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どうやって女性弁護士になるの? (2) 「正しい計画」を立てよう
HOW TO BE 女性弁護士
〜どうやって女性弁護士になるの?〜
1. 【敵】すなわち「司法試験」を知ろう
2. 「正しい計画」を立てよう ←今はこの記事
3. 自己管理としての環境づくりをしよう
さて、前回の記事で、司法試験のことをだいぶ理解していただけたかと思います。
おっと、
いよいよあなたも、
司法試験を受験することを決意しちゃいましたか?
👏👏👏
決意しちゃったら、次は、着実に合格を勝ち取るための手段について考えなければなりません。
この記事では、「正しい計画を立てること」について書いていきたいと思います。
女性弁護士になるという目標を達成するためには、「正しい計画」を立てることが絶対条件です。
この、計画立案のプロセスを軽く見てはいけません。ゴールまでの距離があるチャレンジであるほど、計画立案の段階で勝負が決まっていると言ってもいいほどです。
◇ 「正しい計画」の立て方
1. まずは、現在あなたがいるスタート地点の把握
「正しい計画」を立てるにあたってまずはじめにするべきことは、現在あなたがいる地点、すなわち、
あなたの司法試験チャレンジのスタート地点がどこなのかということを把握することです。
司法試験を受験しよう!と決意しても、その人の立っているスタート地点はさまざまです。自分の現在地の把握をまかり間違えると、正しい計画は永遠に立案不能となります。
あなたの現在地はどんな感じでしょうか。
もしあなたが、
・ 法学部出身
・ 学生時代法律科目を真面目に勉強した
・ 卒業してからあまり年数が経っていない
という属性であれば、司法試験の勉強にすんなり入ることができる地点にいるといえます。なかなかいいスタート地点ですね。
もしあなたが、
・ 非法学部出身
・ 学生時代法律科目を取ったことがないか、まともに受講しなかった
・ 卒業してからかなり年数が経っている
という属性であれば、そもそも司法試験勉強のスタート地点にすら立てていないと言えるかもしれません。この場合は、まずスタート地点に立つための勉強をしなければならないでしょう。
さて、ここでみなさんに勇気を与えるために、
私自身の話をしましょう。
・ 非法学部出身(文系)
・ 学生時代は法律科目取得ゼロ
(まさか将来自分が弁護士になるなんて!)
・ 年齢は20代後半
というスタート地点でした。
まだかろうじて若さはありましたが、お勉強のほうはお恥ずかしいことに法律の「ほの字」も知らないというまっさらな状態でした。
これ、なかなか信じてもらえないんですが、
「憲法」と「刑法」の区別がいまいちついていないくらいの絶望的有りでした…
学生時代にいかに勉強していなかったか、常識・教養がなかったか、ということです(恥)。
(そんな状態で、きみ、なぜ弁護士目指した?というあたりは別の記事にゆずります。)
このように、かなり後ろのほうからスタートした私でも、少しずつ少しずつ前進し、今では無事に弁護士になっております。
勇気、湧きました?
2. ゴールから逆算して、スタート地点まで線で結ぶ
現在あなたがいる地点を把握したら、いよいよ次は、あなたの現在地とゴール=合格までを正しく線で結び「正しい計画」を立てていく作業です。
ゴールから逆算して計画を立てることが有効だとされています。ゴールから逆算することにより、ゴールに行き着くまでに必要なことだけを限定・選別し、作業工程を効率化することができます。
時間・体力・気力は有限です。それでいて、司法試験の範囲は膨大です。なので、効率的な作業工程にすることがとても重要となってくるのです。
限られた時間・体力・気力+膨大な範囲 → 効率的な計画+実行が必須
・ 自分に近いスタート地点の合格者の体験談を参考にする
ゴールから逆算するといっても、司法試験のことをまったく知らない人がやみくもに計画立案はできないと思います。そこで、おすすめは、スタート地点が似ている合格者の体験談を参考にすることです。
法科大学院や司法試験予備校のサイトなどに載っている合格者による体験記やインタビューを読んで合格までの道筋をイメージしましょう。もし身近に合格者がいるのであれば、相談に乗ってもらうのもよいです。
体験談を聞く相手は、自分に近い経歴、スタート地点の人でなければなりません。その人がどういう計画を立てて何年かけて合格したのかを自分に当てはめると、合格までの道筋をイメージしやすくなります。
自分のスタート地点が全然違う人の話は、いくら聞いても役に立ちません。
河野玄斗さんという、東大理Ⅲ在学中に司法試験に受かった有名な人がいます。「司法試験の勉強は半年くらい」とのことです。彼の話を聞いても、あまりにスタート地点が違いすぎて、計画立案に役立たないですよね。半年て。
