
「稿本中山眞之亮傳」第三の稿本にして第二の権威本
天理教教祖伝、天理教教祖伝逸話篇は“稿本”のまま今も私たちは親しんでいる。
ここにもう一つの“稿本”がある。
中山眞之亮傳だ。
今回は、そして本年締めくくりの記事は、「稿本中山眞之亮傳」です。
本篇は、全6章から成る。
目次を見てみる。
稿本 中山眞之亮傳
目次
前篇
第一章 しんばしらの眞之亮‥1才→15
第二章 教祖の膝下で‥‥‥‥15→22
中篇
第三章 教會本部開設‥‥‥‥22→26
第四章 教勢の發展‥‥‥‥‥26→33
第五章 獨立を目指して‥‥‥33→43
後篇
第六章 ふ し ん‥‥‥‥‥43→49
本篇は第1章から第6章で成り、前篇・中篇・後篇と分けられている。
おやさまのお隠れは、第2章である。
第6章の“ふしん”とは、いわゆる大正普請のことを指し、神殿(現、北礼拝場)と教祖殿(現、祖霊殿)の普請である。
各章のタイトルの続きには、初代真柱様の該当年齢が記されているが、あまりにもの若さに、今さらながらなんとも言えない驚きと悲痛さが込み上げてくる。
初代真柱として、49年間という、今の感覚から申せばまだまだお若いのに、まだまだこれからなのに、という太く短いご生涯ではあるが、その業績は、第6章の結びにこうある。
眞之亮一代の三大業績は、
1、教會本部設立
2、一派獨立
3、神殿普請
の三項目である事は申すまでもないが、更に、これを掘り下げるならば、次の六
大業績が含まれて居る事を知る。
1、教祖御傳編纂
2、別席順序及臺本制定
3、海外傳道開始
4、學校創立
5、婦人會創立
6、道の友發刊
ものすごく遠大な偉業ばかりであることに気づく。加えて、上記の第6章引用に続く本編記載であるが、その結びに相応しい前途明るい希望に満ちた締めくくりとなっている。
そして、この全體を通して著しい事は、眞之亮が、常にひたすら教祖のひながたを慕い父秀司の苦心を偲び、たゞー條に神一條たすけ一條の道を、全心全霊を擧げて歩んだ事であって、しかも、一人で歩むのではなく、常に、青年を愛し、子弟の薫陶に全力を傾け、全数を率いて教祖のひながたを歩んだ點である。内務省宗教局長斯波淳太郎が、
「天理教は、教祖の御聖徳によって、その基礎が樹立せられ、初代管長の徳望によって、大體の結構組織せられたのであるから、今後の天理教徒はたゞよく前管長の遺志の存する處を十分徹底せしめるよう努力すればよいのである。」
と言ったというが、教祖の尊いひながた五十年の後を承けて、眞之亮一代の苦心と努力が、よく本数を發展せしめる上に、遺憾なき成果を御守護頂いたのである。
まことに生れる以前から、教祖によってしんばしらの眞之亮と命名されたにふさわしい業績を遺したのであって、この丹精が、今日の本数のあらゆる機構と組織の基幹を爲し、全数の活動の中に脈々と生きて流れて居る。
なんともシンプルかつ分かりやすい全篇の締めくくりでしょうか!
天理教教会本部の組織創業と運営は、もちろんのことではあるが、全ておやさまの御ひながたがベースにあり、全教信者が路頭に迷わないように、確かな道しるべとなるように、初代真柱様の信仰信念が貫かれている一代記、そんな稿本傳記である。
ちなみに、さきほどの引用文でサラッと記された表現ではあるが、あ、、!と目の留まった箇所があった。
『眞之亮が、常にひたすら教祖のひながたを慕い父秀司の苦心を偲び、たゞー條に神一條たすけ一條の道を、全心全霊を擧げて歩んだ事』
これは、敬愛するBe+兄さんのnote記事を読めば、誰しも感涙する記述ではないだろうか。
兄さんは、𝕏のスペースやご自身のnote記事にて秀司様にスポットライトをあて、その道すがらを偲ばれている。
Be+兄さんのおかげで、
「父秀司の苦心を偲び」
という表現を見落とさなかったことに感謝しかない。
さて、これから改めて「稿本中山眞之亮傳」を読もうという方々には是非とも読んでいただきたい箇所がある。
それほ、まえがきともいえる本書「前言」である。
そこにはこうある。
前 言
中山眞之亮傳は 上田嘉成をして執筆せしめたものである。
父の名は新治郎であるが、教祖におつけ頂かれた"眞之亮”の名を題名とした。
父五十年祭をつとめるに當り その稿を急いだ爲、逸脱個所もあることと思ひ敢て稿本の文字を冠した。
蓋し 稿本教祖御傅につぐ 天理教々會史の骨子をなすものである。
骨組の通すに重點を置き 逸話想華の蒐集を後日に割愛するのやむなきに至った。
