君へ贈る、後生一生のプレゼント
『ね、ねぇ...』
「んー?」
『き、今日って何の日......?』
突然、彼女の夏鈴が聞いてきた。
今日、8/29は夏鈴の誕生日。
付き合って6年近くになるが、夏鈴は良くも悪くも誕生日に興味がなく、今まで祝ってこなかった。
いや正確には、祝わせて貰えなかった。
祝おうとしても、『恥ずかしいから、大丈夫』の一言。
そんな夏鈴が、自分から誕生日を匂わせてくるなんて初めてだ。
「えぇ...今日でしょ?」
『うん...//』
もちろん夏鈴の誕生日だって分かってる。
だけど、ほんの少しだけ意地悪したくなった。
「んー、あっ!焼肉の日だ」
『違う...。いや、違わないけど...』
『それよりもっと、こう、特別な......//』
顔をすごい赤らめて俯いてる。
今更、自分から誕生日だって言うのは恥ずかしいんだろうな。
「特別な日か...」
「んー、誰かの誕生日とか...?」
『......っ//』コクコク (頷く)
「......あ、浜辺美波さんの誕生日だ!」
「あの人、もう24歳になるんだ...」
『......もういい』
あ、やばい......拗ねちゃった。
流石にこれ以上意地悪してると、口を聞いてくれなくなるので辞めておきます。
ギュッ
「ごめんって、夏鈴の誕生日でしょ?」
「ちゃんと覚えてるよ。おめでとう、夏鈴」
流石の夏鈴も、ハグで許してくれるほど優しくは...
『覚えてるなら、最初からそう言ってよ...//』
『ありがとう、〇〇』
ハグで1発だった。チョr、優しいな。とても。
「でも、夏鈴が誕生日を匂わせるなんて珍しいね?」
『えっ?そ、そうかな...』
「うん。だって毎年誕生日に興味無いじゃん」
『ま、まぁ祝って貰うのもたまにはいいかなって...」
「.........」
『な、なに...?』
ジッと見つめると、目が泳ぎ出した。
何かを隠しているんだろう。
「......夏鈴、なんか隠してるでしょ?」
『えっ...?』
「なにか企んでるよね...?」
『い、いや別に...』
「正直に話して...?」
『......き、今日私の誕生日じゃん?』
「うん」
『だからさ、〇〇から......//』
「......もしかしてだけど」
「プレゼントが欲しいとか?」
『.........//』
なるほど、図星だ。
今まで誕生日に興味なかったのに、今更プレゼントをくれって言うのは恥ずかしいと。
ちなみに、毎年買ってはいるんだけどな...。
「誕生日プレゼントが欲しくて、匂わせてたの...?」
『う、うん...//』
素直に言ってくれたら良いのに...笑
まぁ、そこも可愛いんだけど。
「なら、夏鈴の欲しいもの何でも言って?」
『ほ、本当に何でもいい...?//』
「もちろん。何でもいいよ?」
今年も、もちろん買ってるんだけど...。
『わ、私たちさ...付き合ってもう6年近くになるじゃん...//』
『だ、だからこそって言うか......//』
「だからこそ...?」
『そろそろ、良いんじゃないかなって...//』
「......あ、どこか遠くに旅行行きたい?」
『それじゃない...。それもしたいけど...』
『身に付けるものなんだけど......//』
「ネックレスとか、アクセサリー系?」
『違う...』
「あ、お揃いの服?」
「ペアルックしたい!みたいな...?」
『それも違う...。そういう身に付けるじゃない...』
『で、でも〇〇とお揃いにしたいものではあるかな......//』
体に纏うとかじゃない、お揃いで身に付けるもの。
"付き合って長いからこそ" のものなのか...。
もしかして、お金で買えない物なのか?
「それって、お金で買える物?」
『お、お金では買えない...//』
『でも、〇〇は今も、常に身に付けてる...//』
「お金で買えなくて、今も身に付けてる...か」
『......//』
............あ。
"夏鈴の欲しいもの" がやっと分かった。
お金では買う事の出来ない、俺が常に身に付けているもの。
付き合って6年も経ったからこそ、お揃いにしたい。
俺の思っている "夏鈴の欲しいもの" が当たっているなら......
俺の買ったプレゼントも最適だな。
「...夏鈴」
『なに...?』
「"夏鈴の欲しいもの" やっと分かったよ。」
『......遅いよ、バカ...//』
お互いの薬指には、美しく輝く指環。
これからは、夏鈴の人生も背負って生きていかないとな。
𝑭𝒊𝒏.