・ 時間軸を意識して計画を立てる
合格者の体験談を聞く際には、時間軸を意識します。
例えば、法科大学院の3年コースへ進学するコースで計画を立てるとして、標準的な時間軸はこのようになります。
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法科大学院受験は、入学の前年の夏くらいから秋くらいまでに出願・受験するので、司法試験受験を決意してから法科大学院1年目がスタートするまでにだいたい1年くらいはかかることになります。
法律科目の勉強経験がないならば、法科大学院は2年コースではなく3年コースとなりますが、事前に予備校などで基礎的な勉強を進めた上で2年の既習者コースを受験することもありです。
いずれにしても、今からスタートして、
何年後の何月にどうなっているのかという時間軸をしっかりと意識して計画を立てます。その時自分は何歳で、家族はどういう状況だろうか、すべてしっかりと計画に組み込みましょう。
・ まずは年単位、次に月単位、そして週単位で計画を立てる
合格者の体験談などを参考にして、大まかな時間軸のイメージがついたら、ゴールから逆算するかたちで具体的な計画を立てていきます。
コチラの記事で書いたように、司法試験の範囲は全部で8科目で論文式試験が課されます。そのうち3科目についてはさらに短答式試験もあります。
すべての科目をバランスよく、さらに短答式試験も論文式試験も両方クリアできるレベルに持っていくというのがゴール地点です。
司法試験の本試験は7月に実施されている(2024年現在)ので、受験する年の春くらいには、全科目について網羅的に勉強が出来ている感じにしましょう。
本試験直前期は、苦手分野を潰したり、短期的な記憶力がものを言う短答式試験の準備をしたり、という総まとめ的なことに時間を費やすのがよいでしょう。
受験する年の春くらいまでに全科目を網羅的にカバーする目標で、年単位で計画を立てていきます。
非法学部出身者など法学の基礎がない人の場合は、勉強の順序として、
まずは①民法、②刑法、③憲法という基本的な3科目について入門的な勉強を始めるのがスタンダードです。
特定の分野については、何言ってるんだかさっぱりわからないということがあると思いますが、あまりそこで立ち止まらず一通り走り続けることが肝要です。入門レベルでは、慣れない用語・概念に戸惑ったりすると思いますが、判例は多少ストーリー性があるので楽しみながら進めましょう。
上記3科目の入門的な勉強が一通り終わったら、3科目のもう少し深い勉強に入るのと並行して、④民事訴訟法、⑤刑事訴訟法に入るのがおすすめです。
民事訴訟法は苦手意識を持つ人がいますが、逆に大好き!という人もいます。刑事訴訟法は比較的イメージしやすいのでとっつきやすいでしょう。
⑥行政法、⑦会社法は、私個人の経験からですが、法学の勉強に慣れてから始めるのでOKだと思います。
⑧選択科目も同様です。初学者は、まずは基本的な①〜⑤の科目をしっかりと勉強して土台を作っていくのが良いでしょう。
スタート地点や、素養がさまざまなので、大まかなことしか書けませんが、何年後の何月にしかるべき状態になっているために今からやるべきことを時間軸に当てはめていき、年単位・月単位・週単位、そして、今日やるべきことというように計画を立てていくのが「正しい計画」の立て方です。
法科大学院に入学する場合は、学校のカリキュラムに逆らわずカリキュラムと並走する形で自分の勉強計画を立てましょう。法科大学院に入学せず予備試験コースを行くという場合は、予備校のカリキュラムに従いましょう。
PDCAサイクルというのを聞いたことがあると思います。Plan-Do-Check-Actionというように、常に行動の正しさや効率性をチェックし改善しながら進めていく手法です。
司法試験に関しても、勉強計画は固定的なものではなく、常に見直しながら進めることになります。
1日単位、1週間単位くらいで、ノルマ達成度合いを確認するとともに、達成できなかったところがあれば計画を練り直さなければなりません。また、徐々に自分の得意不得意も出てきますので、得意科目の時間を減らし不得意科目の時間を増やすというような時間配分の見直しも必要になってきます。
ノルマを達成できなかった理由についても深堀りする必要があります。サボってしまったのなら、勉強の妨げになる要素をどうやって排除するかを検討しなければなりません。寝てしまったのなら、睡眠の充実や体調管理について改善すべき点がありそうです。勉強場所の環境が悪いのかもしれません。
3. 女性特有の体調問題も、しっかり計画に組み込もう
