【岐阜市】高過ぎる国民健康保険料、年間2~3万円の引き下げ余地あり。(岐阜市、明石市、協会けんぽの比較)

 1970年度の国民負担率は24.3%、社会保障負担率は5.4%だったが、2024年度の国民負担率は45.1%、社会保障負担率は18.4%となる見込みだ。

 国民負担率が「五公五民」の水準に迫り、健康保険料をはじめとする社会保険料が現役世代への過剰な負担となり、「財政的幼児虐待」ともいわれる「世代間格差」を生み出す原因となっている訳であるが、それだけでなく、「市町村国保」、「協会けんぽ」、「組合健保」、「共済組合」の4つの健康保険組合の間にも「保険者格差」が存在し、最も65~74歳の加入者の割合が高く、最も加入者の平均所得が低く、最も保険料負担率が高いのが「市町村国保」であり、自営業者の市町村国保の加入者、非正規労働者等の低所得者の市町村国保の加入者、65歳未満の市町村国保の加入者が悲惨な目に遭っている。
 ちなみに、岐阜県医師国民健康保険組合 の保険料は、収入に関係無く、1人1箇月あたりの定額の均等割のみで、他の保険者よりも割安である。
 医師の優遇税制 は色々あるが、医師国民健康保険組合もその1つである。

厚生労働省 保険局「医療保険制度改革について (参考資料)」4頁目

 健康保険が生み出す格差は「世代間格差」、「保険者間格差」だけでなく、「自治体間格差」も存在する。
 例えば、泉房穂 明石市長時代に「困っている市民に手を差し伸べるのが行政の使命・役割」を掲げた兵庫県 明石市と岐阜市の国民健康保険料を比較すると、岐阜市の国民健康保険料の方が高い。
 明石市の国民健康保険料、「協会けんぽ」、「組合健保」、「共済組合」の健康保険料と比較して、高過ぎる岐阜市の国民健康保険料が、岐阜市の住民の可処分所得を大幅に減らし、住民の生存権や財産権を脅かし、日本国憲法 第25条 第1項、第2項、日本国憲法 第29条 第1項の違憲状態を作り出しており、経済にも悪影響を及ぼしている。
 日本国政府は、健康保険が生み出す「世代間格差」、「保険者間格差」、「自治体間格差」を解消すべく、新規国債発行により必要な財源を確保し、「市町村国保」や「協会けんぽ」の保険料負担率を「組合健保」や「共済組合」の水準に合わせて引き下げる、または、健康保険の強制加入を止めて任意加入にする等の策を講ずるべきである。
 高過ぎる国民健康保険料の問題は、日本国政府が解決すべき構造的な問題であるが、基礎自治体単独でも国民健康保険料を引き下げることはできる。

 2022年度 決算によると、国民健康保険事業 特別会計の「保険料収入」は、岐阜市が8,653,597,377円、兵庫県 明石市が4,963,633,632円、「保険料収入を平均被保険者数で割った数値 (被保険者1人あたり保険料収入)」は、岐阜市が109,160.60円、明石市が90,023.64円だった。

 また、国民健康保険事業 特別会計の「差引残額」は、岐阜市が2,479,205,662円、明石市が22,158,023円、「差引残額を被保険者数で割った数値 (平均被保険者1人あたり差引残額)」は、岐阜市が31,273.88円、明石市が401.87円だった。

 上記の事実からいえることは、岐阜市の国民健康保険事業は、明石市の国民健康保険事業よりも被保険者1人あたり19,136.96円/年、保険料が高く、しかも、「差引残高」として総額2,479,205,662円/年、被保険者1人あたり31,273.88円/年も余らせて、次年度に繰り越しているということである。

 つまり、岐阜市の国民健康保険事業は、理論上、「差引残高」を全額、国民健康保険料の引き下げに充てれば、被保険者1人あたり31,273.88円/年、保険料を引き下げることが可能であり、少なくとも、明石市の水準に合わせれば、被保険者1人あたり19,136.96円/年、保険料を引き下げることが可能であるといえる。

