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分娩施設はどうやって選ぶのか?


良い分娩施設とは?

いい分娩施設とはなにか?これは、医療者として医療を提供していただけのときと、自分が出産してみてから、大きく見方が変わったなと感じています。あくまで個人の見解で、私の考えが選び方の正解というわけではないことをご了承いただいたうえで、誰かの参考になればと思います。

医療者目線から

<分娩の安全性>

分娩に携わっていた医療者として、提供する側としては、とにかく安全な分娩、お母さんも、赤ちゃんも元気に帰ること、が目標でした。妊婦さんが当たり前だと思っている安全なお産を、当たり前に提供できる。
そんな分娩施設が素晴らしいと思っていました。

産婦人科医になってから、私は10箇所以上の病院で勤務をしています(個人クリニックなどでのアルバイトを含めるともっとかもしれません)が、今まで働いたどこの病院も、産婦人科医・助産師だけでなく、小児科医、麻酔科医、その他分娩に関わる多くのスタッフが安全な分娩のために奔走しています。さらに助産師が元気で主体的に分娩に携わっている病院は、活気があり、そのような病院でチームの1人として分娩に関わるのは非常に楽しかったです。
結果的にそういう病院は患者さんからの人気も高かったように思います。

実際に働いてみると、病院の規模や人員の差によって、提供できる医療には当然違いがあることもわかりました。
麻酔科医が常駐していない、小児科医がいない、新生児科がない、などの条件は、多くの厳しい症例を経験した私は、そういう病院で出産するのはリスクではないか、と思っていました。助産院ともなると、産婦人科医すらいない…大事な出産、赤ちゃん、本当にそれでいいのか? 非常に考えた時期もありました。

また人員が多けりゃいいって訳でもない。大きな施設では研修医や学生の指導も担っている施設が多いです。それがダメ、嫌、って場合には断ることもできます。遠慮なく伝えることは大切です。
その他毎回診察医が変わるから言ってることがちょいちょい違うとかでクレームを受けることも多かったです。そりゃ医者でも違う人間なんだもの…とも思うし、確かにそれは…てケースもあります。

  • 安全重視なら麻酔科医、小児科医が常駐していて、当直もしている病院

  • 大きな病院ほど人が多く、担当医もその都度違う

患者目線では?

<通院のしやすさ>

産む側になってから、1人目は特にあまり考えずに、当時勤務していた周産期センターで産むことにしていました。自分が勤務していたこともあり、中を知っている、ここで出産すればまず自分が死ぬことはないだろう、子供も最善の医療が受けられるだろう、そう強く信じれる、非常にいい病院だと思います。また勤務しながら合間で健診を受けてということもしていたので、通院の負担がなかったのです。

実際問題退院までは問題なく、医師助産師たちもみな知り合いでしたので、本当に和気あいあい、よくしていただき、ニコニコと笑顔で退院しました。

しかしその病院は実は自宅から1時間ほどかかる病院でした。
退院してから私はひどい乳腺炎になり、診てもらいたいけど、新生児をつれてそこまでいくのもしんどい。
そんな状態になってしまったのです。
近くの産院に診てくれないかと聞いても、自分のところで出産した人以外は診れない、という返事があったり、とにかく高熱と痛みで朦朧としながらも、診てもらえるところを探し、最終的には近所の総合病院の乳腺外科に入院、切開排膿の手術を受ける、ということになってしまったのです。

たしかに無事に帰ってはいるのですが、出産し無事に退院したらそれで終わりではないのだ、と気づいた私にとっては衝撃的な事件でした。
自宅からの通いやすさって重要なんだなと強く思いました。

  • 通院のしやすさはとっても大切

<入院中の過ごしやすさ>

産院は分娩前から産後約5日間とトータルで1週間ほどすごすことになります。そうすると、入院中の居心地の良さもやっぱり大事だったなと。
一人目出産した病院は個室がなく、6人の大部屋でした。それも全然気にならないと当時は思っていたのですが、2人目3人目は、自宅近くの総合病院で出産しているのですが、上の子の面会のこともあり、個室に入院していました。
居心地全然ちがうやん
赤ちゃんの泣き声や自分のトイレやシャワー、何かあったときのナースコール食事、電話、何もかも気にしないで赤ちゃんと過ごせた個室stayはやっぱりよかった…。
総合病院で個室を希望するとやはり差額ベッド代が発生するのですが
そもそも、ほとんどが個室、というような個人の産院もたくさんあります。
そして食事も豪華だったり、マッサージやオフ会、イベント、など様々なところで個人の産院は産婦に対するサービスが沢山あります。
医療の質(マンパワーなど) VS 入院中の快適さ
これには考え方が色々あって当たり前なところだと思いました。

  • 入院中の快適さもやっぱり大事

<分娩費用>

今は分娩費用はピンキリです。基本的に大学病院や公的病院の出産費用は低めに設定されていることが多いです。
あんなに先進の技術があってあんなに人がいるところでどうして分娩費用がこんなに安いのか…と何度も思ったことがあります。
個室に入ったということもありますが、2人目3人目の入院費用は1人目と30万近く違いました。(高かった)
それでも、近所であること、総合病院であり、小児科、麻酔科がいること、個室があること、などから、その他の選択肢は自分にはありませんでした。

  • 分娩費用は高いからいい、安いからだめというわけではない

<育児・授乳指導>

指導に関しては、施設間、助産師間で大きな差があります。同じ施設内でも人によって言ってること違ったりなども感じました。そして結果何が本当に正しいのかわからないという…。
印象として、指導に熱心なのは病院<クリニック<助産院、というなんとなくの傾向はありますが、そんなことない場合も多い。
ただ、これは確実に育児のスタートを切る大事ない所です。
どんな施設にいても、わからないことをわからないままにしない!聞く!とか、頼る!とかの始まりです。遠慮なくぐいぐい聞いていってほしいと思っています。

  • 育児指導は、人・施設間で大きな差アリ

まとめ

  • 安全重視なら麻酔科医、小児科医が常駐していて、当直もしている病院

  • 大きな病院ほど人が多く、担当医もその都度違う

  • 通院のしやすさはとっても大切

  • 入院中の快適さもやっぱり大事

  • 分娩費用はピンキリ、費用高いことと医療のレベルは必ずしも一致しない

  • 育児指導は、人・施設間で大きな差アリ

その他「NICUの有無」から「自宅分娩の希望」、「無痛分娩がしたい」、など、どんな出産がしたいか、によっても産院の選び方は変わってきます。そして、合併症や胎児の状態によっては、必ずしも希望する分娩施設での出産が叶わないこともあります。
このように産院選びは簡単に決められない場合もありますが、希望する産院によっては早くに分娩予約がいっぱいとなっている場合もあるので、早めの決めないといけないことの一つです。
妊娠前からぼんやりとでも、自分が通える範囲に、どんな産婦人科があるのかな、里帰りするなら、里帰り先にどんな産院があるのかな、など考えておくことで、妊娠してから焦る、ということもなく過ごせるのではないでしょうか?

みなさんがご自身の希望に合った産院で、素敵な分娩が迎えられることをお祈りしています♡

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