2024盛夏
「おやじぃ、運転かわろうかぁ?」
息子と2人きりでおぢばがえりって何年ぶりかなぁ。
10年ひと昔、ていうけど、ひと昔前なら、
「ねぇ、(おぢばに)まだつかないぃ?」
と、後ろの座席から、三つ下の娘と連呼していた息子だけど。
今はもう立派な青年よふぼく。
車は神殿に近づく。
東の駐車場、満車。北、バスだらけ。
南へ。
南棟の一角に突き刺すように車を停め、おりる。
「着いたね。参拝に行こ。」息子の目は神殿に向いている。
「早く詰所のひのきしんチームに合流しないとな」と、私も息子もわかってはいるけど、だけど、参拝はしっかりとゆっくりとしたい。
まだまだ太陽は高い位置。
至るところでセミがジャンジャンジャンジャン、ジージージージーと鳴いている。
真夏のおぢば。
神苑一帯は、おぢばに帰ってきた子どもたちが砂利を踏みしめる砂ぼこりと、嬉々とした声と、遠くから熱風に乗って聞こえてくる鼓笛の音。
「真夏のおぢばだ。」
東の階段から昇殿。
しかし、なぜか私も息子も南礼拝場へ廻る。
これなんなんだろうね。
おぢばに帰った最初の礼拝場は“南”を選んでしまう心理って。ま、ええか。
結界にかぶりつく。
息子と2人きりでおつとめするのって久しぶり。
甘露台に届け!とばかりに、競うように声を張り、無事帰参のお礼、日頃のお礼、今回帰参内容の報告、平素に祈りを届けたい方のお礼とお願い、いろんなことを心に込めてぢばに願う。
神殿の回廊から見渡せる神苑ややかたは、こどもおぢばがえりの装飾でワクワクするなぁ。
「あっ!」
「おうっ!」
どうやら息子の同級生らしい。
「ふっ。俺よりも息子の方が先に教友に出会いやがったか。」
へんに張り合う。
「おかえりっ!」
「やぁ、元気ぃ、暑いねぇー」
こどもおぢばがえり最中の神殿・神苑は、ちょっとした同窓会の場となる。
私も息子もおぢばの学校に学んだということもあり、教友が多くて思わぬ再会が嬉しい。
そして何より息子と神苑を歩いている。
「息子さん?」
「そう、ボクの長男っ」
こんな嬉しいことはない。
涼しい教祖殿。
おやさまにご挨拶。
と、結界の中でおやさまのお守りをする教服姿の教友を見つけた。
あちらも私に気づいた。
こともあろうに冠をとって、けっこう大きめの声で「いっけんさーん」て。
相変わらず大胆なやつだなぁ。
「当番おつかれさーん」
「息子さん?」と目を息子に向ける教友。
「そう、長男っ」
おやさまの御前だ。遠慮しつつも、「そう、長男っ」の返答はおやさまにも届けたかった。
祖霊殿へ。
先人先輩にも「長男です」とひとこと添えてご挨拶。
再び東の回廊を戻る。
ん?
んん?
あっ!!
彼の顔を見るのは、10数年ぶりだ。
ひょっとしたら、いつかの百母屋以来かも。大柄なガッチリした身体の彼は、世話班室で日本酒を片手に暇さえあれば読書をしてた。
しかし、以前、脳腫瘍と脳出血で「もうダメかも知れない」という風の便りに愕然とし、しかし、一心に彼の無事を願い続けた。その後の彼の様子は一切知らされず、いつしか忘れ去り、“過去の人”となっていたのが実のところ。
その彼が、紙袋を片手に向こうからスタスタと歩いてくる。
鳥肌がたった。
涙が出そうになった。
「〇〇くんっ!」
「あ、いっけんさん!」
幽霊じゃないよね。
生きている。喋っている。
彼の身に起こったことを、彼自身から聞く。
頭蓋骨が一部ない。そこが窪んでいる。
「こうやって『らりるれろ』て言えるようになったのはここ一年くらいです。」
私は、以前通りに笑顔で話す彼を見てホントに嬉しかった。
想像を遥かに凌ぐ闘病生活だったことを知る。
隣りで息子もじっと聞いている。
「だけど、いっけんさん、運転だけはまだ無理なんです。反射神経がまだ遅いようなんです。」
「そっかぁ、じゃぁ、奥さんが専属運転手だね」
うん!と彼。
ちょっと気晴らしにコンビニに行くのもいちいち奥さんのご機嫌伺いから始まるらしい。
「コンビニに行きたいんだけどー」
「何買うの?」と奥方。
「うーん、ガムとかお菓子とか、、」
「もったいないね、年祭だしね、おやさまにお供えしようよ」
て、彼は奥さんとのやりとりを笑う。家族の中で彼はもう病人ではないらしい。
闘病中は、視力がほぼ皆無だったらしいが、好きな読書ができるくらいにまで視力が戻ったらしい。「おふでさきも読めます。諭達も読めます。読めるようになった時は嬉しかったです、、。」としんみりと彼は振り返る。
諭達第4号発布のとき、彼の視力ではまだ文字が読めなかったそうだ。
別れ際に彼は、
「いっけんさん、ボクが生きてることをみんなにもお伝えくださいネ!」
と言った。
彼は、まさに今ある命をめいいっぱい味わっているんだ。
彼に再会させてくれたことに心から感謝した。
「📣青年会本部19期委員会の委員・部員の皆さん、K分会Y部員さんはお元気ですよ‼️」
私と彼のやりとりを隣りで聞いていた息子はうつむいたまま、聞いた話しを反芻しているようだ。
「すごい話しを聞いた‥」と。
そして私は、彼の家の信仰初代の方にさづけられた有名なおさしづを教えてあげた。
「すごい!」
息子なりに御守護の世界に触れたようだ。
会ったばかりの教友との思い出話を息子に聞かせつつ、太陽の照りつける神苑へと足を進めた。
「あっ!」
「お!元気ぃ!」
「久しぶりー」
「暑いねー」
再会って、最高のプレゼントやね!
またどこからか鼓笛の音が聞こえてきた。
神苑は、子どもたちの笑顔と歓喜の声が溢れている。
火水風。
親神様の御守護をめいいっぱいに頂戴して、親神様のふところで命を謳歌している。
こんなにありがたいことはない。
「息子さん?」
「そう、ワシの長男っ」
かつて、私の父親も、再会する教友に嬉しそうに答えていた。笑顔で。
おぢばは、命を謳歌し、信仰のバトンを繋いでくれる原点だ。
真夏のおぢば。
親神様はいろんな出会いというプレゼントを用意して待っていて下さってますよ。
👇去年のプレゼント
2024盛夏。
今年もまた一つ、思い出深い夏となりそうだ。
-----今週のおまけ-----
下に貼り付けたリンクは、「2023盛夏」という書き出しの記事です。
すぐ読めますので宜しければどうぞ。
今週も最後までお付き合いくださりありがとうございました。
また来週👋