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母の日の思い出
今日は、母の日ですね。
みなさんのお母さんは、お元気ですか?
私の母のサクラは、いまから二十年ほど前に亡くなりました。最後の十年間はずっとパーキンソン病に苦しんでいました。
私が母の日で思い出すのは、私がまだ小学三年生の頃、自分のお小遣いを貯めて、近所の和菓子屋さんで、どら焼きを2つ買った時のことです。母は、とても喜んでくれました。
母がカーネーション柄のカップに紅茶を入れて、二人でどら焼きを食べようとした時、ピンポンとチャイムが鳴りました。
「こんな日曜日に誰かしら?」と、母が玄関に出ると、訪ねて来たのはなんと、母のパート仲間の人でした。
その人は、最近、入ったばかりの人らしく、母も特にその人と親しかったわけではありませんが彼女は思い詰めた表情で、「突然訪ねて、ゴメンなさい。どうしても、サクラさんに相談したいことがありまして」と言いました。
その人は私と同じくらいの歳の男の子を連れていましたが、母は話を聞きながら私と食べるはずだった、どら焼きを親子に勧めました。
「もう、お母さんっ!」と私は怒りました。
「あら、ゴメンなさい。すっかり長居をしてしまって」と、女の人は立ち上がりました。
「サクラさんに相談出来て良かったです。明日から、また頑張れそうです」と、その人の顔は霧が晴れたように明るくなっていました。
「これ、よかったら持って帰って」と、母は親子が手を付けなかった、どら焼きを2つ、お土産に持たせました。
(もう、お母さんなんて、知らないっ!)
と、私は、すっかり膨れっ面です。
母は、「ゴメンね、せっかくカリンちゃんが、お小遣いを貯めて買ってくれたのに」と言い、私に紅茶を淹れてくれました。
あの時の、お母さんの気持ち、今ならわかるよ。そして、あの時のお母さんはカッコよかったと思うよ。いつだって、困っている人を見たら、放っておけない人だった。
二十年前に母が亡くなって、実家に帰った時、あの時のカーネーション柄のティーカップが、まだ綺麗なままで、食器棚に置いてあったことに驚いた。
懐かしくて持って帰りたかったのに、なぜか出来なかった。でも、私は嬉しい時、悲しい時、いつでも、思い出のカーネーションのカップで母と紅茶を飲むことが出来る。
もう、会えなくても、母はいつも優しく私の話を聞いてくれるから。
お母さん、今日も、ありがとう😊
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