アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜

繊細な演出、演技力

人物の仕草や表情がとても自然な感じ。
ちょっとした手の動きや視線から、その人の思っていることがぱっと分かったりする。俳優の演技力と監督の演技指導の高さかな。繊細な表現。注意深く観察すると、いろんなことに気づく。
カメラの動きや、部屋に置かれてる物、音楽とかも同様。

ありふれた人生や、普通の日常のすばらしさ

セリフ
 僕は毎日を生きている、まるでその日をやり直した時のように、楽しんでいる
 とんでもなくありふれた人生の、今日が最後の日だと思って
 人は誰も時間を旅している、人生という時間を
 そこでベストを尽くすしかない、その旅が素晴らしいものになるように

タイムループを繰り返すことで、ありふれた人生や普通の日常のすばらしさに気づいていく主人公
映画を見ていて、主人公がタイムループするのと同じように、ふと自分も過去のことを思い出しながら、
ああ確かに人生って、かけがえのない時間の旅だな、って思わされる

日常の些細なことに気づいていくことの大切さ
たしかに人生をもう一度やり直すことができたら、過去の同じ場面をもっと違う感じで受け止めるだろう
そして、1回目よりもっと落ち着いて生きることができるから、もっと細かいところまで気づくことができるだろう
そうすると、平凡な世界の中にも、いろいろな発見があって
この人生、世界、人間関係が素晴らしいということに気づくはず
っていうことは、映画を見ているアナタの人生も、アナタ自身は平凡でつまらないと思っているかもしれないが
本当は素晴らしいものなのだよ、と教えてくれる

そして、この映画自体が、とても繊細で細かい演出がちりばめられている
この映画自体が、「人生」そのもの

ヒロインの視点で見る

主人公は男性だが、ヒロインの視線で見ると好きなシーンがいっぱい
出会いのシーン、結婚式のシーン、衣装を迷って何度も着替えるシーンなど、見ていて飽きない
卑怯なタイムループを使ってでも彼女とつき合おうとする彼は、とってもキュート
つき合い始めてから結婚するまでの彼は、彼女の生活を邪魔しない理想的な恋人
古い恋愛ドラマに出てくるような紋切型の恋人像で、
ちょっと人間味のないマネキンっぽい存在になってるけど、そのくらいがちょうどいい

タイムループの設定がずさん

狭い所に入って過去に戻るのだけど、
過去に戻ってもう一度人生をやり直すパターンと、
過去を修正して現在に戻ってくるパターンの、2種類のタイムループがゴチャ混ぜ
シナリオの都合に合わせて設定が変わるので、
「人生は素晴らしい」というメッセージ性が、無理やりそっちにもっていってる感がある

子供が生まれる前に戻ってはいけない、というルールも疑問
なんで? いけないって誰が決めたの? てなる
好きな人とつき合うために何度もタイムループして過去を修正するのと、どう違うの?

受精のタイミングがずれて違う子が生まれてくるのがいけない、というなら
妊娠した時点でもう過去に戻ってはいけないはず、なのに、映画では1回戻ってる

「普通の生活をしなさい、普通の生活をもう一度繰り返しなさい」という父のメッセージに従ったら、同じ未来にはたどり着けない

それに、「違う子」が生まれた未来で、「子供が生まれる前に戻ってはいけない」というルールを知ってるのに、「違う子」が生まれる前に戻ってるよね
「違う子」と「今までの子」を区別するのは何?
「違う子」はなかったことにしていいの? その罪悪感はない?

主人公中心主義

主人公は、自分の幸せのために、周囲の人間の人生を操ってる
「違う子」に関しては消し去ってる
友達も家族も、自由はない、恋人すらも
主人公とヒロインの気持ちには寄り添っているが、
その他の人は主人公の幸せのために動くコマでしかない

主人公中心主義 :主人公になりきりたい人向け と言える

主人公について

タイムループを使わなくても人生のすばらしさに気づいてほしかった
たぶん、主人公はすごく鈍感な人間なんだろう
だから、タイムループをして、やっと気づくことができた
気づきの前の彼と、気づきの後の彼は、別ものと考えた方が良い
気づきの前の彼の道徳的に問題のあるタイムループを、気づきの後の彼に負わせてはならない

総論:いびつな形のレーダーチャート

細かな演出や演技はすばらしい
「人生も素晴らしい」というのがメッセージなので、
タイムループの設定のずさんさや、つじつまの合わないシナリオのグチャグチャ感は大目に見てほしい
ラストの幸せな感じを味わいながら、
私の人生も素晴らしいのかも、日常の細かいところまで目を向けてみよう、って思えれば上出来
視野が狭くなってる人にとっては、自分の人生をポジティブに見つめなおす、いいきっかけになる
ただ、主人公中心主義の映画なので、
本当に自分の日常生活にも当てはまるかは、人による
この映画は、そこまで掘り下げてるわけではない

あらすじ(ネタバレ)

父からタイムループ能力を知らされる、最初の片思いと失恋、タイムループでいろいろやる、ヒロインとの出会い、タイムループを繰り返して、つきあう、結婚、子が生まれる、妹の交通事故を回避、赤ん坊が変わる、元に戻す、父のガン、「普通の生活をしなさい、普通の生活をもう一度繰り返しなさい、気づかなかったことに気づける」、人生を楽しめるようになる、3人目の子、「子供が生まれる前には戻れない」、過去の父との別れ

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