修斗旅 プロ修斗福岡大会 TORAO32編(大会感想編)
ちょっと、修斗以外の「旅」のテキストが長くなりすぎたので、試合の感想は分割しました。サーセン。
TORAO32
今大会は、メインが野尻選手vs磯城嶋選手。伝統的な、ベテランの地元の雄が県外の強豪を迎え撃つという構図ではなく、未来を切り開くべき若い二人に委ねられた。
試合数が多かったので、全試合をレビューするのが難しいが、ざっくりと振り返る。
オープニングファイト
オープニングファイトは2試合。
OF1 柴山 海音(柔術&MMAアカデミーG-Face)vs南 優人(volcano柔術&mma)
柴山選手が快速タックルからテイクダウン、マウント、バックマウント、バックチョークと極めた。
OF2 松岡琉之介(マスタージャパン山口宇部)vs有松ともあき(MMA Rangers Gym)
松岡選手がタックルに入るが、それを切って打撃を入れる有松選手が的確に有効打を重ねた。
全選手入場
全選手入場。ケージに目いっぱい選手が並んで、多いな!と声が出た。
選手代表挨拶は、THE BLACKBELT JAPANの諸石選手。入場の時に、豊島さんがスッとマイクを渡すのが見えた。
今回、若きメイン、セミに加え、福岡選抜vsTBJの対抗戦という面白い柱があり、その大将戦を任されたのが諸石選手だ。
第1試合 深見弦汰(赤崎道場A-SPIRIT)vs脇坂智太郎(有永道場team Resolve)
脇坂選手がトリッキーな動きを見せつつ、足を狙う。そして、ひとたび組み付くと、会場がワーッとい一気に沸き上がる。観客の多くが、脇坂選手がどういう選手なのかよくわかっているのだな、と思った。
しかし、足関節などは深見選手がしのいで、逆に打撃で上回り勝利。ただ、アメフトをやってきた脇選手のように出力が高い選手で足関節のスペシャリストというのは対戦相手からしたら実に厄介な相手だなと思った。
深見選手は、前は比較的にナチュラルな感じのボディだったが、かなり分厚くビルドアップされて、相当仕上がっていた印象。
第2試合 藤谷敦史(マスタ-ジャパン福岡)vs アサシン秋雄(BLOWS OITA LIFE)
藤谷選手は、前回の福岡大会でも思ったが、地元の人気が凄い。大勢の応援団がきているようだ。相当、声援に後押しされたことだろう。
アサシン選手は、前回の試合で自分が撮影した写真をTシャツに使ってくれた。めちゃカッコよいデザインだ。
本当に、野村代表らしいセンスの素敵なTシャツだった(笑)。
第3試合 ムクロック(DESTINY JIU-JITSU)vsシヴァエフ(有永道場Team Resolve)
プロ修斗ではデビュー戦同士だが、他団体で活躍するムクロック選手の堅いグラウンドテクニックが有利ではないかと漠然と想像していた。
しかし、試合では、寝かせに来るムクロック選手に対し、シヴァエフ選手が、ケージ際で、リストコントロールなどが上手く、決定的な形を許さず、下から浮かされそうになってもうまく対処、右ミドルを入れたり、接戦を制した。宮崎師範代の指示が的確で、チームとして機能していた印象。
シヴァエフ選手は初見だったが、自分が見たことがない選手の実力を想像で測り、戦績やイメージだけで判断してはいけないのだということを改めて反省した。
RIZINだと、単に知名度のある選手が勝利予想されることが多いが、まさにそれをやってしまったな、と。
このペースで書くと、大会感想編も分割が必要になりそうだな。とりあえず、進める。
第4試合 ヒカル(柔術&MMAアカデミーG-face)vs清水洸志(MMA Rangers Gym)
この試合は、清水選手が計量オーバーで契約体重の参考試合に。
ヒカル選手は、全日本アマ修斗優勝からのデビュー戦。早く、タイミングの良いタックル、テイクダウンしてからの丁寧なグラウンドコントロールと、シュア&タイトなファイトが光った。強いですね。
