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20th BEST MACHINEと1/20と19/20
7月に20周年、あまりにも特別な武道館公演を成し遂げたUNISON SQUARE GARDENが回る今年4周目のツアー、「20th BEST MACHINE」。
2024年10月1日の宇都宮市文化会館公演、10月6日のぴあアリーナMM公演Day2に参加してきた。
特に栃木公演については自分自身が人生の大半を過ごした土地であること、また前回の"Ninth Peel"ツアー宇都宮公演の際はユニゾンを好きになりたてホヤホヤだったため一般先着しかチャンスがなく、当然チケットを手にすることができずに涙を呑んだ経験があり、行く前からすでに思い入れが強かった。
そのうえ20周年、噂によると「有名な曲しかやらない」というオールタイムベストとしては常道だが彼らの素行からすると前代未聞のツアーである。
というわけでいつものようにつらつらと思ったことを書いてます。ライブレポというものではないので栃木と神奈川の記憶がまだらに混じっていますがご容赦ください……
あと曲によって文字数がだいぶ違うのもすみません。修行が足りてない。
開演前、ステージのバックに映されたツアーロゴの下に「2024.10.1 TOCHIGI」の文字があったことが嬉しい。(横浜の時はTOUR FINALの文字も)
1.センチメンタルピリオド
どこかの公演の斎藤氏MCで、シングル曲はバンドの足跡だという趣旨のことを言っていたというのを見た気がするけれど、確かにそれなら始まりはこの曲しかない。
7/24の武道館公演の最後に演奏されたときと同じライブイントロから始まった。
このイントロを聞くといつも、夜明けのイメージが思い浮かぶ。真っ白な雪原の地平から朝日が昇るような、あるいは路地裏の窓のひとつに光が差し込むような、そういう風景だ。
歌詞と特にリンクしてない、ただ音だけを聞いて勝手に感じたものにすぎないのだけれど、ここのギターは多分二番の
未来永劫を照らしていくかのようなレインボウ、かのようなレインボウ、未完成
の箇所から引用されているようなので、夜明けと雨上がり、というとそう遠いイメージでもないんじゃないかと思っている。
2.Invisible Sensation
昨年末から度々聞く機会に恵まれている曲。"Ninth Peel" nextツアーでは本編最後、このツアーでも2曲目という位置に置かれているあたり、この曲もまたライブにおいて信頼されているのを感じる。
ただ"Ninth Peel" nextツアーや6月の音楽と行こうSUPER LIVEでのこの曲の使われ方は、「生きてほしい!」という歌詞に焦点を当てたものだと思っているが、対してこのツアーや武道館7/24公演では少し意味合いが違っていたんじゃないかと思う。
武道館7/25公演直後に受けたというインタビューで、田淵氏はこう語っている。
僕は結構、才能論の論者で。才能がないと何もできないだろうって割と平気で思ってるんです。それを狙って歌詞を書いた曲も昨日のセットリストに入ってるし。
この記事を読んだとき、私は真っ先にInvisible Sensationを連想した。
このステージに立てるのは選ばれし 相応だ!派手なやつをくれ
努力だけじゃ未来は保てない 目の前の希望を頼って拾って重宝したら一歩先へ
彼らはその才能をもってして、ロックバンドを20年続けるということを成し遂げた。ここはもう才能とはなんなのか、ということの答え合わせが済んでいる世界で、その前に戻ることはできない。
「ロックだけで暮らしてけるなんて 言い訳にしか聞こえません」と言って出発した曲の次にこれがあることで、冒頭2曲にしてすでにロックバンドの20年を体現したかのような並びになっている。
振り返るのは性分じゃないなんて とんでもないので検証を続けます
ここから、ロックバンドの20年を辿るライブ、彼らの20年の検証が始まる。
3.カオスが極まる
言うまでもなく近年のエース株。Invisible Sensationと並んで、ここ直近のUNISON SQUARE GARDENのライブの代名詞のような立ち位置というか、やっぱりあの地の底から響くようなライブイントロを聞くと彼らのライブに来たぞという実感が条件反射的に湧いてくる。
私はブルーロックを原作漫画の一話しか読んでいないのだが、どうやらサッカーの才能を持つ人を集めてデスゲームめいたことをする話のようだと把握しているので、これも才能論の文脈に乗っている曲としてすんなり受け止めることができた。
