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CM制作の流れ

映像制作に興味がある皆様。目指している学生の方。
大手CM制作会社で働いていた自分の経験から映像制作の流れについてまとめてみました。
私は社会人になって初めて映像制作の経験をしたので、学校で勉強したわけではありません。
そのため、この記事の内容は全て自分の経験から、制作会社目線でお伝えできたらいいなと思います!


まず、制作会社が関わる部分のみになるので、クライアントからの依頼や納品後の詳細は省いていきますね。




企画

まず、多くのCMは、広告代理店がコンペで勝ち取った企画から制作されています。
コンペで勝つためにはクライアントに魅力的に思ってもらうための資料が必要です。
この資料作り制作会社が広告代理店の依頼を受けて行います。
映像制作だけではなく、映像を作るための資料作りも制作会社のお仕事です。

  • リサーチ
    広告代理店のプランナーが企画したアイディアをもとに、近い表現をしているリファレンス映像、競合他社のCM、Vコンに使う素材集めなどを行います。

  • 字コンテ
    広告代理店のプランナーが作成する資料です。誰に何を伝えたいか、商品の魅力をどう伝えるか、目的をはっきりされていると、制作側的にも助かります。
    基本は制作部内で確認するものであり、クライアントにはみせません。

  • 企画コンテ
    字コンテの内容に加えて、イメージするシーンの参考画像、ナレーション、セリフなどが記載された資料です。
    字コンテ同様、基本は制作部内で確認するものであり、クライアントにはみせません。

  • 絵コンテ
    プランナーが作成したイラスト、イメージする画を、クライアントに見てもらうため、コンテライターに発注した清書の画でコンテ化した資料です。

  • vコンテ
    既存のCM、アリネガ素材などを使用して、コンテを映像化した資料です。
    ナレーションなどは制作部が担当することが多いです。

  • イメージv
    企画のイメージにあった映像と音楽をつなげて作成した資料です。
    主に、タレントものの場合に作成されることが多く、ドラマや映画などの映像をつかって、イメージに近い表情や雰囲気を表現します。

  • ランスルー(プレゼンのリハーサル打ち合わせ)
    広告代理店と資料の最終確認をしながら、実際にプレゼンする際のリハーサルを行います。
    制作部はその時発生した直しなどに対応しつつ、出力(印刷)が必要であれば手伝います。

  • コンペ
    クライアントに向けて企画のプレゼンを行います。
    複数の広告代理店、プランナーが参加し、選ばれた企画が無事制作決定です。


撮影準備

企画が確定したら正式に依頼が来ます。
とはいっても、撮影当日までに衣装が決まらない、クライアントの希望で一部変更が発生した、など急な対応が必要になることざらに起きるので、広告代理店のプランナーや営業との連携が重要になります。
制作部は円滑に撮影を行うために手配することがたくさんあります。
撮影準備で行う作業は下記になります。

  • 監督決定
    基本的には、プランナーがイメージに合った作品の制作経験がある監督を指名するので、制作部からアポをとります。
    スケジュールと予算があえば監督決定です。

  • 演出コンテ発注
    企画内容に沿って監督が演出コンテを作成します。
    プレゼン時の内容より、カメラの動きや人物の表情など細かく書かれています。
    クライアントも確認するので、こちらもコンテライターに清書を発注します。

  • 撮影部、照明部、録音部手配
    メインのカメラマンや照明技師などは監督がいつも仕事をしている人を指名します。
    指名がなければ制作部がいつもお願いしている人に依頼します。

  • 美術部、小道具、クッキング等手配
    撮影部等の手配と同じく、撮影の内容によって、美術部など手配します。
    ビールなどのお酒のCMでは、美味しくみえる泡を作るシズル担当の美術スタッフを必ず手配します。

  • ロケ地手配
    制作部ですべて手配する場合と、大変な場合はロケーションコーディネーターを手配してお願いする場合があります。
    何時間使用できるのか、どういった撮影が可能なのか。
    意外と大切なのは、ロケ地として確定する前に監督や代理店に確認が必要なので、候補としてキープするためいつまでに確定の連絡が必要かなど確認しておくとよいです。

  • ロケハン
    実際にロケ地に赴き、イメージしている映像の撮影が可能か、撮影を円滑に行える環境があるか、確認します。

  • オーディション
    有名なタレント以外に出演者が必要な場合は、キャスティング会社に候補者を集めてもらい、オーディションを行います。
    基本は制作会社の会議室などで行うことが多く、監督とカメラの前で演出に合った演技をしてもらいます。
    有名なタレント以外のタレントは、ノンタレと呼ばれます。

