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首都直下地震発生時の車両について

こんにちは、リスクマネージャーの見上です。

今回は、首都直下地震が発生した時の車両の放置について書きます。

車両はキーを付けたまま放置して、運転者は徒歩で移動する

国土交通省関東地方整備局東京国道事務所のホームページで首都直下地震が発生した時に車に乗っていた時
「自動車で走行中に地震が発生したら、道路の左側にクルマを止めて、車のキーはつけたまま、ドアロックをせずに窓を閉めて、徒歩で避難しましょう。」
と記載されています。

これは、地震直後から人命救助の72時間の壁を意識し、発災後48時間以内に各方面最低1ルートは道路啓開を完了する目標を具体化するために、緊急車両が通過できるように道路の通行可能場所を確保するために、車両を置き去りにするように指示していると読めます。

国土交通省のガイドラインやBCPに出てくる放置車両


ところが、国土交通省の「首都直下地震対策計画」や、 国土交通省業務継続計画第4版 などの書類には、前述した「キーをつけたまま徒歩で避難」の記述は出てきません。
もしかしたら直近の計画には車両放置はさせない方針に変わった可能性があります。

このため国土交通省関東地方整備局東京国道事務所のホームページは古い情報である可能性があります。ただし、過去に自動車教習所などで「大地震発生時はキーをつけたまま、徒歩で避難」と教わった人が相当数いますから、昔教わった内容を守ろうとする人も出てくるものと想定されます。

置き去りにした車両が盗難・事故

この「車両置き去り」は東京で免許取得した人は講習でも学びますが、ここで一つの疑問があります。
置き去り車両を盗まれ起きた事故は誰の責任になるか
置き去り車両で人身事故が起こされた時、車両の所有者は罪に問われるのか

この点について警察に問い合わせてどのような返答が得られるでしょうか?
警視庁の公式な回答ではありませんが、私が都内の警察署へ聞いた時の回答は、
「キーを付けたまま、車両が盗まれる状態のまま車両から離れた場合、責任を問われる可能性が考えられる。」
というものでした。

損害賠償保険の非適用

自動車損害賠償保険の説明では「車両の持ち主が適切に車両を管理していない場合」賠償責任を負う可能性があるとされています。では「適切に車両管理していない状態」とはどういう事を言うのでしょうか?

  • エンジンをかけた状態

  • キーを付けっぱなしした状態

  • ドアをロックしていない状態

  • 第三者が容易に接触可能な場所に車を駐めていた場合

  • 長時間車両から放ている場合

  • 車両の所有者が故意に上記の状態を作り出した場合

  • 警察に盗難届が出されていない場合

参照先:三井ダイレクト損保 「盗難車による事故時、所有者の損害賠償責任と自動車保険の補償」

損害賠償保険条項の確認、警察署への確認

国土交通用の指示に従った場合、損害保険会社が定める「適切に車両管理していない状態」を所有者が作り上げることになることは明白です。
また私が調べた範囲で、損賠賠償保険約款の中に「行政機関の指示に従った場合」などの特約条項は存在していません。

そのため、国土交通省の指示に従っても、放置した車両の所有者(企業や個人)が賠償責任を問われる可能性があることを十分に理解しておく必要があります。
また、警視庁(車両放置を指示しているのは首都直下地震の都内に関する指示であるため)に刑法上の責任について事前に確認することをお勧めします。

首都直下地震発生時の車両関連損害額の算定

多くの社員が車両を使って業務する企業の場合、首都直下地震発生時の車両や積み荷、人材の損害を事前にシミュレートしておく必要があります。

○ある日ある時刻の状況を収集する
企業には閑散期、繁忙期がある場合、損害額の最大値を知るために繁忙期の「ある日」を選び以下を確認します。

  • 使用されている車両数と、新規に取得する場合のコスト

  • 車両に搭載されている積み荷の仕入れ額の総額

  • 納品が遅れることによる契約不履行や延滞コストの合計額

  • 車両を運転している従業員数

  • 車に搭載されている燃料の割合(残り走行距離算定)

○損害額算定

  • 車両放置した場合の積み荷盗難被害額

  • 車両損害額

  • 納品遅延や延滞損害額

企業は首都直下地震発生時の損害額を予め把握することにより、リスクファイナンスなどの機会を得ることができます。できることなら毎年1回程度はシミュレートしてみましょう。

残燃料、残電池状況の把握と自立的行動

  • 首都直下地震対策のために被害想定を選ぶでも書きましたが、政府のBCPでは首都直下時間発生後1週間程度の停電という被害想定があります。車両管理のケースでは、

  • ガソリンや軽油燃料の場合には残燃料でどこまで(場所や移動距離)積み荷と人を移動させることができるか検討してみましょう。

  • ハイブリッドやEVでは、今後1週間停電が継続し、充電できなくなります。測定した時点で残りの電池容量と燃料を加えて、どこまで積み荷と人を移動させることができるか検討してみましょう。

  • 燃料や電池が無くなった場合、車両を道路に放置せざるを得ない場合、車両は盗難の対象になります。そのような状況に陥った場合の行動について、事前いシミュレートし、最善の方法を検討しましょう。

放置車両の位置を確実に把握しておく

道幅が広い国道や、片側1車線も無い狭い道路など、どこに放置しようと車両は邪魔となり、緊急車両の通行を妨げる原因となります。
しかし動かないことにはどのようにしようもありません。

そこで、車両を放置せざるを得なくなった場合、その場所を記録し、車両の状況を画像などで残しておきましょう。
後々回収することができるかもしれません、または車両そのものが盗難にあったり、壊されたりした場合、車両から離れる時の場所と状況を記録しておくことは、その後何かの役にたつかもしれません。

きちんと想定する

企業や組織は、車両を放置せざるを得なくなった場合に備え、机上でも良いのでシミュレーションを実施し、損害額、その後の回収などについて想定をしておきましょう。

次も首都直下地震に関する「想定されていない」事柄について書きたいと思います。これからもよろしくお願いします。

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