![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/147571083/rectangle_large_type_2_40188c76b3e0f2f8f1efb4c916f20576.jpeg?width=1200)
【アタッチメント理論】大人のアタッチメント:人間関係の核心にあるもの
はじめに
アタッチメント(愛着)は、幼少期だけでなく、大人になってからも重要な役割を果たします。アタッチメントとは、特定の人物との間に形成される深い情緒的な結びつきであり、これは人間関係全般に影響を及ぼします。大人になっても、特定の人との関係を通じて自分の感情を調節しようとするシステムは変わりません。
ここでは、大人のアタッチメントが持つ意味とその影響について探っていきます。
1.アタッチメントの「基地」となる存在
大人になっても、特定の人が自分にとっての「基地」となります。この「基地」とは、感情的な安定を提供してくれる存在です。例えば、仕事で大きなミスをして落ち込んでいるときに、そばにいてくれる友人やパートナーが「大丈夫だよ、次はうまくいくよ」と励ましてくれると、その言葉が心の支えになります。
また、家族との衝突で悩んでいるときに、親しい友人が「話を聞かせて」と言ってくれたり、恋人が温かい抱擁で慰めてくれたりすると、「この人だけは自分を見捨てない」と感じることで、感情を立て直すことが容易になります。大人でも、こうした特定の人との関係が自分の感情を調節する役割を果たすのです。
2.内的作業モデル(IWM)の形成
アタッチメントの対象となる特定の人との間で繰り返されてきたやりとりは、他者と自己に関するイメージや確信、そして「愛」についての素朴な思い込みを形作ります。例えば、幼い頃から親が「あなたはとても大切な存在だ」と言い続けてくれた場合、その子は自分が価値のある存在だと信じるようになります。
これらのイメージや思い込みは、内的作業モデル(IWM)とも呼ばれ、対人関係全般におけるテンプレート(ひな形)となります。大人になっても、このテンプレートが働き、例えば上司の厳しい言葉を「自分を成長させるためのフィードバック」と捉えたり、恋人の優しさを「自分が愛されている証」と感じたりします。
このように、内的作業モデルは、相手の表情や言葉の捉え方、相手とのかかわり方に影響を与え、「その人らしさ」の一部として定着します。
3.大人のアタッチメントと人間関係の影響
アタッチメントは大人になっても、人間関係全般に影響を及ぼします。幼少期に形成されたアタッチメントが根幹にありますが、その対象や行動の現れ方は成長とともに変わります。例えば、幼少期に親から十分な愛情を受けて育った人は、大人になっても友人やパートナーとの関係でその愛情を感じやすくなります。
大人になると、親以外にも、仕事仲間や恋人といった自分で選び取る関係が増えていきます。しかし、内的作業モデルのテンプレートは、なじみ深く予測可能な関係に心地よさを感じやすく、新しい関係においても似たパターンが繰り返されがちです。
例えば、幼少期に内向的な性格の人と仲良くなった経験が多い人は、大人になっても内向的な性格の人と関係を築きやすくなります。一方で、過去に友人からの裏切りを経験した人は、新しい友人関係でも「この人もいずれ自分を裏切るかもしれない」と感じることがあります。
このように、過去のアタッチメントの影響は、新しい人間関係にも反映されるのです。
4.テンプレートのモデルチェンジ
対人関係は相手があって成り立つものです。特定の人との関係が深まることで、内的作業モデルのモデルチェンジが起こることもあります。例えば、過去に友人に裏切られた経験がある人が、新たに信頼できる友人と深い関係を築くことで、その友人を通じて「人を信じることができる」という新しいパターンを学ぶことができます。
このように、新たなパートナーや友人との深い関係を通じて、過去のパターンを打ち破り、新しい人間関係の築き方を学ぶことができるのです。
しかし、人は予測可能で心地よい関係を好むため、同じような安心感を求めるあまり、再び似たような友人関係や恋愛関係を築いてしまうことがあります。このように、テンプレートはなじみ深いパターンに戻りがちでもあります。
5.年齢とアタッチメントの変化
年齢を重ねるにつれて、「その人らしさ」はますます固定されやすくなります。例えば、長年にわたって自己主張が苦手だった人は、新しい職場でも同様のパターンを繰り返しがちです。内的作業モデルが確立され、新しい関係でも過去のパターンが繰り返されることで、自己や他者に対するイメージが揺るぎないものとなります。
しかし、自己理解や成長の一環として、新しい人間関係を築き、過去のテンプレートを見直すことも可能です。例えば、カウンセリングを通じて自己理解を深めたり、新しいコミュニティで積極的に自己主張する機会を持つことで、「自分はもっと意見を言える存在だ」といった新しいパターンを身につけることができます。
このように、過去のテンプレートを見直し、新たな人間関係を通じて成長することができるのです。
最後に
大人のアタッチメントは、人間関係の核心に位置し、私たちの対人関係の質や自己理解に深く関わっています。特定の人との深い関係を通じて、感情を調節し、自己や他者に対する理解を深めていくことが、より豊かな人間関係を築く鍵となるでしょう。