計量オーバーによる減点もあったので、ヒカル選手が大差の判定勝利。
第5試合 高宮諒(DESTINY JIU-JITSU)vs下田洋介(095BJJ長崎柔術&和術慧舟會総本部)
第1ラウンドは、高宮選手が下からヒールを狙うが、下田選手がパウンドを巧く入れた。第2ラウンドは、大半が高宮選手がアームロックを狙い、下田選手が何とかずらしていくという攻防だった。ある意味、シンプルな攻防だが、見ているだけでめちゃくちゃ力が入った。
下田選手が一瞬でも気を許せば、一気に極められるこのシーン。かなり危ないところまで捻られたが、下田選手セコンドの松本代表が、丁寧にアームロックの対処を指示してしのぎ切った。
正確な技術論に、試合の状況と自分の選手の力量を把握したうえで、適切な指示が出せるのは、セコンドとして大事なスキルだと思った。
また、高宮選手は、仕事人的ファイトスタイルが似合っている。次は勝ち切るところを見てみたい。
第6試合 古賀優平(TRIBE TOKYO M.M.A)vs永留惇平(MMA Rangers Gym)
この試合は楽しみだったのだが、永留選手が2戦連続で計量に失敗。契約体重での参考試合となってしまった。
試合は、古賀選手が永留選手得意のテイクダウンを防ぎ、パンチを入れるなど終始ペースを握って勝利。思っていたのとは少し違う展開だったが、素晴らしいファイトだった。
古賀選手は、この試合に負けたら引退という約束だったとのこと。
そもそも、どうしてこのカードが組まれたのか不思議だったが、聞いた話をまとめると、元々、古賀選手は福岡出身、MMA Rangers Gymにいたそうで、地元で後輩に負けるくらいなら引退した方がいいという、ある種、長南さんの親心のようなものが背後にあったようだ。
なお、古賀選手は、ケージの外では、あんな好戦的なファイターだったとは思えない優しい話し方をされる。また、修斗公式は「優平」と表記しているが、「優兵」とのこと。ずっと間違えててサーセン…。
第7試合 大城正也(T-REX柔術アカデミー)vs梅木勇徳(THE BLACKBELT JAPAN)
いよいよ福岡vsTBJ対抗戦の先鋒戦だ。
この試合は、大城選手が徹底してケージに押し込み、梅木選手がつきあい、結果的に封じ込める形に。大城選手は、前戦の勝利から凄く自信をつけたように見受けられた。一方の梅木選手の方は、2Rは動いて打撃で攻めて来たが、また大城選手に捕まり、痛い敗戦に。
第8試合 若宮龍斗(KAMIKAZE DOJO MMA)vs杉本静弥(THE BLACKBELT JAPAN)
これは面白かったし、会場が沸いた。
若宮選手が1ラウンドに持ち味のパンチが冴え、電撃的なダウンを奪い、高速の追撃を見せたが、ここは、杉本選手がなりふり構わず全力で逃げた。しかし、これがリカバリーに繋がり、2R は逆にパンチでダウンを奪い、上から肘打ちパウンド連打で勝利。緊張感があり、激しい試合だった。
杉本選手は決定力があるなと感じた。若宮選手も、実力は東京の選手と遜色ないので、できれば関東圏での試合が見たいところだ。
第9試合 石原 愼之介(徳島/MMA Zジム)vs泰斗(MMA Rangers Gym)
これは、予想通りの試合展開で、タックルから上を取る泰斗選手に、下から仕掛ける愼之介選手という形に。愼之介選手が2Rはがぶってバックチョークを仕掛け、あと少しというところまで持って行ったが、結果はドロー。もったいなかったな、という感じの試合に。
今後のストロー級を占う一戦だったが、ランキングにどう反映されるか。
第10試合 諸石一砂(THE BLACKBELT JAPAN)vsネイン・デイネッシュ(MMA Rangers Gym)
対抗戦の大将戦。これも面白かった。
諸石選手は闘争心が人間の形をしているという印象。相手を射貫くような強い視線が火を噴きそうだ。
一方のネイン選手は、一見穏やかな雰囲気だが、非常にテクニカルで、獰猛に仕留める強さがある。