  • キャスト手配
    出演者が決定したら、キャスティング会社を通して、決定の連絡をします。
    撮影日はギリギリまで決定しなかったり、天候に応じて予備日などがあるため、撮影可能な日程と自宅の最寄り駅を確認しておきます。

  • スタンドイン手配
    タレント撮影において、照明やカメラアングルの調整のため、長時間カメラ前に立ってもらわなければなりません。
    忙しいタレントにお願いすることはできないので、スタンドインと呼ばれる人を手配します。
    照明に影響するため、衣装も本番と似ているものをスタンドイン用に用意します。
    スタンドインは俳優やタレントの卵にお願いすることが多く、これもキャスティング会社に依頼します。

  • 衣装ヘアメイク手配
    タレントの場合は事務所指定の方に連絡します。
    スケジュール、予算的にOKであれば、打ち合わせをし、企画に合わせたヘアメイクと衣装を用意してもらいます。

  • お弁当手配
    プロデューサーや制作会社によっては、お弁当にこだわりがある人がいるので、気を使って手配します。
    忙しくピリピリした現場において、お弁当のクオリティがスタッフのモチベにつながるので意外と大事です。
    タレント用はちょっといいものを別で用意したりすることがあるので、プロデューサーに確認しましょう。

  • 資料準備
    コンテ、衣装資料、ロケ地資料など沢山あるので、次回以降解説します。


撮影

撮影現場で制作部が任される部分は、照明や音声など専門的なもの以外のその他すべてと思った方がよいです。
その中でも、制作部で役割分担する際、「今日は○○担当ね」といわれるのは下記になります。

  • ランナー
    経験が少ない制作部が担当になることが多いです。
    一番数が必要ですが、一番重要だったりします。
    お弁当の配置だったり、資料の配布だったり、買い出しだったり、基本雑用をこなし走り回ってます。

  • キャスト担当
    出演者控室の準備、お花や差し入れや飲み物の用意、資料の配置、など丁寧な対応が求められます。
    撮影中は常に出演者の近くに待機し、水を渡したり、室内の温度を気にしたり、気遣いが大切です。
    また、所属事務所の意見を現場に伝える役割も果たします。

  • ロケ地担当
    ロケ地やスタジオの責任者と連携し、どういった撮影が可能か、スタジオ備品で何が借りれるのか、何時までに撤収が必要などある場合は制作部内に共有し、確実にできるように声掛けします。

  • カメラ横
    カメラの横で、カチンコを担当したり、カンペを出したり、バミリを貼ったり、撮影部まわりのケアをします。

  • 監督横
    監督の横で、どのカットがOKでどのカットの何がNGなのか記録します。
    また、撮影の状況をプロデューサーや制作部全体に共有し続け、進行状況を把握するのも大切です。

  • クライアント(プロデューサーが担当)
    広告代理店の営業と連携し、クライアントの要望を聞き、現場に伝えます。
    現場目線の演出の解釈や撮影進行の流れを把握し、伝えなければいけないので、クライアントの要望をそのまま現場に伝え続けるとちょっと嫌われます。


編集

編集は、制作会社の会議室や編集スタジオで行います。
制作部は、飲み物や資料の準備、クライアント要望などをエディターさんに伝える役割を果たします。

  • オフライン編集(仮編集)
    いわゆる仮組みのようなものです。
    肌の補正や映像全体の色調整以外は全てオフラインの段階で完成させます。
    Adobe Premiere Proでエディターさんに作業してもらいます。

  • オンライン編集(本編集)
    カラーコレクションを行います。通称カラコレです。
    肌の補正や映像全体の色調整を行います。
    カラーコレクタと呼ばれる専門の機械を使用して、カラリストさんに作業してもらいます。


納品

試写会でクライアントOKがもらえたら無事納品!
お疲れさまでした!


あとがき

大きな映像制作会社では、タレントや解禁前の情報など、絶対に外に漏れてはいけない情報が多いため、秘密保持契約を全スタッフと交わしたうえで行うことがほとんどです。
そのため、リアルな働く人の声などは直接聞いてみないと分からなかったり、実際に体験してみてわかることが多くあります。
自分が制作に関わったCMが世の中に出るのは、実際に経験しないと味わえない嬉しさがありますよ!

この記事を読んで、映像制作のイメージを膨らませていただけたら、幸いです。



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