーンを知らなくても使えること」など“使いやすさ”と“安心”がプロダクトの根幹にある開発思想について詳しく伺いました。今回は「62通貨対応」というトラックレコードを踏まえ、ここまでプロダクトを成長させることができた工夫などを掘り下げさせてください。

62通貨の全てのUIを共通仕様で網羅しようというところまでは、正直想定していませんでした。現在62通貨に対応していますが、未だに新しい仕様を持った通貨に出会うこともあり、その度に驚かされます。特に、ブロックチェーン側の複雑な仕様を見た時には、どうしてこんな仕様にしたんだろう...と頭を抱えることもあります。

しかし、暗号資産の送金は資産に直結する非常に重要な機能です。誤送金が発生すれば大きな問題となり、お客様も送金時には非常に緊張感を持たれています。そのため、UI設計に落とし込む際には、ユーザーが悩むことなく、安心して送金できる一貫した体験を提供することを最優先に考え、極力特別な対応を挟むことは無くなるようにしています。

ブロックチェーンごとの仕様の違いにはプロトコル開発者の思想が反映されているのかもしれませんが、そうした差分をアプリケーション内で吸収するのは大変ですね。ちなみに、暗号資産の送金における「特別な対応」というのはどういうものですか?

一般的に、GEWを利用するお客様は、その組織内においてガバナンスとセキュリティを担保するための標準的な業務プロセスを設計し、この手順から外れないように業務に取り組んでいます。

しかし、対応する通貨やブロックチェーンによりますが、この標準的な業務プロセスから外れる仕様があります。例えば、送金用のトランザクションを作成してから送金を完了させるまでに一定の制限時間が設けられているケースもあります。このようなケースに直面した場合、お客様に都度標準的な業務プロセスから外れた例外処理を要求してしまうと、不安や緊張感を助長してしまうかもしれません。

お客様に不安や緊張感を感じさせず、標準的な業務プロセスを維持するためには、自動化できる部分や効率化できる処理を見極め、UI/UXへ落とし込んでいかなくてはなりません。そのため、バックエンドエンジニアとも密に連携し、技術的な制約や複雑な仕様に対応しながら、ユーザー視点を大切にし、直感的で安心感のある送金プロセスを目指しています。

複雑な仕様にも対応するウォレットを開発するからこその悩みだと感じましたが、62通貨の実装を対応させるまでに、吉井さんなりにどんな苦労や困難がありましたか?

以前の記事の時と比較すると、新規通貨の実装対応に関わるメンバーが増えたことや、多くの実装依頼をいただけるようになったことで、チーム全体で成長の機会を得られ、新規通貨の実装対応のケイパビリティは大幅に向上したと感じています。そのおかげで、1〜2ヶ月の間に仕様が全く異なる3つの通貨の実装が同時並行で進行することもあります。その対応を一気に進めなければならない時期には、非常に嬉しい反面、決められた納期の中で全てをやり切らなければならないというプレッシャーを感じることも多々あり、大変さも感じています。

また、暗号資産の市況は先行きを見通すことが困難で、実装中に市場が盛り上がっていても、完成する頃にはブームが過ぎ去っていることも少なくありません。そのため、実装している通貨をお客様の期待するスケジュール通りにリリースできるか、上場のタイミングで依頼をいただいた企業の売上や利益に繋がるかといった点については、常にドキドキしながら進めています。こうしたプレッシャーはありますが、それもやりがいの一つとして楽しんでいます。

GEWが対応する全62通貨(2024年9月)

通貨を実装するには、ブームを意識したスケジュールが重要なんですね。62通貨というのは、日本国内だとどのくらいのインパクトだと考えますか?