試合は、三角絞めの形で捉えたネイン選手が、肘打ち。それを凌ぐ諸石選手だったが、ネイン選手は腕十字に移行して極め切った。
タップした諸石選手は悔しさに顔を覆った。観客の残酷な感想だが、この試合が糧となり、さらに強くなる選手だと思う。ネイン選手は、倒せる打撃と、極められるグラウンドテクニックが素晴らしい。上位陣との対決が非常に楽しみだ。
対抗戦は、福岡2勝、TBJ1勝の結果に。
福岡の選手からすれば、ホームの利が活きただろうが、日本最強のジム連合といえるTBJの選手と渡り合ったことで、関東の選手に負けないぞ!という自信が深まったことだろう。
一方で、今回選ばれたTBJの選手も、全員が九州出身の選手で、それぞれに応援団が駆けつけていた。そういう意味でも、かなり良い取り組みだったと思う。
同じ枠組みで、ホーム&アウェイで、福岡から東京に乗り込む対抗戦も見てみたいところだ。
セミファイナル 宝珠山桃花(赤崎道場A-SPIRIT)vs吉成はるか(パラエストラ小岩)
この試合は、ドローに終わったインフィニティリーグからの決着戦の意味合いがある。
試合は、宝珠山選手はリーチに勝りつつ、さらに回転が速いショートパンチが冴えるが、この打撃で押せるから、押し込んで有利に組めるという感じでグラウンドの攻めも良かった。
一方で、吉成選手のボクシングもかなり向上している印象だった。最終盤、吉成選手がバックを抜け出して袈裟固めになったところから、もう少し時間があれば、逆転のチャンスもあったかもしれないが、宝珠山選手判定勝利。
メインイベント 野尻由定(マスタージャパン福岡)vs磯城嶋一真(MMA Rangers Gym)
最初にも書いたが、これからの九州を担うのはどちらか?という形で組まれた新旧新人王対決。ノンストップバトルとなったが、最後は、野尻選手が、リフトして叩きつけ、そのままバックを奪い、アームロックを極めた。最後まで攻めきって、勝つ。鳥肌が立った。
野尻選手は、以前から思い切りの良さはあるが、危なっかしさもあった。マスタージャパンに移籍して、弘中さんがセコンドでよく言うように「行くときに行く。メリハリをつけろ。」を実践していたように思えた。
磯城嶋選手は、新人王トーナメントの時から感じていたが、倒されにくく、倒されてもすぐ立ち上がり、現代MMAらしいファイトが素晴らしい。派手さはないが確実に強い選手だと思った。
大会感想のまとめ
判定の多い大会だったが、競った試合が多く、面白かった。
そんな中でも、やはりフィニッシュに繋げたネイン選手が印象深い。
そして、メイン。最後は野尻選手がメインイベンターとして、ランカーとして本領発揮。会場を大爆発させて良い余韻のまま大会終了。
ネインとメイン。試合後に、皆が良く口にしたのがこのワードだった。
一点だけ、苦言も。
MMA Rangers Gymは清水選手と永留選手と同一大会で二人も計量失敗となったわけで、さすがにファンとしては残念としか言いようがない。特に永留選手は2度目で、修斗では一年間同じ階級では出られなくなってしまった。もったいないという思いが強い。
福岡から世界へ
今大会のパンフレットには、元修斗世界王者で、マスタージャパン代表の弘中さんが寄稿されていて、これまでの歴史から、闘裸男~TORAOの意義、感謝、そして、今後の豊富などが綴られている。
以前、twitterにポストしたのだけど、「福岡から世界へ」という高い志を持って取り組むジムがあり、それを支えるベースとなる修斗の大会=TORAOがある。そこから野瀬選手のような選手が生まれているし、さらに次世代の選手が育ってくることでしょう。
楽しみにしています。
メインイベントで快勝した翌朝の野尻選手
大会後のことは、後編をご覧下さい!
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