毎回言ってる気がするけど未だにこの曲のサビでの自分の踊り方を掴めていない。特にそれを問題だとも思ってないので一生このままかもしれない。
4.オリオンをなぞる
出発点、才能論、と続いて、彼らが今の立場を築く立役者となったこの曲に着地するのうまいな~~~
これもまた彼らのライブの象徴のような曲。UNICITY vol.2、Revival Tour Catcher In The Spyという直近のワンマンツアーでシュガーソングがなくてこの曲が入っていたから余計にそう感じるのかも。
足跡を辿る、といってもここまでの4曲年代バラバラですね 珍しいことでは別にないが
小休止(MC)
5.流星のスコール
個人的に今ツアー大トロの曲。武道館の三日間では演奏されなかったのもあって、今回セトリ入りしたことに「シングル曲だから」以上の意味を感じてしまう。
そしてとにかく照明と演出が最高だった。
青い光に染まるステージと客席、まばゆく輝くミラーボール、背後のUの字ロゴには流星の映像が浮かび上がって、ありがとうすぎる、最高の流星のスコール体験……
横浜2日目公演の最後、鈴木氏がアウトロを熱く熱く叩いていたのがとても印象に残っている。
6.リニアブルーを聴きながら
青つながりの照明の変化が美しかった。
私はこの曲のミュージックビデオが本当にめちゃくちゃ、UNISON SQUARE GARDENの現在公開されているものの中でたぶん一番好きで、どこが好きかと言ったらやっぱり一番はお三方が向かい合って熱く演奏しているところなので、今回この曲で三人が数秒向かい合っていたところを見られたのも嬉しい。
冒頭の数曲が才能というテーマで結びつけられているとするなら、この2曲は強い意志が描かれている、という点で共通していると思う。
思い続けて 思い続けてさ ここまで来たんだよ
今すぐじゃなくても 最後の最後の最後に触れることができたら
引用部はどちらもCメロ(用語の理解に自信がないので違うのかもしれない、とにかく二番サビが終わったあとの曲終盤)の歌詞。それぞれに使われているリフレインが、田淵氏がたまに使う「(ロックバンドへの)執念」という言葉に重なる気がしている。
続けることや信じることが才能だったのなら、ここも才能論の文脈に乗っていると言えるのかもしれない。どちらも大好きな曲だけれど、その愚直なまでの意志の強さは、今の私が直視するには少し眩しすぎるのも確かで、そう感じるとき私は彼らの才能に、才能のないものの一人として「当てられて」いるのだと思う。実際にあの武道館のライブを成したところを目撃したあとだから余計に。そのままずっと眩しく光っていてほしい。
ここまで3曲、なにげにBEST MACHINEの曲順通り、ということはつまりリリース順通りに演奏されている。巡り合わせもすごいし、その一見単純な並びにストーリーを感じさせるセトリの組み方と演奏もすごい。
7.10% roll, 10% romance
切実なくらい真っ直ぐな推進力のある前2曲に比べると、この10%はもう少し軽やかな味がする。祝祭に向かっていく揚力というか。
私がこの曲をライブで聞くのははじめて(厳密には9/19BIGCATが初)なのだが、ま~~~~楽しかった。この曲は特に、英語と漢語と話し言葉が入り交じってめまぐるしく飛び出してくるカオス感がとても好き。
8.kaleido proud fiesta
冷静に考えて10%とkaleidoを続けざまに歌えるのすごいな。カポの事情があるとはいえ……
個人的にこの2曲は彼らを好きになりかけていたころに気に入っていた曲で、彼らの音楽を聞くことの楽しさを教わったような気がする。
ファンを自認するようになって、彼らがリリースした曲はほとんど全て聞いている、どころか斎藤氏の言葉を借りるとmeet the world timeだのCAPACITY超えるだのじゃないと興奮できない状態にもなると「好きな曲は?」と聞かれたときにやはりシングル曲みたいな有名な曲はかえって挙げづらいというか、コアなファン感を演出したいみたいなチャチな欲望もあるし、脚光を浴びづらい場所から見つけたお気に入りの方がより自分の宝物感があるのでついアルバム曲とかB面曲を出してしまう。
でもこうして見ると、これがロックバンドUNISON SQUARE GARDENでござい! という看板を掲げているような、楽しさも派手さも華やかさも熱さもその他諸々もこれでもかと詰め込まれたシングル曲たちの存在はやっぱりめちゃくちゃ大きい。
よくわからないけど、自分はもしかして今これまでの人生にはなかった楽しいものに出会っているんじゃないか、と予感していたときのワクワク感は折に触れて思い出せたらいいなと思う。
