子育ての視点を軸にしながら、街を俯瞰。関内の歴史や人財を武器に、次のステージへ
G Innvation Hub YOKOHAMA(以下G)からほど近い、クリエイターらが集う「泰生ビル」の中で、さまざまな子育て支援を展開する株式会社ピクニックルーム代表取締役の後藤清子さん。保育事業を核として地域の人や企業とつながりながら街の中で子どもを育んでいくスタイルは、多くの人から支持を得ています。後藤さんが思い描くこれからの関内と子育て支援ついて聞きました。
母親として作りたいと思った「気分が上がる憩いの場」
クリエイターとして2007年から勤め始めた制作会社の拠点があり、通勤するようになったのが、最初の関内との縁です。その後、横浜市内に移り住みました。ちょうど妊娠・出産もした時期でしたが、平行して夫とも映画の宣伝や舞台公演などに携わる制作会社を立ち上げたんです。基本的には家で仕事していましたが、2013年以降は外にも仕事場を持つようになり、相生町の「泰生ビル」にあったコワーキングスペースも利用するようになりました。そこで繋がった人からの誘いで子どもミュージカルの制作に携わっていたら、「関内に子育て支援の場を作りたい」という話が出たんです。当時の関内には親が子どもを任せてのんびり過ごせるような場所はなくて。母親である自分としても「お母さんたちの気分が上がるような、おしゃれでこじんまりとした空間を作りたい」と思いました。
保育士常駐で、ワンドリンク付きの憩いの場ー。「泰生ビル」の中に実験的に半年間だけ開所してみたらメディアにも取り上げられて、たくさんの人が来てくれるようになったんです。半年後に存続を検討した時には、「子どもを預けたい」という地域の人や働きたいという看護師や保育士もすぐ集まり、園長もすんなり決まって企業主導型保育園として歩むことになりました。
今は保育園のほか、子育て広場など、小中学生以上の居場所づくりなど事業は多岐にわたります。開所したことで「ここがあれば子どもを産み育てられる」と言ってくれる人がいたことが、すごく嬉しかったですね。
地域に入り込むことで「みなさんに育ててもらった」
地域に溶け込んだ施設にするために、まず「自分が地域に入り込まないといけない」と思いました。子育て支援事業者として見合った自分になるまで2、3年は修行のように保育と向き合いつつ、同時に古くからの住民や町内会の人たちとしっかりコミュニケーションをとって、店舗や企業の人にも認知してもらうという2方向で動きました。その両輪で自分が関内のマーケティングを担うことが地域福祉であり、自社の保育施設への安心感につながると思いましたね。
2018年からは関内まちづくり振興会に入り、その翌年からは町内会の理事と主任児童委員を務めています。公私を関内に捧げていますが、その分子育ての情報も集まってくるので、行政から頼られることも増えました。会社は今年7年目になりますが、私自身保育士の資格も取り、「かくあるべき」という軸を持って周囲と対話できるようになったので、一層動きやすくなりました。みなさんに育ててもらっているという感じです。
起業家がチャレンジできる風土を関内につくりたい
コロナ禍にはまちの動きも鈍化しましたが、オンライン上にはいろんなものが立ち上がっていました。そのころ、Gのファウンダーである相澤毅さん(株式会社plan-A代表取締役)と定期的にミーティングを行うようになったのです。相澤さんはまちづくりが専門分野。私と同世代で子育ての話もできました。話してみると私がやりたいことと、すでにいろいろな関内の情報を得ている相澤さんが思い描く理想の関内像が近くて、どんどんリンクしていったんです。
そんな縁で良く足を運ぶようになったGは、入りやすくて「庭」みたいな感覚。安心感があります。Gとウチとがつながっていることで子どもをもつ入居者の方々のハードルが下がって、関内のコミュニティに加わってくれたらいいなと思いますし、そういう流れを作っていきたいです。30 ~40代で家庭を持っている起業家は多いので、そのような方たちが「ここならチャレンジできる」という風土を関内に作ることが大事だと思います。
地域に起業家が集まってくる風土があれば、小中高校生の教育の場に参加してもらうのも良いかもしれない。子どもたちが大人になった時に、独立することは怖くないとか、多少の失敗も大事とか、それを支えてくれる自治体や地域の人たちがいるということを知っておいてもらえると良いと思いますね。
産後に子どもの預け先がなかったり、職場に子育てへの理解がなくて区切りをつけざるを得なかったりすることも起きている中で、子育ての専門家と会社がつながっていることは大きな安心だと思うんです。それがあることで職場の中で「子育てって大事なことだよね」という共通の認識も生まれますし、働く上で困ったときにそこに相談するだけでも不安感が拭えます。Gはシェアオフィスでありながら、地域の子育て事業者とつながりがあるというのはかなりのアドバンテージだと思います。
関内には迷った時に相談に応えてくれる“賢人”がたくさん
これからの関内は、地域の人が安心して相談し合える街になればと思っています。これまでは年齢を重ねて経験豊富な人が上に立っていましたが、今からは違う。まちづくりの戦略を立てられる人や求心力のある人への代替わりが求められています。事業をしたい、子どもを産み育てたい、自分の立ち位置が分からずに悩んで腰を据えて問題を見定められる人への相談が必要になった時に、関内には寛容な心を持ってそれに応えてくれる賢人がたくさんいます。身近にそうした人たちがいることは、子育て事業者としても、コミュニティから見てもとても大事だと思いますね。
関内のおすすめのお店…
「レストラン・喫茶 ぷらむ」
相生町にある洋食屋。店主が1人で切り盛りしているため、食数限定。揚げ物メニューが充実。中でもメンチカツがおすすめ!