ミルクボーイ covered by 阿佐ヶ谷姉妹

江里子&美穂「どうもー」
江里子「姉の江里子です」
美穂「妹の美穂です」
江里子&美穂「阿佐ヶ谷姉妹です」

江里子「あら風呂敷頂いちゃったわ美穂さん、ありがとうございます」
美穂「どうもー」
江里子「こういうのはいくつあってもいいわよね」
美穂「そうね、ちょっと預かっておくわね」
江里子「お願いね美穂さん」

美穂「ねえお姉さん」
江里子「なあに?」
美穂「ちょっと相談があるんだけど」
江里子「どうしたの美穂さん」
美穂「私の母がね、好きな朝ごはんがあるって言うんだけど」
江里子「ええ」
美穂「その名前を忘れちゃったらしいの」
江里子「あら、そんなことある?」
美穂「それで色々聞いてみたんだけどね、全然わからないの」
江里子「あらそうなの? あ、じゃあわかったわ美穂さん、私がお母様の好きな朝ごはんを一緒に考えてみるから、どんな特徴をおっしゃってたか教えてくれる?」

美穂「まずね、甘くて、食感がカリッとしてて、それで牛乳をかけて食べるらしいの」
江里子「甘くて、カリッとしてて、牛乳……コーンフレークじゃない。コーンフレークよ美穂さん」
美穂「コーンフレークねえ……」
江里子「どうしたの美穂さん」
美穂「でもまだわからないの」
江里子「何がわからないのよ」

美穂「私もコーンフレークだと思ってたんだけど、母が言うにはね、死ぬ前の最後のご飯もそれでいいって言うの」
江里子「それはコーンフレークじゃないわね。人生の最後がコーンフレークていうのはちょっと、ねえ」
美穂「そうかしら」
江里子「あのね美穂さん、コーンフレークはね、まだ寿命に余裕があるから食べていられるのよ」
美穂「そうねえ」
江里子「そうでしょう? コーンフレークの方も最後の食事……っていうのはちょっと荷が重いと思うの。コーンフレークじゃないわ美穂さん」

江里子「もう少し詳しく教えてくれない?」
美穂「どうして栄養バランスの五角形があんなに大きいのかわからないって言ってたの」
江里子「それはコーンフレークよ美穂さん。パッケージの裏の五角形すっごく大きいんだから。でも私はね、あれは自分の得意な項目だけで勝負してるんじゃないかって思ってるの。私の目は騙されないわよ」
美穂「そうよねえ」
江里子「あとあれをよく見たらね、牛乳の栄養素を含んだ五角形になってるのよ。私は何でもお見通しなんだから。コーンフレークだと思うわ」

美穂「でもわからないのよ」
江里子「何がわからないのよ」
美穂「私もコーンフレークだと思うんだけど」
江里子「そうよ」
美穂「母が言うにはね、晩ごはんで食べても良いっていうの」
江里子「それはコーンフレークじゃないわ美穂さん。コーンフレークはね、まだ朝の眠いときだから食べていられるのよ」
美穂「そうよねえ」

江里子「もうちょっと何かおっしゃってなかった?」
美穂「子供の頃ね、みんな憧れたらしいの」
江里子「コーンフレークじゃない。コーンフレークとミロとフルーチェは憧れたんだから。コーンフレークよ美穂さん」

美穂「でもわからないのよ」
江里子「なんでわからないのよ」
美穂「私もコーンフレークだと思ってるんだけど」
江里子「そうよ」
美穂「母が言うにはね、お坊さんが修行のときも食べてるらしいの」
江里子「それはコーンフレークじゃないわ美穂さん。精進料理に横文字のメニューなんて出ないの」
美穂「そうよねえ」
江里子「あのね美穂さん、コーンフレークっていうのはね、朝から楽をしてお腹を満たしたいっていう煩悩の塊なの」
美穂「そうなのねえ」
江里子「あれはね、煩悩に牛乳をかけてるのよ。コーンフレークじゃないわ美穂さん」
美穂「うーん」

江里子「もう少し何かおっしゃってなかった?」
美穂「パフェの、かさ増しに使われてるらしいの」
江里子「コーンフレークじゃないの。パフェのコーンフレークは法律ギリギリで入ってるんだから。お店がもう一段増やすって言うなら、私は動くわ美穂さん」

美穂「でもわからないのよ」
江里子「どうしてわからないのよこれで」
美穂「私もコーンフレークだと思うんだけど」
江里子「そうよ」
美穂「母が言うにはね、ジャンルは中華らしいの」
江里子「それはコーンフレークじゃないわね。ジャンルっていうとわからないんだけど、中華ってことはないと思うわ。レストランの回転テーブルに置いたら全部飛び散っちゃうじゃない。あれ拭くの大変なんだから」
美穂「そうねえ」
江里子「コーンフレークじゃないじゃないの」

江里子「もう少し何かおっしゃってなかった?」
美穂「食べてるときにね、誰に感謝したらいいのかわからないらしいの」
江里子「コーンフレークじゃないの。コーンフレークは生産者の方の顔が浮かばないのよ。浮かんでくるのは腕を組んでる虎の顔よ」
美穂「そうなのよ」
江里子「赤いスカーフの虎の顔よね、コーンフレークで決まりよ美穂さん」

美穂「でもわからないのよ」
江里子「わからないことないじゃない。お母様の好きな朝ごはんはコーンフレークよ」
美穂「でも母が言うにはね、コーンフレークじゃないって言うの」
江里子「コーンフレークじゃないじゃないの。お母様がコーンフレークじゃないっておっしゃるなら、コーンフレークじゃないわ美穂さん」
美穂「そうよねえ」
江里子「先に言ってよ。私が虎の真似してたときどう思ってたのよ美穂さん」
美穂「ごめんなさいね」

江里子「でも本当にわからないわね。どうしましょう」
美穂「それがね、父が言うにはね」
江里子「お父様が?」
美穂「鯖の塩焼きじゃないかって」
江里子「絶対違うわ美穂さん。いい加減になさい」
江里子&美穂「どうも、ありがとうございました」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?