9.春が来てぼくら
724以前と以後では受け止め方(多くのファンにとってそうだろうし、もちろん私も)が不可逆的に変わった曲。
前曲まで縦横無尽に躍動していた照明がここではぴたりと止まって、ピンクの光がじっとお三方を照らしていた。落ちサビあたりで混ざり合うように加わった黄色の光は次の曲の伏線だったのだろうか。
栃木公演のとき、この曲が終わったあと田淵氏の名前を叫んだ人がひとりだけいた。公演中の名前呼び、というのがSNSというかTwitter(現X)で不毛な論争になっているのを見たけれど、個人的には嫌いになれない。この曲で叫んじゃうことに、きっとその人はあの武道館公演で受け取った何かがあったんだろうな、と勝手に想像してしまうし、それを感じられる瞬間があるとなんだか無性に嬉しくなってしまう。
10.Numbness like a ginger
すごくNinth Peelを感じる前奏……というかNumbnessを感じる……ここからどの曲に繋ぐんだ…… とか思ってたら本当にNumbness like a gingerだったので話違うやんけ!! となった。まあこれはジャブにすぎなかったわけですが……
しかしそれにしても春が来てぼくらの後にこの曲が置かれることによって発生する意味はでかい。セトリの妙が爆発している。
夢が叶うそんな運命が嘘だとしても
叶わない夢があっても 明けない夜があっても
いつかのどこかで答え合わせしようね
夢に向かっていく途上と夢が終わったあと、表裏のような2曲である。
7月24日での田淵氏MCを考え合わせると、やはり「世界は変わらなかった」ことを想起するし、それが自然な読み方である気がする。
が、私はもう一つ考えたこと、この位置に置かれたこの曲に対して読み取りたいと思ったことがある。
このツアーが始まった次の週くらいに突如発表され、その約一週間後に大阪にて開催された、「UNISON SQUARE GARDEN×bus stop mouse(uniっとbus)」。
この2バンドの関係については私が知ったように語ることでもないので詳細は他のひとのレポや田淵氏のブログやbsmタムラ氏のnoteを読んでくださいなのだが、このbus stop mouseに宛てた曲のひとつであり、10年ぶりに披露された「月と天秤」に
涙と汗がにじむ思い出 月と天秤にかけてる
そんなことしなくていいんだよ
という歌詞がある。
タムラ氏がこのブログで書いているように、ユニゾンがメジャーデビューを果たした同時期にbus stop mouseは活動を休止している。
もちろん本人たちが決断して選んだ道だったのだろうが、かえってその決断の外野にいる「戦友」のユニゾンにとっては、すんなり納得できるものではなかったんじゃないか、と想像してしまう。夢と生活、どちらかを選ばないといけない岐路に立たされている仲間に対して、そんなことしなくていいんだよ、と声をかけてしまう程度には。
実際田淵氏の歌詞や言動からは、自分がいいと思った音楽がウケない、ということへの歯がゆさ、もどかしさのようなものを感じることがある。その果てに音楽活動から離れたり、そこまではいかないにしても活動の形を変えた、という人やバンドを見ることも、彼らの20年の活動の中で、bus stop mouseに限らずあったのではないか。
自分にとっては最高であるはずの音楽が、世間が評価しないせいで鳴らすことをやめてしまう。それは7月24日の武道館で田淵氏が「世界が変わらなかったのはつまらなかった」「ロックバンドをあきらめてもいい理由になった」と言っていたことを考え合わせると、彼自身にとってもそんなに他人事ではなかったのだろうなと思う。
さよならが聞きたいんじゃなくて また会えると言ってほしい
だが、bus stop mouseは戻ってきた。活動休止という「さよなら」の局面でこんなことを言えるユニゾンの諦めの悪さも、「それぞれの幸せを謳歌」した十年を経て再結成し、その言葉に応えることとなったbsmも、凄まじく奇跡的なこと(だがそれはたとえばサイコロを振って6の目が出るような偶然とは違う)のように感じるし、ただただ尊敬の念を覚える。
16年ぶりだというツーマンは、まさにいつかのどこか、ふたつの道が交差した答え合わせの時間だったようにも思う。
11.Nihil Pip Viper
やっと会えた(2023年5月のNinth Peelツアーぶり)ね……会いたかった……武道館でも会えなかったし……
嬉しすぎてただただ踊り明かしていたことくらいしか覚えていない。
12.いけない fool logic
Nihil Pip Viper「逃げられるのかな 締めつけてやるぜ」→いけない fool logic「君の心が必要で 僕の心は執拗だ」
