国民民主党に連立入りを打診した自民党が気にかけているかもしれない比例代表得票率の話
玉木雄一郎氏と前原誠司氏の一騎打ちとなった国民民主党代表戦は玉木氏が勝利し、国民民主党代表を続投することになった。
玉木氏の再選が決まった直後に報道されたのが、自民党による国民民主党連立入りの打診である。
かねてより与党と一定程度の協調路線を敷くことを主張していた玉木氏であり、代表選でもその主張を述べていたことから、自民党側としても受諾してもらえる見込みがあるのではないかと考えているのだろう。
しかし、一見奇妙なのは、なぜ自民党がわざわざこのタイミングで国民民主党に連立をもちかけるのかということだ。
衆参両院とも自民党・公明党の議席で過半数を占めているしため(実は自民党だけで衆参両院の過半数を得ているので、予算や法案を通すだけであれば公明党とも連立の必要はない)、わざわざ大臣ポストを一つ分け与えて(つまり自民党の大臣ポストを一つ削って)連立に組み込む必要はないのである。
この謎を解く鍵は直近の国政選挙における比例代表得票率にあると筆者はみている。次の選挙を安全に乗り切るため、自民党は国民民主党が持つ票を欲しているのだ。
表1は2022年の参院選比例代表における各党の得票数と得票率である。視認性を上げるため、図1で円グラフによる図示も行う。
並び順は改選前の参議院における議席数であり、オーソドックスな並べ方の一つであろう。私が総務省のホームページからダウンロードしたデータでも政党名はこの順番に並んでいた。
しかし、表2そして図2のような順番で並べると印象が変わるのではないだろうか。
つまり、自民党・公明党の枠組みに新しく国民民主党を加えることで、比例代表での得票率を50%超に持っていくことができるのである。
比例代表での得票率が50%を超えるような組み合わせで候補者を調整して一本化を行い選挙戦に挑むことができれば、これは来る衆院選の小選挙区においてかなり安全に戦うことができる。
そういった算段が自民党にはあるのかもしれない。
実際にどれほどの効果がありそうなのか、都道府県ごとの分析という簡便な方法ではあるが、順を追って見ていく。
まず、図3及び図4は2022年の参院選における自民党及び公明党の比例代表得票率の多寡を都道府県別に示した図である。
自民党と公明党では数字のスケールが異なっていることに留意されたい。
尚、自民党の得票率が最大なのは山口県(48.88%)、最小なのは大阪府(19.74%)、公明党の得票率が最大なのは和歌山県(15.84%)、最小なのは新潟県(7.55%)である。
そして、自民党と公明党の得票率を足し合わせた数字をもとに作成した図が図5である。
得票率が50%以上であれば暖色に、50%未満であれば寒色で表示されるようカラースケールを変更している。
全体的に高い得票率ではあるものの、得票率が過半数となるのは27県に過ぎない。
尚、得票率が最大なのは山口県(63.02%)、最小なのは大阪府(32.94%)である。
ここで、国民民主党の得票率を図6に示す。
得票率が最大なのは香川県(15.85%)、最小なのは熊本県(3.38%)である。
そして、自民党と公明党、国民民主党の得票率を足し合わせた数字をもとに作成した図が図7である。
数字のスケールを図5と合わせているのだが、ずいぶん印象が変わったのではないだろうか。
得票率が過半数となるのは39道県に及んでいる。
国民民主党の票を加えたことによって過半数を超えた道県は以下の通りである。()内に得票率の変化を示している。
北海道(46.60→50.49%)
岩手県(45.65→51.01%)
宮城県(45.46→51.305)
埼玉県(44.65→50.68%)
千葉県(47.56→54.09%)
神奈川県(43.55→50.15%)
愛知県(43.85→54.92%)
三重県(48.56→54.64%)
福岡県(47.93→53.94%)
大分県(48.82→56.40%)
また、なおも得票率が50%未満となっている8都府県の得票率は以下の通りである。
東京都(47.65%)
長野県(47.35%)
滋賀県(48.38%)
京都府(40.91%)
大阪府(36.78%)
兵庫県(44.27%)
奈良県(47.02%)
沖縄県(45.61%)
45%を切っているのは京都府、大阪府、兵庫県のみとなっている。
小選挙区において自民党+公明党+国民民主党の連合とまともな勝負になるのは、この3府県における日本維新の会くらいになるのではないだろうか。
選挙区別ではなく都道府県別での分析である点、比例代表での得票率から小選挙区での勝敗(過半数を獲得できるか)を占っている点に粗さがあるものの、自民党にとって国民民主党を取り込むことは最小限の労力で次期衆院選の勝利をものにするための方策であることを示唆できたと思う。
最後に、わずかばかりではあるが経年の分析をして本項を締めたい。
図8は自民党、公明党、国民民主党の国政選挙における比例代表での得票率の推移を示した図である。
それぞれの政党の得票率推移に加え、自民党+公明党、自民党+公明党+国民民主党の推移も載せている。
まず注目するべき点は、公明党の得票率である。
公明党の得票率は直近2回の国政選挙において連続で下落しており、2022年の参院選では11.66%と、過去10年で最小の得票率となった。
それにより、自民党単独での得票率はほぼ横ばいにも関わらず、自民党+公明党の得票率も直近2回の国政選挙において連続で下落している。
一方、国民民主党は2021年衆院選から2022年参院選にかけて得票率を約1.5%上昇させている。
自民党単独での得票率は35%程度が限界で、公明党の退潮に対して打つ手がないのであれば、上り調子の政党のうち取り込みやすい政党を取り込んで得票率を補うのが長期的な目線でも党の利益に適うと自民党は踏んでいるのではないだろうか。
本稿における分析は以上である。
自民党から国民民主党への連立打診を受け急いで書いた原稿になるので、粗い分析や乱筆のほどはご容赦願いたい。
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