決算発表・大減配【9286】エネクス・インフラ投資法人【2024年11月期】:決算発表を受けての分配金予想&投資口価格試算の備忘録
エネクス・インフラ投資法人
2024年11月期(第10期)決算
減配
ジャパン・インフラファンドの減配があって予想されていたが、同様に減配となった。
2024年11月期分配金:2,995円
↓
2025年5月期予想分配金:2,000円
中長期運用方針
減配は、収益の悪化等ではなく、キャッシュマネジメント方針の変更であるとの説明。EPU(一口当たり利益、普通の株でいうところのEPSのことと思われる)の上昇を目指すこと、POにはNAV倍率1以上が必要と考えていること、NAV倍率<1であれば自己投資口取得を行うことが説明されている。
長期業績
FIT後も年間20億円程度の事業キャッシュフローを見込んでいるとのコメントあり(20億円というと、年間分配金4000円の場合の年間分配金総額程度)。また、直近の5年間の業績目標が示された(純利益は、減価償却費の扱いなどがややこしいので、あまり意味はない気がするが、数字を載せたことは評価に値するのではなかろうか)。
借入金の返済
前回決算の備忘録の通り、年間分配金5990円ではFIT期限までに借入金の返済ができない。年間分配金4000円に減配されたことで返済可能と思われる。決算説明資料でも、FIT期限までに返済するという事のように見える(言ってないけど、そのように見える)。
分配金予想
予想算出の前提条件
・直近の営業収益をベースとする
・発電所の新規取得を行わなかった場合とする
・FIT後の売電価格は厳しめの5円/kWhと仮置き(参考:最新の取引価格)
・経年劣化1年あたり0.5%とする
・借入金は2040年時点でLTV50%程度となるように返済しているものとする
前回決算の備忘録で年間分配金4400円程度であれば2039年まで維持可能と予想した。資産状況に変化はなく、4000円への減配となったため、2040年まで維持可能である。
残りの400円を15年間LTV50%で運用したとすれば、説明資料に記載のあった”FIT後も年間20億円程度の事業キャッシュフローを見込んでいる"というのも実現可能かもしれない。
分配金予想に基づく投資口価格の試算
複数シナリオで投資口価格を算出。
なお、2024年11月期決算時点での1口当たり純資産は77,917円とのこと。
参考とする10年国債金利:1.25%
今回は10年国債金利+イールドスプレッドで考えてみる。J-REITの過去データだと平時は2~5%、リーマンショック時に7%とかだったらしいので、そのあたりを参考に。
パターン① ワーストシナリオ(リーマンショック級)
・必要な利回り:8.25%(10年国債1.25%+イールドスプレッド7%)
・理論投資口価格
38539円(FIT後の売電価格:5円/kWh)
41594円(FIT後の売電価格:10円/kWh)
パターン② 厳しめシナリオ
・必要な利回り:6.25%(10年国債1.25%+イールドスプレッド5%)
・理論投資口価格
45154円(FIT後の売電価格:5円/kWh)
49375円(FIT後の売電価格:10円/kWh)
パターン③ 標準シナリオ
・必要な利回り:4.75%(10年国債1.25%+イールドスプレッド3.5%)
・理論投資口価格
51067円(FIT後の売電価格:5円/kWh)
56424円(FIT後の売電価格:10円/kWh)
パターン④ やや楽観シナリオ
・必要な利回り:3.25%(10年国債1.25%+イールドスプレッド2%)
・理論投資口価格
57959円(FIT後の売電価格:5円/kWh)
64730円(FIT後の売電価格:10円/kWh)
パターン⑤ ゼロ金利環境に戻るシナリオ
・必要な利回り:1%
・理論投資口価格
70518円(FIT後の売電価格:5円/kWh)
80077円(FIT後の売電価格:10円/kWh)
上場インフラファンド投資の注意点
上場インフラファンドは、見かけ上、超高配当(直近では8%や12%)に見えるが、FITの電力買取に期限があることを考慮すると、実質的にはそこまで高配当ではない。その点を考慮して試算を行った。
制度上、導管性や出力抑制といった不確実かつ分かりにくい点があることや、債券に近い性質から利上げは価格下落の圧力となることも理解が必要。
利益超過分配金については、減価償却費から支払われるため所謂タコ足配当ではないものの、資産が減る=規模の縮小になり、持続性の観点からは望ましくないとも考えられる。