よ、よ、よすぎる~~~天才の並び~~~~~~~やっぱり諦めの悪い人たちなんですよ
あとこの曲は"Ninth Peel" nextの時とは照明の演出がけっこう違っていた記憶がある。
13.Phantom Joke
Numbnessのあと、シングルらしいテンアゲ感を持ちながらどこか影のある2曲が続いた上でPhantom Jokeに流れ込むの、いいですね。いつものことながら客のテンションとか空気感の管理が丁寧というか……
言えそうでよかった まだずっと愛していたい
この曲もまた、「諦めない」という意思が強く見える曲である。
ユニゾンのシングルの歴史とはすなわちユニゾンのアニメタイアップの歴史と大部分重なるわけだが、この曲は私にしては珍しくタイアップ先のストーリーを一通り把握している。いやゲームやっただけでアニメ本編は見れてないんですけど……(ラフムが動いて喋るのかと思うとどうしても見れなかった。怖すぎるよあれ)
14.アナザーワールドエンド
このツアーの使命のひとつは多分、この曲を最大限にかっこよく、ドラマチックに見せることだっただろう。
ここまで丁寧に積み上げてきた「諦めない意思」というもの、それを貫き通した先に得た、「ロックバンドを諦めなくてよかった」という結論。
この曲で照明がシンプルになるのが本当にこの人たちらしい。
田淵氏の私性が強く出ているほうの曲だとは思うけど、同時にバンドとしての意思、お三方の意思が交わる点にあるというのが強く感じられる演奏だった。
斎藤氏の歌はいつも通り最高なんだけど、どこか余裕感が少なくて、その代わりほんの少し泣いているように聞こえて、ストーリーテラーとして曲に寄り添うのと同時に、自分の内から確かに出た言葉として歌っていたように私には見えた。
田淵氏については、コーラスしながら客席を真っ直ぐ見つめていたのが強く印象に残っている。
気づくのは今日じゃなくて明日じゃなくて 来年再来年でもなくて
もっと先かも歳とって立てなくなって 君の声も忘れちゃって
世界に溢れる音楽が全部つまらなくなって 誰も争いを止めることができなくなって
名も知らない砂浜に1人座り込んで 波の音がこの瞬間に結びついた時かもしれない
この一息のCメロ、はじめて聞いたときは人ひとりが生きるということを、今までになくはっきりと生々しく目の当たりにしたような感じがして感動よりも畏怖の念が先にきたことを覚えている。実際今回ライブで聞いたときもここは無意識に呼吸を止めていたように思う(今歌詞を打ってるときもなんか止めてしまっていた)。
何より特筆すべきは鈴木氏のドラムだった。曲調の割にドラムかなり音も大きいし手数も多かったと思うのだが、それでいてうるさいとは全く感じなかったのが本当にすごい。宇都宮でこの人笑ってる……? と思いつつ視力の限界で確信が持てなかったのだが、横浜でその顔がちゃんとモニターに抜かれていた。しかもカオスとかの手数やばいときの笑い方だった。鈴木氏が最近よく言っている「熱」とはこういうものか、と思わずにはいられなかった。
曲終わりの時、斎藤氏がふっと促すように鈴木氏に視線をやって、少ししてから田淵氏も振り返って、それから三人で最後の音を鳴らしていた。
解釈の仕方、内面化のやり方があんなに違っていることが、最高にお三方らしく、確かにこの曲にとっていちばんふさわしい演奏のされ方だった。
これだから私は人間が集団で音楽をやる様というものに惹かれるのだろう。心をひとつにするのではなくて、それぞれがそれぞれの思考と感情と人生を持ち寄って、ひとときひとつの音楽をやる、というところに。
ユニゾンのライブに行くといつも多かれ少なかれ、彼らを好きな感情と合唱を好きな感情が地続きであるという感覚を覚えるけど、今回この曲で殊更にそのことを強く思い知った。「自分が合唱をなんで好きになったのか」と「自分はなんで今更ロックバンドを好きになったのか」というふたつの問いに対する答えは、もう笑えてくるくらい同じ理由なのだ。こういう音楽が好きだった、こういうのを見たかった、こうすればよかったんだ。横浜公演帰りの電車でこの演奏を反芻しながら、そんなことを繰り返し思った。
音源だと最後に残るギター? の音が平坦になった心電図を想起して少し苦手だった(多分昔見たとある映像作品の印象が変に結びついている)のだけど、ライブで聞いたらデクレシェンドされてて、そういう意図ではないんだろうなと確かめられたのもよかった。
15.桜のあと
正直このあたりからセトリの効果がどうとか意味合いとかよくわからなくなった。でもやっぱりこの曲の
じゃじゃじゃじゃーん 足りない!
