11月2日 ザクロのある家
近所にザクロの木がある家がある。道路まで枝が飛び出ていて、何か実がなっている。初めに気が付いたときは暗くてよくわからなかったけど、明るい時間に通ってよく見てみると、どうやらザクロっぽい。一般家庭にザクロが生えているものなのか知らないし、日本で簡単に育つのか知らないけど、「あ、ザクロだ」と思った。
実際に生のザクロを私はたぶん、食べたことはない。そもそもザクロ味の何かを食べた記憶もないので、ザクロの味を想像できない。見た目がどこか異国の果物じみていて、あまりに身近にないせいで、なんとなく「架空の食べ物」という気さえしている。
ザクロ味のジュースとか、売っているのは見かけるけど、それでも私とザクロの道は交わらない。
なんとなくだけど、このまま私は一生ザクロの味を知らないままかもしれない。でも、それでいいのかもしれないという気もする。知らない場所の、知らない果物。もしかしたら、存在しないかもしれない果物。
思えば幼い頃に家にあった母親の漫画を読んでいて、そこに出てきたのがザクロだった。もう内容はぼんやりとしか覚えていないけれど、神様がたくさん出てくるお話だった。そこに出てきたのがザクロだったものだから、私にとってザクロはどこか神聖で、遠い場所の果物(その話は日本が舞台ではなかった)というイメージがついてしまったのだと思う。
帰り道、そんなザクロが、私の目の前に落ちている。
真っ赤な実が、潰れて落ちている。
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