仮に62通貨すべてを上場している取引所があるとすると、単純な通貨数では国内トップクラスになると思います。もちろん、通貨を上場した分だけ利益が生まれるといったものではありませんので、単純に通貨数だけで比較することは難しいかもしれません。しかし、重要なのは、それだけのスピードで通貨の実装とメンテナンスが可能なブロックチェーンエンジニアが揃っているという点です。

仮に全て自社エンジニアで賄おうとすると、ノードのメンテナンスや各通貨の仕様を熟知している専門的なエンジニアが必要になります。これには非常に高いコストがかかるだけでなく、市場にはそのようなエンジニアが限られているという現状もあります。本来、それだけのエンジニアを抱えることが難しい、あるいは市場の動向が不確実な中で戦略的にエンジニアを抱えないと判断している企業も多い中で、そういった企業に対して迅速かつ積極的に通貨の実装を支援できるという点はチームの大きな強みだと考えています。

このスピード感と対応力は、ご利用いただいているお客様にとっても心強く感じていただけているのではないかと思います

なるほど、国内では62通貨を実装できるエンジニア組織を作り上げることが課題なんですね。
海外の取引所だと62通貨というのはどうでしょうか?以前のインタビューではGEWは「ウォレットとして“在るべき姿”を常に考え続けてきた」と語っていましたが、今後、目指していくものはありますか?

海外の取引所と比較しても、62通貨に対応しているというのは十分競争力があると思っています。以前のインタビューでもお伝えした通り、確かに海外の他社は私たちより多くのエンジニアを抱え、非常にリッチなサービスを展開していますが、すべての機能が実際に使われているかというとそうではないことが多いです。私たちはその点を考慮し、お客様が実際に必要とする機能に重点を置いた、実用的なサービスを目指しています。

加えて、日本は特に暗号資産に関連する法律が海外と比べて非常に複雑で、そうした法的な制約を理解し、遵守できる開発メンバーを揃えていることも当社の強みです。単に送受金や資産管理などの基本機能を提供するだけでなく、法的要件を満たしながらも、例えば、監査や税務に対応したデータのエクスポート機能、ユーザー目線だとステーキングなどより広範な機能やサービスを提供できるよう努めています。

また、暗号資産の送受金や資産管理に関わる日常業務をGEW内で完結できるよう、各種サービスとの連携も進めており、今後もさらなる機能拡充を図っていきます。これにより、お客様が安心して効率的に業務を行える環境を提供し、幅広いニーズに対応する包括的なサービスを実現していくことを目指しています。

お客様以外の業界の方からも「GincoのウォレットはUI/UXが特にいい」と高評価を頂く中大変になること、懸念することはありますか?

各通貨はリリース後も継続的なアップデートや仕様変更が行われるため、メンテナンスが不可欠です。さらに、対応する通貨数が増えるにつれ、それらのアップデートに対応するためのコストや工数が増加します。また、特定のエンジニアに知識が集中すると属人化が進み、メンバーの交代時にスムーズな引き継ぎが難しくなるリスクも感じています。

そのため、チーム全体で、通貨開発時には「Design Doc」と呼ばれる開発仕様書を作成し、他のメンバーでもメンテナンス可能な状態を保つことを心がけています。これにより、知識の共有と属人化の回避を図り、長期的な運用体制を整えています。

軌跡の先:技術が事業成長に直結する実感。グローバルなチームでの挑戦

最後に、エンジニアとしてGincoで働く魅力を教えてください。

ご利用いただく当社のサービスがお客様の業績やIRに直結しているように感じられるところは面白いと思います。導入企業様がIR発表などで「対応通貨を増やし売上拡大・利益向上に繋がった」という結果を公表してくださったときはすごくモチベーションが上がりました。

国内で存在する多くのSaaSはコストを抑えることを目的としたサービスですから、会社利益のトップラインを上げることを目的としたサービスは少ないですよね。
その点、Gincoのサービスはブロックチェーン市場で戦う上での武器として新規対応通貨等をお客様に提供するものですから、事業実績へのダイレクトな影響を実感することができます。
さらに、今年5月にはインド拠点が立ち上がり、海外の優秀なエンジニアと協業する環境が整いました。グローバルなチームで新たな技術に挑戦しながら、国境を超えたダイナミックな成長を体感できる組織へと進化しています。国内外の多様な視点やスキルを持つ仲間と共に、ブロックチェーン業界で世界を舞台にしたチャレンジを楽しむことができる環境はエンジニアにとって刺激があると思います!
ブロックチェーンノードやウォレットといった、ブロックチェーンサービスに不可欠な領域に直接触れ、ブロックチェーンエンジニアとしてのキャリアを形成できるGincoでの働き方にご興味をお持ちの方は、ぜひ、お話しましょう!