キック、リズムを打て!
ベース&ギター おまけに僕が歌えば四重奏
というバンドのアイデンティティを改めて確かめることができる歌詞を、アナザーワールドエンドのあとに聞けたのはよかった。
16.MR.アンディ
ベストアルバムの特典についてきた日比谷野音の映像で、「踊ろうっ!」と斎藤氏が軽く言い放ってこの曲が始まったのが妙に新鮮だったのを思い出した。喋りはしないけど今もそういう立ち位置の曲なんかな。
今 目の前の君が明日を生きれるくらいには
ありえない不条理は ぶっ蹴飛ばしていけ
人一人を笑顔にするぐらいならできるよ、存外に
アナザーワールドエンドの「世界はきっとひとつにならない」との対比が美しすぎる。というかアナザーワールドエンドでそういうことが言えたのって、「世界は無理だけど今目の前にいて音楽を聞いている君を楽しくさせることくらいならできるかもね」というMicro Paradiso!とか箱庭の世界を築いてきた信頼関係があってこそのものだろう。
17.fake town baby
今思うと「幸せになるパーセンテージ 忘れちまったよ」という歌詞は今ツアーの「君の街まで会いに行く。ちゃんと幸せになるために。」というコピーとのリンクを感じますね。
Bメロの二拍三連(で合ってるか自信ない)大好き。最後の鈴木氏のコーラス姿も好き。
横浜公演だと炎が上がってて(カオスでも上がるけど)MVの再現になるのアツい。あの炎マジで熱かったな。
18.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
油断した頃に挟まれる非シングル曲。CITSリバイバル、極まる対バン、武道館、とこの曲も今年聞く機会が多かった。とはいえNumbnessもそうだったけどこっちとしては今回シングルA面曲しか聞かない心づもりだったので、唐突に差し挟まれたこのライブ爆上げナンバーの盛り上げ力はいつにも増して凄まじいものがあった。三人ともやりたい放題だし。
あと宇都宮市文化会館って火花出してOKなんだ……
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19.シュガーソングとビターステップ
この最強キャッチーイントロで客席が明るくなって横浜公演では銀テープが飛んだ。今まで曲終わりで銀テが飛ぶパターンにしか遭遇したことがなかったのでびっくりしたけど、いつになく爆上げ曲を並べ立ててきたセットリストの総仕上げとして、「銀テが飛んで終わる」ではなく「銀テが飛んでシュガーソングが爆盛り上がって終わる」という形をとっていることに、キラーチューンのエースとしてのこの曲への愛を感じる。
客席が明るくなったのも、まさに「生きてく理由をそこに映し出せ」と直接言われたような気になった。
MC
20.crazy birthday
直前のMCで「見事にシングル曲とミュージックビデオのある曲だけやってきて……」(栃木公演)から舌の根も乾かぬうちにこれである。それか私が知らないだけでcrazy birthdayってMVが実は作られててみんなそれを隠してるんですか?
イントロの、この、やっぱこれなんですわ彼らのライブって!! 感 たまらん 大好き~~~〜〜〜 CITSのリバイバルツアーを思い出した。
21.スペースシャトル・ララバイ
私が知らないだけでスペースシャトル・ララバイってMVが実は作られててみんなそれを隠してるんですか?