 下の図1、図2は、岐阜市の国民健康保険料、明石市の国民健康保険料、「協会けんぽ」の健康保険料を比較したグラフである。

図1 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と 「協会けんぽ」 健康保険料の比較
( 2024年度 / 40歳未満 / 単身者 / 給与所得者 )

【 40歳未満 / 単身者 / 給与所得者 】
・ 岐阜市の国民健康保険料は、収入 0~980万円/年 の間、一貫して、明石市の国民健康保険料よりも高く、収入 981万円/年 以上になると、差が無くなる。
・ 岐阜市の国民健康保険料は、協会けんぽの健康保険料よりも一貫して高い。
・ 明石市の国民健康保険料は、収入 0~72万円/年 の間、協会けんぽの健康保険料より低く、収入 73万円/年 以上になると、協会けんぽの健康保険料より高くなる。

[ 差の最大値 ]
・ 収入 782万円/年 の時、(岐阜市 - 明石市) は (847,068 - 710,306) = 136,762円 となり、最大値となる。
 (収入 782万円/年 の時、岐阜市の国民健康保険料は、明石市の国民健康保険料の1.19倍である。)
・ 収入 797万円/年 の時、(岐阜市 - 協会けんぽ) は (851,378 - 386,490) = 464,888円 となり、最大値となる。
 (収入 797万円/年 の時、岐阜市の国民健康保険料は、協会けんぽの健康保険料の2.20倍である。)
・ 収入 972万円/年 の時、(明石市 - 協会けんぽ) は (884,136 - 493,518) = 413,664円 となり、最大値となる。
 (収入 972万円/年 の時、明石市の国民健康保険料は、協会けんぽの健康保険料の1.79倍である。)

[ 差の最小値 ]
・ 収入 981万円/年 以上の時、(岐阜市 - 明石市) は (890,000 - 890,000) = 0円 となり、最小値となる。
・ 収入 100万円/年 の時、(岐阜市 - 協会けんぽ) は (76,200 - 46,378.80) = 26,129.20円 となり、最小値となる。
・ 収入 0円/年~43万円/年 の時、(明石市 - 協会けんぽ) は (34,486.80 - 56,817.00) = -15,103.80円 となり、最小値となる。

 なお、明石市の国民健康保険料が協会けんぽの健康保険料を超える点は、収入73万円/年 の時で、(明石市 - 協会けんぽ) は (34,486.80 - 24,512) = 17,201.20円 である。

[ 差の極小値 ]
・ 収入 0円/年 ~ 43万円/年 の時、(岐阜市 - 明石市) は (76,200 - 19,383) = 56,817円 であり、岐阜市の国民健康保険料は、明石市の国民健康保険料の3.93倍となるが、
 収入 98万円/年 の時、(岐阜市 - 明石市) は (76,200 - 64,610) = 11,590円 となり、極小値となる。

 上記の「極小値」が生じる理由は、岐阜市に於いては、低所得者は申請しないと保険料が減免されないのに対し、明石市に於いては、低所得者は申請しなくても自動的に保険料が減免される仕組みだからである。


図2 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と 「協会けんぽ」 健康保険料の比較
( 2024年度 / 40歳以上65歳未満 / 単身者 / 給与所得者 )

【 40歳以上65歳未満 / 単身者 / 給与所得者 】
・ 岐阜市の国民健康保険料は、収入 0~970万円/年 の間は、明石市の国民健康保険料よりも高く、収入 971万円/年 ~ 1010万円/年 の間は、僅かながら明石市の国民健康保険料の方が高くなり、1011万円/年以上 になると、差が無くなる。
・ 岐阜市の国民健康保険料は、協会けんぽの健康保険料よりも一貫して高い。
・ 明石市の国民健康保険料は、収入 0~43万円/年 の間、協会けんぽの健康保険料より低く、収入 44万円/年 以上になると、協会けんぽの健康保険料より高くなる。

