小説:じじい
※これは、「毎日でぶどり」の作者、橋本ナオキ先生がYouTubeで配信されているラジオ「でぶどりラジオ」にて橋本先生が「理想のじじい像」を存分に語られていたので、思わず「もしもこれが小説になったら、、、」と言う妄想のもと、エセ浜(銀とも言う、うさとも言う)が書いた小説の出だしである。
参考:https://youtu.be/PhMsimyb8S4
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「あの山には立ち入っちゃあかんよ。」
僕たちはものごころがついた頃から、親に、大人たちに、そう言われて育った。
だから、幼稚園に入っても、幼稚園を卒園しても、小学校に入学しても、「あの山」には立ち入らずにいた。
しかし、「小学生になった」と言うのは幼い僕にとって、「自分は大人に一歩近づいた」と思うのに充分すぎる出来事で、それは僕だけではなかった。
「あの山に、みんなで行ってみない?」
そんな話が出たのは、夏休みも目前の、蒸し暑い雨上がりの放課後だった。
僕と、友達二人の3人は、まるで立ち入り禁止区域を潜入捜査するような心持ちで山に入っていった。
山は思ったよりも高くなく、存外子どもだけでも簡単に登ることが出来た。
そしてついに、大人たちが「立ち入ってはいけない」と言った元凶に出くわすこととなる。
「見かけん顔じゃのう。どこから来た。」
不機嫌そうな、だがしかし腹から出ているエエ声が響いた。
僕たち3人は恐る恐る振り返った。
そこには今まで見たこともないような、いかつい表情をした、華奢で、F肩のお爺さんが腕を組んで立っていた。
「どこから来た?と聞いておる。答えられんのか?」
…あぁ、大人たちが「立ち入るな」と言っていたのはこのお爺さんがいるからだったんだ。
口には出さないが3人とも同時にこのことを感じ取ったのが空気を通じて伝わってきた。
どうすれば良いのか全く分からず、僕達は立ち尽くした。
あのお爺さんは子供をとって喰うのかもしれない。
あのお爺さんは卵族の末裔なのかもしれない。
あのお爺さんは…
様々な不吉な予想が頭をよぎる。
「わぁーっっ!!!」
そう、こういう時は逃げるが勝ちなのだ。
すっかり大人気取りで山に入ったことを心の底から後悔しながら、僕達は全力で走り出した。
「待ちなさい!雨あがりにそんな勢いで走ると…!」
お爺さんの、その声が聞こえるが先か、僕はぬかるんだ道に足をとられ、盛大に転んだ。
足が痛く、立ち上がれない。
先ほどまで潜入捜査の同志だったはずの友達二人の姿は、どんどん小さくなり、しまいには見えなくなった。
…どうしよう。
その時だった。
「だから待ちなさいと言ったのに。最近の子は人の注意も聞けんのか。」
さっきのお爺さんが真後ろに立っていた。
怖い。でも逃げられない。
お爺さんは僕の膝を見るなり、手に持っていた水筒の水で泥を洗い流し、
「傷にはこの薬草が効くんじゃ」と、道端の草をもぎ取り、手でもんだあと傷口に当てた。
しばらくすると、血は止まっていた。
「お前も、大人たちに"ここには来るな"と言われているのか?」
僕は黙って頷いた。
「そうか。では一緒にいた友達二人とあまり時間が開かないうちに山を降りたほうが良いだろう。」
僕の中の恐怖が次第に薄まり、段々と好奇心に変わっていくのがわかった。
「お爺さんは…怖い人じゃないの?」
「怖い人かどうかはお前が決めることだ。ワシが決めることでも、お前の周りの大人たちが決めることでもない。」
僕はドキリとした。このお爺さんは山の下の町の大人が、みんな自分を避けているのを知っているのだ。
それなのに、僕を助けてくれた。
僕には、このお爺さんが悪いお爺さんには見えなかった。そう、例えF肩だとしても。
「お爺さん、手当してくれてありがとう。」
「"お爺さん"だなんて上品な呼び方はやめとくれよ。」
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
「そうだな…"じじい"…かな。」
「…じじい!じゃあ今度からはじじいって呼ぶね!今日は友達も行っちゃったし帰るけど…じじい、また遊びに来てもいい?」
「それはお前が決めることじゃ。」
「じゃあ、来ていいんだね!やったぁー!じゃあね、じじい!また来るねー!」
僕は薬草のおかげで全く痛くなくなった足で急いで下山した。
先に下山した二人に「じじいは怖い人じゃない」と一刻も早く教えるために。
絶対、みんなで、また遊びに来よう!
これが、僕とじじいの出会いだった。
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ふざけすぎてすみません(笑)
続編は気が向いたら書きますw