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写真展の会場はシェアオフィスG。そこには積極的で自由な働き方があふれていた

G Hub Innovation Yokohama(以下G)がオープンした2019年、ある写真展が開催されました。Gの壁に飾られたのはカンボジアの人たちのまなざしをテーマにした44枚の写真。それらを撮影したのがカンボジアに学校を作る活動をライフワークにしているハレルデザイン株式会社の星野大起さんです。写真展の開催を通じて、働く人も空間も“ありのまま”なGの魅力を知り、その後入居することに―。星野さんが感じたGの魅力について聞きました。


「クライアント側が気付いていない自分たちの良さを必要な人に伝える」それが使命。

インタビューの答える星野さん

グラフィックデザイナーとしてデザイン会社に勤務後、2012年に独立。2016年にハレルデザイン株式会社を立ち上げました。主に会社設立時や新商品ができた際などのブランディングを手がけ、Webや印刷物、SNS、看板など総合的なプロモーションをクライアントと一緒に考えて提案しています。クライアント側は意外と自分たちの良さを自分たちで認識していないことが多いんですよ。でもそれが商売として成り立つということは何かしら需要があって、お金を出してまで得たいと思う人がいるということですよね。その“良さ”を徹底的に突き合わせて、クライアント側が気付いていなかった価値を、それを欲している人たちに広く正しく伝えることが使命だと思っています。だから私の肩書きとしてはグラフィックデザイナーですが、アートディレクターやコピーライター、フォトグラファーなどいろんな顔があります。クライアントも、まちの商店もあれば、誰もが知るメーカー、大手商社までさまざまです。幅は広いですが基本的なスタンスは全部同じで、「みなさんの知らない魅力を発信します」ですね。

ライフワークのカンボジア支援。クリエイターとして現実をリアルに伝えたいー。

Gで開催された写真展に飾られた1枚。子供たちの真っ直ぐで温かなまなざしに、入居者さんの心も癒されたようで会期が終わる頃には、「写真がなくなるのは寂しい」という声も。

2014年にクライアントがCSR活動として始めたカンボジアに学校を建設するプロジェクトが素晴らしくて、私も仕事ではなくライフワークとして参画しています。カンボジアの首都は立派ですが、その周辺はライフラインもままならない状態のところが多いんです。学校がなくて集会所に子どもたちを集めて勉強していたり。プロジェクトでは現地にある日本のNPO法人にお金を託して学校を建てますが、私たちは本当に学校を必要とする地を見極めるために現地調査に出向いたり、村民説明会を開いたり、校舎の贈呈式をしたりしています。先日6校目が完成したところです。
最初はそのクライアントから「この活動をブログか何かに出してほしい」という話を受けたんですが、それだけではもったいないと思って活動への思いなどを取材しました。それまでカンボジアの内戦のことは私自身分かっていませんでした。調べたらものすごい出来事なのに意外とみんな知らないんですよ。自分たちが現地で見聞きして体験してきたことを発信していきたいという思いに駆られました。早速『やくそくプロジェクト』というタイトルでウェブサイトを作って、私たちのリアルなドタバタ道中記を書き綴ることにしたんです。例えば、カンボジアの人から食事を出されたら、「心ばかりに尽くしてくれたし、現地のものだから食べなければ失礼だ」という流れになるのが一般的でしょ?でも私たちは「こんなハエがたかっているような飯は食えないよ」と本当にその場で言い合ったことをそのまま書いたんです。現実はこうなんですよ。情報発信ができるクリエイターとしてこういう世界があるということをありのままに伝えて、ものを思うきっかけや支援したいと思う人の橋渡しになれば良いと思っています。

写真だけでなく仕事風景も眺められる回遊型の写真展に

2019年にGで開催された写真展の様子。働くスペースという人の営みの一部が見える空間に飾られる写真は、よりリアルさを感じるのかもしれない。長い時間かけて写真を見る来場者が多かった。