ここに一言お断りする次第である。
昭和三十八年十一月二十日
正善識
“稿本教祖御傳につぐ 天理教々會史の骨子”と云わしめる要諦は、本誌に触れる際に忘れてはならない点であることはいうまでもない。
この点に留意して拝読するならば、
・おやさまのお隠れ
・おさしづ時代
・初代真柱様
の流れがよく理解できるし、教会本部教会史を学ぶ際にも頭の中で交通整理が進むと思われる。
さてここで、本編に少しだけ触れてみたい。
第2章に描かれた“おやさまお隠れ”の様子。
もちろん初代真柱様の目線で表現されているが、とても写実的で、グッとくるものがある。
(46ページ中程から)
この時の心境を、眞之亮が後年述懐して、「あの時は、全く、泣いて居る暇も無かった。」
と述懐して居るが、全く、さこそと思われる。
こうして、神とも仰ぎ、親とも慕うて來た教祖は、忽然として御身をかくされた。人々の驚きの中にも、眞之亮は、いよいよ全面的に自分の双肩に掛かって來たたすけ一條の重任に、ひとしを身の引きしまる思いであった。人々は未だ泣き沈んで居るが、かくてはならじと、氣を取り直し、かねてより言上を許されて居た飯降伊藏を通して、親神様の思召を伺うと、
さあさあろっくの地にする。皆々揃うたか揃うたか。よう聞き分け。これまでに言うた事、實の箱へ入れて置いたが、神が扉開いて出たから、子供可愛い故、をやの命を二十五年先の命を縮めて、今からたすけするのやで。しっかり見て居よ。今までとこれから先としっかり見て居よ。扉開いてろっくの地にしようか、扉閉めてろっくの地に。扉開いて、ろっくの地にしてくれ、と、言うたやないか。思うようにしてやった。さあ、これまで子供にやりたいものもあった。なれども、ようやらなんだ。又々これから先だんだんに理が渡そう。よう聞いて置け。
とのお言葉である。このお言葉を聞いた時、眞之亮の胸中には、ああ、教祖は生きてお働き下さる。そのお働きを背に負うて、何でも彼でも御安心頂けるよう、御喜び頂けるよう、たすけ一條の道の發展をはからねば、との堅い決意が湧き起って來るのを覺えた。
こうして、教祖は、御身をおかくしになった。その御魂は生きてお働き下され、そのお言葉は、おさしづとして耳に聞く事は出來るものの、日常の小さな出來事から、世上世界との折衝に到るまで、内外大小の事柄は、悉く若い眞之亮の双肩にかかって來る事となった。
この時、初代真柱様は22歳。
その若き双肩に、これから降りかかってくるであろう艱難辛苦、葛藤、苦悩、そして、道の先行きがのしかかってくるのである。
自分なら耐えられるだろうか?
そんな悠長な悩みではない。
そして、三大事業と六大業績。
お出直し直前での、大正2年、神殿普請の竣工と、大正3年、教祖殿の落成。
次に引用するたまへ夫人の述懐に胸をしめつけられる思いが去来する。
神殿普請完成後の或る日、眞之亮は、たまへ夫人に向かって、
「やれやれ普請も完成させて頂いた。これで私の爲す事は一段落付いた。」
と、しみじみと語った。それで、夫人は、
「きりなし普請とお聞かせ頂いて居るじゃありませんか。」
と、力付けると、眞之亮は、
「勿論そうだが、私には‥‥‥‥。」
とて、後を語らなかった。後日、たまへ夫人が嗣子正善に物語った述懐である。
まさか、その年の暮れの大晦日に出直すとは誰かは思わざらん。。
今を生きる私たちは、それを知っている。
知った上で、引用のたまへ夫人の述懐に触れると涙が出そうである。
この年。
つまり、大正3年12月31日午後2時30分。
初代真柱様、お出直し。
御歳49才。
2024年。
三代真柱様の10年祭が勤められた本年は、初代真柱様お出直しより数えて110年の節目の年でもある。
稿本中山眞之亮傳。
第三の稿本にして、
教祖傳に次ぐ第二の権威本。
最後に、本書に掲載されているご近影をお載せしますね。
大正3年4月に撮影されたものだそうです。
慶応2年5月7日(1866年6月19日)のお生まれなので撮影当時はまだその年のお誕生日は迎えられていない。
つまり、初代真柱様48歳のご近影である。
私にはとても48歳の若き男性には見えない。
なにか、茨の道を幾筋も通り抜けた末の、心労と歓喜が交差する“男の顔”、そんな印象を受ける。

初代真柱様に、敬意と畏敬と感謝を込めて🙏
次週に続きます。
また来週👋
みなさま、今年一年SundayNoteにお付き合いくださいましてたいへんありがとうございました。慎んでお礼申し上げます🙇♂️
良いお年をお迎えください🙇♂️
