This is my work I have done(2)
東京美術『もっと知りたい‥‥』シリーズ
『もっと知りたい‥‥』シリーズは、「私の仕事」というわけではなく現役時代に社内での新刊発行に向けた編集委員会「企画素案会議」の一員として携わった仕事です。
『すぐわかる‥‥』シリーズに続いて「画家の生涯や変遷をたどりながら、各年代を特徴づける名作をじっくり鑑賞する」というコンセプトで『もっと知りたい‥‥』シリーズを刊行することになりました。第一回目の刊行は2005年8月、永田生慈先生監修の『もっと知りたい葛飾北斎』でした。それから19年近くでシリーズ・タイトルが105となったことは、たいへん喜ばしく、部員全員の長年にわたる努力が報われ、美術書業界に認知されることになりました。
1973年、東京美術に入社した頃の出版物は主に「東洋美術」や「仏教美術」に関する専門的な内容のものでした。先代の社長によれば「西洋美術」は美術出版社が長年やっているので、この分野に特化したとのことでした。
しかし、どれも内容的には優れていても営業的に黒字になることはありませんでした。このような状態から脱却するために「東洋・仏教美術から日本美術、そして西洋美術へ」、専門書から一般向けの入門書へと範囲を広げ、2000年頃から刊行を開始しました。
編集方針としては、内容はもちろんのこと営業的にもじっくり検討しました。有名画家のメモリアル・イヤーや美術史の大きな流れ、現在のアートのトレンドと芸術家のあり方について紹介する展覧会の情報などを積極的に取り入れました。執筆は採り上げる作家や分野の第一人者にお願いして「わかりやすい、からもう少し深掘りした入門書」を目指しました。編集者が少ないため、その作業は社外の編集プロダクションと責任を分かちあう形で進めました。
105タイトルのうち、発行部数のベスト10は以下の通りです。
1) 興福寺の仏たち(金子啓明)
2) 伊藤若冲(佐藤康宏)
3) 葛飾北斎(永田生慈)
4) 上村松園(加藤類子)
5) フェルメール(小林頼子)
6) 歌川国芳(悳 俊彦)
7) モネ(高橋明也監修/安井裕雄)
8) ミュシャ(千足伸行)
9) ゴッホ(圀府寺 司)
10) 東山魁夷(尾崎正明・監修/鶴見香織)
このシリーズが一定の知名度や評価を得ることができるようなると、書店内でのフェアもやり易くなり「美術書の東京美術」を大いにアピールすることができました。
以上のような経緯を経て、さらに新しいシリーズを立ち上げていきました。これからさらに発展することを祈るばかりです。
『かわいいシリーズ』
「かわいい」をキーワードに楽しく学べ美術がグッと近くなる入門書
『ToBi selection』
美術史に大きな足跡を遺した作家や作品の魅力を選りすぐった「ツウ」好みの画集シリーズ
『作品集シリーズ』
油彩画や版画、絵巻、ポスター、建築まで大画面で作品に迫るシリーズ