買い叩かれる
前回より
「今更話はなかった事にはできない、とにかく早く売ってくれ」
兎にも角にも、こんな話で始まった2度目の売買交渉でした。
僕の立場はいわば連絡役です。
先方も仲介業者のおじさんも“社長と直に話させろ”と迫りましたが
そこは僕は頑として譲らなかったのです。
別に男気では有りません。
もし話をさせたら簡単に買い叩かれるに決まってるからです。
きっとそこは負けたくなかった、、、そんな感じだったのだと思います。
ですから結果的には社長の仮病は大正解だった。
相手からしたら社長が同席しなかったのはさぞ肩透かしだったと思います。
、、、
でも結局は買い叩かれた訳です。
“それでいいから売っちゃうわ”
社長の放った言葉をハッキリと思い出します。
契約交渉後、早々に会社に戻り “具合は良くなった” と白々しい顔の社長は
僕を顔を見るや否や、、、
”で、幾らだって?”、、、
“それでいいから売っちゃうわ”
有難うとか、ご苦労様とか、お疲れ様とか、行けなくてごめんね、、、とか
そんな労いの言葉は一つもなくそう言い放ったのです。
その日、顧問会計士を含めた3人で売買交渉の報告とその後の対策を兼ねた打ち合わせを予定していたのですが、そんな打ち合わせなど必要なかったのです。
社長はあっさり条件をのんだのです。
自社ビルの話は消えました。
会計士の先生がムキになって反対していたのを憶えています(笑)
先生は先生なりに“何か”を期待していたに違いなかった。
でもそんな思惑は一瞬にして霧散したのでした。
では僕はどうだったのか、、、
その辺りは全然記憶にないのです。
ああしてこうして、、、
当時、間違いなく欲に塗れていた僕でしたからあれやこれやと皮算用を
抱いていたに違いないのですが、、、
全く憶えていないのです。
思い返せばこの頃から僕は変わっていったのです。
社長との関係は何ら変わらずでしたが、例えば“欲の質”が変わり始めたともいうのでしょうか、仕事の大きな目標が僕の頭の中を占領し始めていたのです。
“この会社を大きくする、、、大成功させる!”
この目標実現に朧げな道筋を描き始めていたのです。
本当です。
ただ漠然とやる気になった訳ではなく、そうして変わっていったキッカケがあった
のです。
取り組んでいた商品リニューアルの企画で画期的なアイデアを僕は思いついたのです、、、インターネットを利用した画期的な販売方法です。
今の世の中を見渡すと余計にこのアイデアは画期的だったと少し悔しくなりますが
もう僕の心の中には疼く虫は一匹も住んでいません(笑)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
決着
結局はしてやられた。
不動産詐欺か?
もしかしたらです。
何の証拠も有りませんが、もしかしたら仲介業者のおじさんとガラガラ不動産は
初めから又は早い段階から結託していていたのではなかったか、、、。
後からそんな風に思ったことを憶えています。
話がついた後の事、何かの機会で会計士とサシでお酒を飲んだ時に2人とも同じように思っていてその話で大いに盛り上がったのを憶えています。
つまり仲介業者のおじさんも湿地帯だったことを知っていて、あえて知らんぷりしてあんな状況に持ち込んだとしたら、、、
まんまとしてやられた訳です。
でも、湿地帯であったとしてもそれが買い叩かれる理由にはなかったはずです。
だって、既にそこは宅地として整備されており、それを社長(正確には元夫)が
購入しているのですから何ら問題なかったのです。
社長にしても買い叩かれたとはいえ別に損したわけではありません。
”要らないもの”をただ売り飛ばした、、、
叩かれたとはいえ大金を手にした訳ですから、渡りに船だったのです。
今更ですが本当に妙な一連の出来事でした。
ようやく面倒が片付いた僕は心に秘めた目標実現に向けて心置きなく
全集中していったのです。
続く