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公明党なき憲法改正への道?

憲法改正は日本政治における大きな論点の一つです。

長年の与党である自民党が(もはや建前かもしれませんが)党是として掲げておりながらいまだ実現せず、そのため、選挙のたびに「改憲勢力」で衆参両院の3分の2を確保できるか否かがメディアの報道でも強調されることが多いように思われます。

2023年9月現在、各種メディアで「改憲勢力」とされるのは、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、場合によっては改憲に前向きな無所属議員を加える組み合わせが定番だといえるでしょう。

2022年に行われた参院選に関する報道でも、以下の通り記事が出ております。

しかしながら、これら「改憲勢力」の中でも公明党だけは改憲に対してやや異なる立場を採っている点は政治に興味がある方の中で有名な話でしょう。

独自の「加憲」という概念を使用しつつ、特に憲法9条改正の文脈を意識した「平和主義」の堅持を掲げている点が特徴です。

2016年参院選向け特設サイトでは9条改正を明確に否定しております。

その一方、自民党、日本維新の会、国民民主党は憲法9条の改正を明示的に推進しているほか、その他の事項においても一致点がある程度みられるようです。

(こちらはインターネット上ですぐに関連記事を見つけられると思いますので、新聞記事等へのリンクは割愛します)

もし、公明党抜きで憲法改正の発議ができ(てしまっ)たなら…….。

この想像は憲法改正に賛成する立場の人にとっても反対する立場の人にとっても興味深いのではないでしょうか。

そこで、衆議院と参議院、特に議席配分に比例的要素の強い参議院の議席数から公明党抜きでの憲法改正発議の可能性を探りたいと思います。

まずは衆議院です。

現在の衆院議での会派構成は表1の通り。

表1

公明党を除く「改憲勢力」だけを抜き出すと表2の通りとなります。

定数465の3分の2は310なので、無所属議員を加えずとも超えております。

よって、衆議院についての議論は不要でしょう。

表2

続いて参議院です。

現在の参議院での会派構成は表3の通り。

表3

定数は248なので、3分の2は165.3、つまり3分の2超の賛成には166議席が必要になります。

まずは公明党を除く「改憲勢力」だけを抜き出してみましょう。

表4をご覧ください。

表4

まだ15議席足りませんね。

続いて「改憲勢力」以外の改憲に賛成しそうな会派及び無所属議員を加えた表が表5になります。

表5

尾辻議長が採決に加わることができるか否かは微妙なところですが、とりあえずは数に入れて論を進めます。

まだ11議席足りませんので、これは次回2025年の参院選で新たに獲得する必要があります。

既に155議席を積み上げている中で新たに獲得余地のある議席は在るのでしょうか。

まずは都道府県選挙区から、改憲に賛成すると思われる議員がそうでない議員から議席を獲得する可能性の高い選挙区をリストアップしてみました(表6)。

表6

秋田県、岩手県、新潟県、愛媛県は2019年参院選では「改憲勢力」の候補者が当選しなかったものの、2022年参院選では「改憲勢力」の候補者が当選した選挙区です。

2019年参院選の当選者はいずれも無所属の野党統一候補として出馬した女性候補ばかりですが、2022年参院選での勢いを維持できれば「改憲勢力」の候補者(恐らく自民党の公認候補)が議席を取り返せるの可能性が高いと思われます。

神奈川県選挙区と徳島・高知県選挙区は自民党議員の死去・辞任によって欠員となっている選挙区です。

神奈川県は定数4の選挙ですので、自民党の1議席は容易く取り返されることでしょう。

徳島・高知県選挙区は自民党議員が不祥事で辞任したことに伴い2023年中に補選が行われる選挙区です。不祥事の後ということで自民党はやや不利な状況ですが、2022年参院選で当選した自民党公認候補と次点候補との票差は大きく、来る補選でも自民党公認候補が当選するのではないでしょうか。

出典:https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/36/

選挙区で「改憲勢力」が6議席を新たに獲得すると仮定すると、残り5議席は比例代表で積み増す必要があります。

表7は2019年と2022年の参院選で「改憲勢力」及びN党、参政党が獲得した議席とその増減を示した表です。

2025年参院選にて各党が2022年参院選と同数の議席を得る場合、「増減」の数値がそのまま2025年参院選での比例代表における獲得議席の増減数になります。

表7

日本維新の会の3議席増が効いて3議席ほどは積み増しそうです。

しかし、「公明党なき改憲」にはあと2議席足りません。

そこで、残る都道府県選挙区のうち、改憲に賛成すると思われる議員がそうでない議員から議席を獲得する可能性を否定できない選挙区をリストアップしてみました(表8)。

表8

茨城県及び京都府は定数が2の選挙区であり、いずれも「当選者」欄には得票率2位の当選者を記載しております。沖縄県は定数1の選挙区です。

2022年の参院選において、茨城県と京都府は日本維新の会の公認候補が、沖縄県は自民党の公認候補が僅かな得票率差で敗れています。

日本維新の会は目下、支持率を伸ばしていますし、2022年の参院選沖縄県選挙区の結果は表9の通りだったので、自民党と参政党の選挙協力が成立すれば野党統一候補が出馬してもその得票を自民党公認候補が上回る可能性があるでしょう。

表9

さて、この3議席を得れば追加で獲得した議席は12議席となり、参議院議長による投票がなくとも定数の3分の2を超える賛成を公明党抜きで実現できるようになります。

以上が勝手な想像の結果ですが、結論としては、なかなか厳しいのではないかと思いました。

大前提として、現在改憲に賛成すると思われる議員が当選している都道府県選挙区ではその議席を全て守り切る必要がありますし、そのうえで、比例代表では2022年の勢いを自民党、日本維新の会、国民民主党、N党、参政党の全党が維持する必要があるわけです。

それらを全て達成したうえで、茨城県、京都府、沖縄県で全勝。

これはさすがに無理があるでしょう。

可能性があるとすれば、日本維新の会や参政党が2022年参院選以上に比例代表で議席を獲得するか、あるいは、公明党の得票力の衰えが加速し、なおかつ、公明党が失った比例議席を自民党、日本維新の会、国民民主党、N党、参政党が埋める形になるという展開でしょうか。

もしくは、何らかの形で鳥取・島根県選挙区と徳島・高知県選挙区の合区が解消されるというくらいのものでしょう。

また、ぎりぎりで166議席を確保したとしても、1議席の造反も許されないわけですから、自民党内の最穏健派に相当程度議論が引っ張られる形になります。

その結果として出力される案は果たして、「公明党なき憲法改正」を望む人々の待望したような案になるでしょうか。

というわけで、胡乱な想像にお付き合い頂きありがとうございました。

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