[ 差の最大値 ]
・ 収入 782万円/年以上の時、(岐阜市 - 明石市) は (978,072 - 880,306) = 97,766円 となり、最大値となる。
 (収入 782万円/年 の時、岐阜市の国民健康保険料は、明石市の国民健康保険料の1.11倍である。)
・ 収入 798万円/年の時、(岐阜市 - 協会けんぽ) は (984,947 - 448,890) = 536,057円 となり、最大値となる。
 (収入 798万円/年 の時、岐阜市の国民健康保険料は、協会けんぽの健康保険料の2.19倍である。)
・ 収入 971万円/年の時、(明石市 - 協会けんぽ) は (1,053,452 - 545,574) = 507,878円 となり、最大値となる。
 (収入 971万円/年 の時、明石市の国民健康保険料は、協会けんぽの健康保険料の1.93倍である。)

[ 差の最小値 ]
・ 収入 1011万円/年の時、(岐阜市 - 明石市) は (1060,000 - 1060,000) = 0円 となり、最小値となる。
・ 収入 100万円/年の時、(岐阜市 - 協会けんぽ) は (92,836 - 60,772.80) = 32,063.20円 となり、最小値となる。
・ 収入 0円/年~43万円/年 の時、(明石市 - 協会けんぽ) は (40,054.80 - 65,817) = -15,631.80円 となり、最小値となる。

 なお、明石市の国民健康保険料が協会けんぽの健康保険料を超える点は、収入44万円/年 の時で、(明石市 - 協会けんぽ) は 40,705 - 40,054.80) = 650.20円 である。

[ 差の極小値 ]
・ 収入 0円/年 ~ 43万円/年 の時、(岐阜市 - 明石市) は (90,240 - 24,423) = 65,817.00円 であり、岐阜市の国民健康保険料は、明石市の国民健康保険料の3.69倍となるが、
 収入 98万円/年の時、(岐阜市 - 明石市) は (90,240 - 81,410) = 8,830円 となり、極小値となる。

 上記の「極小値」が生じる理由は、岐阜市に於いては、低所得者は申請しないと保険料が減免されないのに対し、明石市に於いては、低所得者は申請しなくても自動的に保険料が減免される仕組みだからである。


 下の図3、図4は、岐阜市の国民健康保険料、明石市の国民健康保険料、「協会けんぽ」の健康保険料の間の差を比較したグラフである。

図3 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と 「協会けんぽ」 健康保険料の間の差の比較
( 2024年度 / 40歳未満 / 単身者 / 給与所得者 )


図4 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と 「協会けんぽ」 健康保険料の間の差の比較
( 2024年度 / 40歳以上65歳未満 / 単身者 / 給与所得者 )


 下の図5、図6は、岐阜市の国民健康保険料、明石市の国民健康保険料、「協会けんぽ」の健康保険料の間の商を比較したグラフである。

図5 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と「協会けんぽ」健康保険料の間の商の比較
( 2024年度 / 40歳未満 / 単身者 / 給与所得者 )


図6 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と「協会けんぽ」健康保険料の間の商の比較
( 2024年度 / 40歳以上65歳未満 / 単身者 / 給与所得者 )


 下の図7、図8、図9、図10は、岐阜市の国民健康保険料、明石市の国民健康保険料、「協会けんぽ」の健康保険料の対収入比を比較したグラフである。

図7 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と「協会けんぽ」健康保険料の対収入比の比較
( 2024年度 / 40歳未満 / 単身者 / 給与所得者 / 年間収入0~50万円 )
図8 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と「協会けんぽ」健康保険料の対収入比の比較
( 2024年度 / 40歳未満 / 単身者 / 給与所得者 / 年間収入51万円以上 )


図9 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と「協会けんぽ」健康保険料の対収入比の比較
( 2024年度 / 40歳以上65歳未満 / 単身者 / 給与所得者 / 年間収入0~50万円 )
図10 国民健康保険料 (岐阜市, 明石市) と「協会けんぽ」健康保険料の対収入比の比較
( 2024年度 / 40歳以上65歳未満 / 単身者 / 給与所得者 / 年間収入51万円以上 )


