感傷

80年以上も前の洋画を
小さなホールで鑑賞

両隣も前後も気兼ねなく
スクリーンに見入る

暖炉も使えない 荒んだ部屋に通され
窓を打つ激しい風音に困惑するお客を見るに
温かい室内に居りながら 共に身を縮め

階級差を見せつけられるシーンでは
我が事のように唇をかみ

場面が進むと ヒロインのつややかな髪や
見事なドレスに見とれる

やがて立場は逆転 
重苦しい空気に包まれ
脇役のうら若き女性の心の動きが
痛いほど伝わり 涙がにじむ

長い回想が終わり 結末を迎え
かつて隣国からの留学生に勧められ 
翻訳本を読んだことを思い出す 

お世話さまでした
懐かしかったわぁ
また観られるなんて
と 声が重なる

前回はいつご覧になられたのだろうかと
想像をふくらませながら
やるせない思いを断ち
足早に現実に戻る

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