crazy birthdayからスペースシャトル・ララバイにつながる可能性があるんだ。私とて"Ninth Peeel" nextツアーを通してこの曲にはそれなりの思い入れを持っている者のひとりである上、今までNinth Peelの文脈にいる彼(彼?)しか知らないわけで、予想外のタイミングで聞けた嬉しさとこの曲の新しい一面を見られる興奮でかなりテンションが上がった。
忘れたくても忘れない今を繋いでいく
アルバムで聞くと、日々生きていく一日一日を忘れない、くらいの意味でとったのだが、ここでは20th BEST MACHINEと冠されたライブの終わりにさしかかって、一度しかない20周年を忘れない、という宣言だったのだろう。
nextでのこの曲の見方もまた変わりそう。円盤出してください。
22.Catch up, latency
この終曲でとたんに今までが腑に落ちる。Catch up, latencyで始まりセンチメンタルピリオドで終わったROCK BAND is fun、そしてセンチメンタルピリオドで始まりCatch up, latencyで終わる、20th BEST MACHINE。
敬具、結んでくれ 僕たちが正しくなくても
この特別な一年を、刻んで、結んで、再び前に進むための曲、と私は受け取った。重い意味を持つこの曲を、最高なライブの終曲として、お三方があの充実感に満ちた笑顔で演奏するところが見られたことがとても嬉しい。
BEST MACHINE曲は全部やると無邪気に思ってたので、な~~~にが有名な曲しかやらないだよという気もするけど、今思えばharmonized finaleを外したのは彼らの優しさかなあと感じてしまう。もうちょっとこのペースで歩くって言ってるわけだし。
まあマスタボリュームとかcody beatsとかSilent Libre Mirageが入ってないのはよくわかんないですけど……(スカースデイル(S.B style)は武道館でも出番があったのでそこまで不服ではない)とはいえ生きてればまた出会う機会もあるでしょう。
アナザーワールドエンドに入るとき、斎藤氏は「20年分の感謝を込めて」と添えていた。それは極めてシンプルな、ありきたりでいつもの彼ららしくもないとすら思えてしまう言葉だった。
「一聴じゃわからない」と彼ら自身が度々言うように、彼らがいつも使う言葉は難解だったり、およそ詞に使うものとは思えない語彙があったり、意味があるのかないのかよく分からなかったりする。そういう、手垢のついたわかりやすい言葉に安易に頼らない、ということを彼らは多分努力してやってきた。
でも、今回ばかりはそれでは駄目だったのだろう。
難しい言葉じゃわからない伝わんない
もう知ってる そんなこと だからこそ、ただ、君に届け
たった一回きり、伝えたいことをただ届けるために、真っ直ぐな言葉が必要だったのではないかと思う。これは何気ない記念日ではなくて、特別な記念日を祝うためのライブだったのだから。
私が彼らの音楽を聞いて、ライブに行くようになってからまだ1年半ほどしか経っていない。彼らの20年の活動の、1/20しか見ていない。
7月24日の武道館もそうだったけど、今の私の立場は今年彼らが示した感謝には見合ってないな、とどうしても思ってしまう。ファン歴に長いも短いもないということは特に斎藤氏も言ってるしその通りだと思うが、田淵氏が「誰にも気づかれないように後ろを向いた」であろう時期、私はそこにいなかったというのは事実である。
それはもう本当にどうしようもないことなので、もしこれからも私が彼らのファンであることを続けられるとして何年後かは分からないけどもっと先になって、ふとこの特別な一年のことを振り返ったときまでお預けなんだと思うことにしている。
ただその一方で、私は1/20しか知らないけど、その前の19/20があったからこそ彼らのライブにたどり着いた、という自負もある。
中学時代、合唱に出会ったことで、好きになれる音楽というものが自分にもあるんだと分かったし、
高校時代、人が心底楽しそうに歌う姿はただそれだけで胸を打つのだと気づかなかったら、「ロックバンドは、楽しい。」という言葉は他人事のままだっただろうし、
大学時代、来る日も来る日も言葉と取っ組み合っては投げ飛ばされていた時間があったから、常識を軽々と飛び越してるくせに丁寧で繊細な歌詞にテンションが上がるんだろうし、
社会人になって、プリキュアのイベントや戦隊のヒーローショーに行くようになったから、生の現場に足を運ぶことをためらわなくなった。
彼らがロックバンドをやっているのと同じ世界で、私も19年をそれなりに生きてきた。ひとつひとつの積み重ねの先に、UNISON SQUARE GARDENというバンドとの交点があった。
とりあえず今はそのことをもって、彼らの言葉を受けるに足ると思っていていいだろうか。
もう少しこのペースで歩くよ、という言葉を早々に有言実行するかのごとく、年明けからはまた新しいツアーが始まるらしい。もう少しというのがどれくらいの時間なのかはわからないけれど、とりあえず、と言っていられるくらいの余裕はまだあるようだから。