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16歳の時、初めて銃を持った
修学旅行というものを経験したことがない。
中国の学校でも、団体で外泊するといったイベントはあったが、それは大抵
軍隊での訓練だった。
いつでも戦争が来ても良いように備えておく為か、中国では小学校5年生から、定期的に軍隊に行って訓練を受けなければならない。
殺伐とした風景が広がる軍営。
そこで私達を待ち受けているのは、厳しいトレーニングの日々だ。
最初は軽い体幹トレーニング。
ランニングや、真っ直ぐ立つ練習等、簡単なものからスタートするが、中学生になると、それに加えて障害物競争等も行う。
高校生にもなれば、武器についても学ぶ。
そしてタイトルの通り、私は16歳の時に初めて銃を持ったのだ。
弾を打つ時、肩にかかったあの反動の痛みは今でも忘れられない。
男の子だろうが女の子だろうが関係無かった。
きれいな景色とか、美味しいご飯とかとは全く無縁だった。
就寝時間のまくら投げ大会とか、布団にもぐりながらひそひそと話す甘酸っぱい青春話とかは、アニメやドラマの世界でしか見れなかった。
華やかさの欠片も無い訓練所。
あちこちに障害物越えトレーニングに使う機材が置かれており、時に軍用車が1、2台とめてあった。
砂ぼこりがひどかった。
食堂でのご飯はとても素朴で、味がしないものが多かったが、厳しい訓練後で腹ペコ、且つ育ち盛りの私達にはごちそうだった。
大皿に盛られたおかずは争い合って食べることもあった。
中でも肉類は特にそうだ。自らどんどん取らないとあっという間になくなってしまう。
訓練で倒れない為にも、ガツガツと食べなければならなかった。
寮は大体6人~8人が入る小部屋で、二段ベッドの周りにそれぞれの持ち物がずらりと並んでいた。
水回りは全て共用に作られていたが、蛇口の数には限りがあったし、浴室のスペースも足りなかったので、押し合いながらも、なんとか時間を上手にずらしながら分け合って使わなければならなかった。
就寝時間はきっちり決まっていたので、待っても待っても順番が回って来ない日は、シャワーを諦めなければならなかった。
中々寝付けない日は、皆布団の中でこっそり雑談もするのだが、なんせ教官が見回りに来るものだから、気を引き締めなければならない。
ついつい声が大きくなると、気付いたら教官がドアを開けて睨んでるという恐ろしい事態になりかねない。
そうなってしまうと、罰として真夜中にうさぎ跳びをやらされる上に、次の日全体朝礼の時にさらし者にされてしまう。
やっと寝付いても、深夜集令が鳴ると一斉に着替えて訓練所に集合しなければならなかった。
もたもた着替えていると怒られてしまうので、寝巻に着替えずそのまま軍服で寝る子もいた。
寝ても覚めても気を抜けない日々。
あまりの辛さに泣く時もあった。
そして、家に帰れる日を指折り数えてただただ耐えた。
でも不思議だ。
あの苦しかった毎日が、
今となっては輝きを帯び、
私の青春の1ページを飾っている。
真っ黒に焼けた皮膚。
がっちりと丈夫になった一つ一つの筋肉。
助け合いながら深まった仲間の絆。
自分のことを自分でやれるようになり、身に付いた整理整頓の力。
訓練後に吹く風はとても涼しかった。
時々差し入れでもらえたアイスバーは最高に旨くて、今もそれを超えるアイスは無い。
キャンプファイヤーの火を囲み、皆で軍歌も歌った。
「鬼教官」が笑顔でアコーディオンを出してはノリノリで演奏したりして、普段見れない教官の姿を知れて、人は異なる面を幾つも持っているものだということを学んだ。
そして時たま、遠くを見つめながら静かに故郷の話をしてくれる教官もいた。
父のこと、母のこと、兄弟姉妹の事。
子供の頃の思い出。
学生だった私達の目には大人に映った彼らも、今思い返してみれば、殆どがまだまだ20代。
成人してすぐに、国を守るためにふるさとを後にした者ばかりだった。
私達は訓練期間が終わると家に帰れたが、彼らは一人の軍人として、ずっとそこにいなければならない。
辛くても、決して逃げられない。
戦争が来れば、命をも捧げる覚悟で、日々トレーニングに取り組んでいる訳だ。
あの時私が持った銃を、今も彼らは抱えて、そこを守り続けているのだろうか。
(はてなブログ同時掲載:https://www.gifteddecoboko.com/entry/2019/09/10/080000)
(画像素材元:https://pixabay.com/ja/)
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