 国民健康保険料は、「協会けんぽ」の健康保険料よりも大幅に割高であり、「協会けんぽ」の健康保険料と比較して、最大で、岐阜市の国民健康保険料は 2.21倍 高く、明石市の国民健康保険料は 1.93倍 高い。
 岐阜市の国民健康保険料は、明石市の国民健康保険料よりも割高であり、減免対象の低所得者層の部分で最大 3.93倍、減免対象外の部分で最大 1.19倍 高い。
 図7~10、国民健康保険料と「協会けんぽ」の健康保険料の対収入比のグラフより、岐阜市の国民健康保険料は、減免対象の低所得者層に対して強い逆累進性が働いていることが分かる。
 減免対象外の部分では、「協会けんぽ」の健康保険料の対収入比がほぼ一定になっているのに対し、国民健康保険料は、年間収入 約800~1,000万円までは累進性が働き、約1,000万円を超えると逆累進性が働いていることが分かる。

 まず、岐阜市の国民健康保険料の減免対象の低所得者層の部分に働いている強い逆累進性を弱めるため、明石市に習い、減免申請をしなくても、自動的に減免されるように制度変更すべきである。
 そして、国民健康保険料と「協会けんぽ」の健康保険料の間の格差を解消すべく、差引残額、国民健康保険財政調整基金、財政調整基金等を活用して、国民健康保険料を引き下げる必要がある。

 国の制度によって、国民健康保険料の上限が決まっているため、「ある一定の年間収入」以上になると逆累進性が働くのは、自治体ではどうしようも無い問題であるが、自治体でも『所得割額を算出する際に乗ずる「パーセンテージ」』、『均等割額を算出する際に乗ずる「加入者1人あたりの金額」』、『平等割額を算出する際に乗ずる「1世帯あたりの金額」』を引き下げ、住民の社会保障負担を軽減し、住民の可処分所得を増やし、実質賃金を引き上げることが可能である。

 「差引残額」2,479,205,662円分の国民健康保険料の引き下げをした場合、日本の限界消費性向を0.7とすると、
2,479,205,662 × { 0.7 / (1 - 0.7) } ≒ 5,784,813,211.33 円
の経済波及効果が得られると試算できる。

 国民健康保険料の引き下げは、住民負担を軽減するだけでなく、経済政策としても有効な「事実上の減税」であり、賃金上昇を上回る物価高騰に苦しむ、今の岐阜市の住民には必要な政策である。
 決算のデータより、1人あたり2~3万円/年の引き下げ余地がある。
 岐阜市役所、そして、岐阜市の選挙で選ばれた公務員の方々には、是非、前向きに、国民健康保険料の引き下げをご検討頂きたい。


< 参考資料 >

・ 「市政概要」(岐阜市役所)
https://www.city.gifu.lg.jp/info/shigikai/1009362/1009367/

・ 「決算審査意見書」(岐阜市役所)
https://www.city.gifu.lg.jp/info/kansa/1009489/1009496.html

・ 「決算審査意見書」(明石市役所)
https://www.city.akashi.lg.jp/kansa/shise/kansa/kekka/

・ 「明石市役所 財政のあらまし」(決算内容)
https://www.city.akashi.lg.jp/zaimu/zaisei_ka/shise/zaise/aramashi/zaise/

・ 岐阜市 国民健康保険運営協議会
https://www.city.gifu.lg.jp/info/shingikai/1007262/1007285/

・ 国民健康保険の都道府県単位化
https://www.city.gifu.lg.jp/kurashi/kokuminnenkin/1001829/1006598.html

・ 「令和6年度の岐阜市国民健康保険料率が決まりました」(岐阜市役所 福祉部 国保・年金課)
https://www.city.gifu.lg.jp/kurashi/kokuminnenkin/1001824/1022061.html

・ 「国民健康保険料の計算」(岐阜市役所 福祉部 国保・年金課)
https://www.city.gifu.lg.jp/kurashi/kokuminnenkin/1001829/1001876/1001877.html

・ 「保険料の決め方(令和6年度)」(明石市役所 市民生活局 国民健康保険課)
https://www.city.akashi.lg.jp/shimin_kenkou/kokuho_ka/hokenryo_keisan/r2kokuho.html

・ 「保険料の軽減・減免について」(明石市役所 市民生活局 国民健康保険課)
https://www.city.akashi.lg.jp/shimin_kenkou/kokuho_ka/hokenryo_keisan/kegen.html

・ 「国民健康保険の保険料・保険税について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html

・ 「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」(全国健康保険協会)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r06/r6ryougakuhyou3gatukara/

・ 「国民負担率」(財務省)
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/