フォトグラファーとしてもカンボジアを撮り続けてきました。5年の節目に写真展を開きたいと考えていた時に仕事の現場でGのファウンダーである相澤毅さんと知り合ったんです。写真展の構想を話したら、「Gでやらない?」と提案していただき、トントン拍子に話が進みました。Gがオープンして3、4カ月の頃です。誰が来ても良い写真展だったので、せっかくだから来た人にGという一風変わったシェアオフィスを見てもらいたいという気持ちも起きて、Gの中を回遊しながら写真とともに入居者たちの仕事風景も見られるようにしました。仕事をしている人の邪魔にならないかと心配でしたが、「人が交流するノイズや周りで何かやっているというのも働くシーンの一つ。Gの雰囲気として味わってほしいと思っている」と伺って安心できました。
写真展は“まなざし”をテーマに「EYES~Life in Cambodia~」と題して、壁ごとに「まちの風景」「村の風景」などジャンルを分けて大小44点を展示しました。子どもの笑顔がベースにはありますが、必ずしも笑っているわけではないんです。遠くから来た外国人への奇異の視線もあったし、「写真を撮るな、近寄るな」と追い払われて警戒の視線も。スラムやエイズの人が隔離されている村の子どもたちの笑顔の写真も。写真展ではそういうさまざまなまなざしを、“こちらはどういう視線で見ますか”と投げかけました。
感想を書けるノートを置いていましたが、ユニセフで支援しているとか、夫の転勤で行ったことがあるとか、意外とカンボジアを身近に感じている人多くて驚きましたね。シェアオフィスという「この場所に驚いた」という人もいました。Gはコンクリートが打ちっぱなしで、ブースの作り方もそれぞれ異なり、完成させすぎてない雰囲気。私の写真もありのままを写したものだったので、自然体な感じが共通していて場にすごくマッチしていたと思います。

幼少期から慣れ親しんだ関内。「今はまち自体が仕事場兼遊び場」。

写真展の期間中私がGにいると、入居している人が写真の感想を言ってくれたり、自分も相手の仕事について聞いたりして交流が生まれて、「こういう自由な働き方があるんだな、積極的でいいな」と感じましたね。その時は自分がGに入るとは思っていなかったんですが、翌年にコロナが拡大してテレワーク中心になり、借りていた事務所を出ることになったんです。いくつかシェアオフィスを見学しましたが閉塞感があるし、静かに過ごすことが基本なので、ミーティングも気を遣いそうで。それなら…と自宅で仕事をしてみましたが、それはそれで窮屈。人と話したり、まちに出たりするだけでも刺激になるので、どこかにオフィスが欲しいと思った時に「Gがあるじゃん!」って(笑)。
前の事務所も関内でしたし、出身が本牧なので子どものころから買い物と言えば伊勢佐木町の松坂屋か元町。関内の予備校にも通っていたし、馴染みがあるんですよ。ビジネスで来てみたら同じ年の経営者が多くて、知り合いが増え、飲みに行く場所も日に日に増えて。今はまち自体が仕事場兼遊び場という感覚です。
関内は今、戦後の発展を支えてきた人たちの時代から世代交代をしていると感じます。関内が好きで、関内に憧れた人たちが外から来ていますね。新しい人の力や風があって、次の関内が作られている感じがします。「関内」と呼ばれる地域はとても狭いですが、ずっと人々に使われ続けて注目され続ける土地で、みなとみらい、山下公園、本牧、伊勢佐木町、中華街、いろんなもののHUBになっている。古いものもあるし、最先端なものもあるし、下世話なものもあるし、美しいものもある。その「ごちゃまぜミックス」が関内の魅力だと思いますね。

関内のおすすめのお店…
バー「メリーウィドー」。オーセンティックすぎないバーで、ウイスキーや本格的なカクテルがフランクに楽しめるお店。コロナ前は関内で飲まずに帰る日がないくらいだった(笑)関内はバーのまち。よくぞコロナ禍を乗り切ってくれた!


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