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To be a man who empowers people. -Lemino「平良達郎 TATSURO TAIRA UFC最強への足跡 EP.2」-
Lemino「平良達郎 TATSURO TAIRA UFC最強への足跡 EP.2」を鑑賞して
今更感があるけど、先日公開された、Leminoの特集「平良達郎 TATSURO TAIRA UFC最強への足跡 EP.2」の感想などを簡単に。
この動画は、2024年10月12日(日本時間13日)に行われた平良達郎選手とロイバル選手の試合をフィーチャーした密着ドキュメンタリーだ。
ロイバル戦に挑むための日本での準備、大橋ジムへの出稽古、渡米後の練習、計量に向けての減量、試合当日、そして、結果が出た後に沖縄に戻るまでの時間を、きれいな映像で記録してくれている。
大橋ジムでの練習などは、行ったことはポストされていたけれど、内容的には余り公開されていなかった話で(試合前のことで当たり前だが)、こういう貴重なシーンを記録、挿入してくれて、純粋な格闘技ファンとしても嬉しい。
なにより、平良達郎ファンとしては、下手な煽りVのように無駄に感情を刺激しようとせず、淡々と、だが丁寧に編集してくれていて、平良達郎という人格に対して誠実な映像なのがありがたいと思った。
また、バックヤードを映しだし、オフィシャルな場での表向きのコメントではない、生の発言を綴ることで、普通のファンにはうかがい知ることのできない、選手、チームのインサイドを照らし出す。本当に貴重な記録で、まったくLeminoさまさまだ。改めてありがたい。
まだ見ていない人は、是非見てほしい。
それにしても、チーム一丸で取り組む減量、デンバーでのトレーニング、そして拠点となる居宅で、チームが過ごす時間。被写体との距離が近く、装うことのないリアルなシーンの連続に、自分もその場にいるような気持になり、あのロイバル戦を思い出しては、心が締め付けられそうになる。
5分5ラウンド。ただ、全力で戦う。ひたすら勝ちに行く。
その姿に、惹かれ、熱狂し、そして、泣いた。この素晴らしい若者に、最上の喜びをもって報われる日がくることを祈り、期待せずにはいられない。
お前はラッキーだよ。
ところで、このドキュメンタリーは、結果的に敗戦を取り上げることとなり、どこに焦点を当てるかが、難しいというか、悩むところだったと思う。
もし、派手に勝っていれば、喜びを前面に押し出し、次の狙いも定まり、勝利の勢いと高揚感で満たされるような映像になっていたかもしれない。
しかし、今回の試合は負けてしまった。
平良選手は落ち込み、周囲の皆が悲嘆に暮れる。だが、そういうときにこそ、当人にかける言葉で、その人たちの人間性が垣間見えるということもある。
今回のドキュメンタリーは、まさに、そこが際立つことになった。
お母さん。お父さん。
そして、松根さん。岡田選手。
一人一人が全力でサポートし、全力で思いやり、全力で勝利を願っていた人たちだ。自分自身も消沈しているはずだが、思い思いに気遣う。捧げた思いの深さが、一言ひとことに投影されているかのようだった。素晴らしい家族でありチームだ。
クライマックスは、やはり、平良選手を挟んで、松根さん、岡田遼選手が並んでカウチに座り、言葉をかけるシーンだろう。
松根さんの声が、少し涙で潤んでいるようにも聞こえる。
師匠として、今かけられる最大限の励ましと敬意を感じさせる。いつもの通り、松根さんは、最高に正しい。本当に素晴らしい師匠だ。
続いて岡田選手が話す。
でも達郎
あれが世界ランキング1位だよ
2年後は絶対負けないよ
24歳
1年後も負けないよ
今ここで5ラウンド
世界ランク1位と戦えたこの経験は
格闘家人生で宝になる
お前はラッキーだよ
負けてラッキーということがあるのだろうか。
職業格闘家たるもの、勝って勝って勝ちまくり、白星ばかりをずらりと並べて無敗で王者となり、そのまま引退できるのであれば、それに越したことはないのではないか。負けて思い知ることなんか、ない方が良いのではないか。
でも、現実的には、王者レベルで、無敗で終われる選手はほとんどいない。
それならば、中長期的に強さを求めるという点で、早い時期に、世界の頂点の高さを体感できたことや、まだまだ足りていない部分が明らかになる一方、伸びしろを再確認する機会になったというのは幸運なのかもしれない。ハイレベルなファイトの苦しい展開の中で得られた感覚が、さらなる新しい扉を開き、見違えるようなステップアップも期待できるだろう。
でも、それだけかな?