さて、司法試験受験に男性も女性もないとはいえ、女性には特有の問題がありますね。それは月経やそれに伴う体調の変化です。
例えば頭痛や腹痛がある日と、そういったものがまったくない日とでは、勉強に集中できる度合いが大きく異なります。このことを計画に組み込まないで、月経前のイライラ期や月経中の体調不良期に無理やり机に向かうことはおすすめしません。机に何時間向かっていようと、集中できていなければ意味がありませんし、「今日は途中で寝ちゃってノルマを達成できなかったー。なんてダメな私」なんて自分を無意味に責めることにもなりかねません。
月経やそれに伴う体調の変化の影響の大小は人それぞれですから、ご自分の体質に合わせて、一ヶ月の計画を立てる時に「生理休暇」を設けましょう。
2日目は半日休みにする、のような形です。
なお、余談ですが、本試験の本番に月経が重なりそうな場合は、婦人科に相談してぜひ投薬でずらしてもらってください。短答式試験も論文式試験も時間との戦いです。トイレに頻繁に立たなければならなかったり、頭痛や腹痛があったり、という状態は避けなければなりません。
司法試験の会場は、札幌から沖縄まで全9会場(うち東京は2会場・2024年現在)ありますが、東京や大阪など受験者数が集中する会場では女子トイレが混む傾向にあります。イベント会場などでも女子トイレは行列になりますよね、そんな感じです。
なので、トイレに行く回数はできるだけ少ないほうがよいと言えます。
◇ 「正しい計画」の絶対条件2つ
司法試験に合格できる「正しい計画」の絶対条件は2つあります。
計画を立てるときには、必ずこの2つを意識してください。
合格まで走り続けられること
必ず1回目の受験で合格すること
条件1 合格まで走り続けられること
司法試験は科目数が多くやるべきことが多いので、つい長期計画を立てがちです。
法科大学院受験を先延ばしにしたり、法科大学院を修了してもすぐに司法試験を受験せず「もっと実力がついてから受験する」とかいって少しインターバルを設ける人がいます。しかし、そういった行為は中だるみにつながり、合格可能性を下げるだけです。熱意というものは、ダラダラと続くものではないのです。
受験を決意した瞬間から合格までは一定の熱量で休みなく駆け抜けなければいけません。だらだらと長期間ゆるくやるような計画では合格できません。がっつりと勉強に向き合って合格までずっと走り続けるような計画が「正しい計画」だと言えます。
条件2 必ず1回目の受験で合格する
また、必ず1回で合格するような計画でなければなりません。
試験制度としては最大で5回受験できることになっていますが、だからといって、3回目とか5回目に合格する計画を立てることはしないでください。あなたが5回目で受かるということは、今から法科大学院を受験し、法科大学院に2年通ったとして、合格は7、8年後ということになります。7年8年もの長い期間モチベーションを高いまま維持するのは難しいです。経済的にも持つでしょうか。(なお逆に言えば、経済的に余裕のある人が長期計画を立てがちだったりします。普通の人は、経済的理由で挑戦にリミットを設けざるを得ませんから。)
実際のデータで言えば、合格者の平均受験回数は2回以下です。それどころか、1寄りの数字です。1回で合格する人が半数以上、2回以内で合格する人が大多数ということになるわけです。司法試験とは、短期決戦だということです。熱意や記憶を維持しつつ、1回で合格してしまうことがいかに大切か、データが物語っていますね。
とにかく、計画段階から数回で合格するようなイメージを持つことは絶対にNGだということです。
ダメな計画の典型とは?
さて、正しい計画の絶対条件をお伝えしましたが、反対に、合格が遠ざかる「ダメな計画」としてどういう計画があるのかもお伝えしておきます。
典型的なダメ計画としては、
・ 時間と体力と気力を過信、ハードすぎる計画
・ とにかく自分に甘い?! ゆるふわな計画
よくありがちなのがハードすぎる計画ですね。ダイエットとか筋トレとかでもやりがちです。
「よーし!明日から、平日は毎日8時間、土日は10時間勉強するぞっ!」「勉強とは別に仕事も趣味も続けるぞ」
のような計画を立てちゃうパターンです。
明らかに実現不可能。体力や気力は有限、時間も有限です。冠婚葬祭などのイレギュラーなイベントも入りますし、無理すれば間違いなく体調を崩します。計画倒れすることが見えている計画はダメです。計画は実現可能性がなければなりません。
かといって、ゆるふわ計画もダメです。計画としての意味がありません。
「今月は民法で、来月は憲法で、、、来年までに3科目をそれなりに、、、」
のような、最小単位が月単位のざっくりゆるふわな計画では、今日やるべきことが見えてきません。ゆるふわ計画で合格するほど、司法試験は甘くありません。