そのことを考えるために、まずは、そんなふうに声を掛けた岡田選手の歩みを振り返ってみたい。
打投極・知・愛 岡田遼
岡田遼選手は、元修斗世界バンタム級王者。
修斗では、環太平洋王座も獲得している。RIZINにも出場した。東京ドームでも試合をしている。
ご本人はUFC出場の夢こそかなわなかったが、「できすぎ君」と呼ばれ、打投極・知を備えたオールラウンダーとして、当初の目標である修斗王者となる。あまつさえ、試合後のマイクでは、打投極・知にくわえ、愛まで叫び、自らの思いの深さを見せつけた。修斗の中でも、多くのものを手に入れた選手の一人と言って良いと思う。
ご本人は、「俺は凡人だから…」などと話しているが、何も挑まない本物の大凡人である我々一般のファンからすると、デビュー当初から、強いジムで生き残り、厳しく鍛えられ、とても優れた技術があり、戦略・戦術眼に長け、やる気と自信にあふれる有望な若者に見えた。ついでに言うと、今より、とんがっているようにも見えた。
しかし、プロデビュー後~キャリア前半までの岡田選手にはある傾向があった。
新人王トーナメント。決勝で竹中大地選手に敗れた。
インフィニティリーグ。無敗で全日程を終えたにもかかわらず、優勝を逃した。
最初の環太平洋王座戦。石橋選手と、最高の激闘を演じるも、最後に力尽きた。
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そう、キャリア前半の岡田選手は、大事なところで、大事なものを取り逃がす。いつも、あと一歩届かない。そんな選手に見えた。
会場では、岡田遼大応援団が「あぁ…」と悲痛な声を漏らすのをたびたび聞いた。それよりなにより、めちゃくちゃ厳しい練習を重ね、人生の様々なものを賭けてきたのに、最後の最後で、掴みかけた希望が手の中からすり抜けていくときの本人の心情は、自分のような凡夫には本当に想像を絶する。
さらに、石橋選手との激闘では、脳へのダメージでかなり危険もあったという。ここで格闘技選手としては、もう、ここまでかと思っても不思議はない状況だったと思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1734111196-mpeNjOfYoztJSvb1lVqs634F.png?width=1200)
だが、岡田選手は、死地からよみがえり、ここから、ますます魅力のある選手になっていく。
怪我も乗り越えて再起すると、連勝を重ね、ついに祖根選手に勝って、二度目の挑戦で修斗環太平洋王座のベルトを巻く。
さらに、めぐってきた世界暫定王座決定戦でも、倉本選手に勝利。遂に、修斗世界王座を獲得した。
昨日の修斗で見事に暫定世界王者になった岡田遼選手は、「あと一歩届かない選手」で終わらなかったのが、本当に凄いと思うんですよね。
— Gigio (@Gigio_jp) June 1, 2020
色々な呼び方があると思うけど、不屈の選手だと思う。改めておめでとうございます。#shooto0531
強い。だが、目標に届かない。でも、負けても、届かなくても、そのたびに、そこから這い上がる。
頂点を賭けた喜びと苦しみが繰り返される起伏の激しいドラマを見ている我々ファンは、そのたびに、引き込まれ、感嘆し、応援したくなっていく。実際、客席の応援団も増え、どんどん応援が力強くなっていった。
長く見ているファンほど、人間・岡田遼への感情移入が半端なかったと思う。勝ち負けを超え、全て曝け出すさまが、多くの応援を呼び込む。ファンは、夢をかなえるところを見守り、見届け、その全てを喜び、自らの活力とする。そんな無上の楽しみを経験させてもらえるファンこそ、幸運である。長年にわたって、素晴らしい大河ドラマを見させてもらったという思いだった。
新人王、インフィニティ、最初の環太平洋…岡田選手の物語が長い時間をかけて積み重なり、大きなうねりになっていく大河ドラマを見ているようで、感慨深いです。修斗を、格闘技を好きになって良かったなって思えます。
— Gigio (@Gigio_jp) June 1, 2020
![](https://assets.st-note.com/img/1734155828-RJl1MnNqVSkmgacs0YjOo7eC.png?width=1200)
つまり、岡田遼は、わかっている
つまり、岡田選手は、ここから平良選手がどうなっていくのか、何となくわかっているんだろうな、と思った。自分の経験を踏まえ、それを、さらにそれより高い舞台に臨んでいる平良選手の成長曲線を重ね合わせたときの未来予想図が。
そして、それは、すぐさま次のシーンで、岡田選手自身の言葉で裏打ちされた。
この1敗で
平良達郎と
ファンの人たちの距離が縮まるような気がしてて
格闘家が命張って格闘技を頑張る意義って
見ている人たちに
「こいつもそうなんだ」って感情移入してもらって
自分の人生を重ねてもらって
人々に力を与えるっていう
POWER TO THE PEOPLEって入場曲にしてますけど
そういう存在にあいつがもっとなれるのかなって
この1敗を経験したことで
そう思います。
然り。
この一敗は、平良選手を応援している人たちを、よりいっそう強く引き込み、さらに、新たな人たちの共感をも呼びこんで、より大きな波になっていく。そして、その、より大きくなった波を平良選手は乗りこなし、高みに挑むのでしょう。
負けて、タイトルから一歩後退に見えるかもしれないけど、長い目で見て、全体を見渡してみれば、これでより一層うまくいく。きっと良い方向に進む。岡田選手は、そこを見通し、確信しているのだな、と思った。
だって、岡田選手もそうだったからね。
長々と書いたが、言いたいことは、これだ。
あの夜に、平良選手にこの言葉をかけるとしたら、最も相応しかったのは、多分、松根さんではなく岡田選手だったのではないかな、と思う。
だから、良いチームなんだよね。
何はともあれ、もう少し待つのも楽しみだ。
その言葉の通りになってほしいと、心から思う。
平良達郎選手へ。
今は、次戦に備え、少し羽を休めて、力を蓄え、再び頂点に挑む日を待ち望んで、祈っております。次回予告は、偉大な師匠松根さんと、頼れる兄貴、岡田遼のチームで、是非。
Leminoさん、良質な映像をありがとう。
この映像のおかげで、岡田選手の言葉は、さらに現実味を帯びていくことでしょう。
APPENDIX
平良達郎 TATSURO TAIRA UFC最強への足跡 EP.2
期間限定のようなので、お早めに!
岡田遼チャンネル
余談だが、岡田選手を表する言葉はいろいろあるけれど、個人的には不屈の人だと思う。
些末なことは全てガハハハッと笑い飛ばす快活さも、バイトリーダーとして超適当な冗談で客を喜ばせる軽薄さも魅力。だが、岡田遼の選手としての本質の芯は、諦めずにやり抜く「不屈」だ。本当に素晴らしい。
お待ちしています。