見出し画像

(更新)【9286】エネクス・インフラ投資法人【2024年5月期】:分配金予想&投資口価格試算の備忘録


エネクス・インフラ投資法人

公式 (株価

6月初旬の約8万円から11月の権利落後は約4.5万円と、かなりの下げ幅となっている。
利上げの影響があるとは言え、ここまでの下落は妥当なものなのか、将来の分配金を予想しながら考えてみる。

エネクス・インフラ投資法人は、日本国内の再生可能エネルギー発電所に投資を行っている。現在、11箇所の太陽光発電所と1箇所の風力発電所を保有している。

保有する発電所は以下の通り:

2034年からFIT期間が終了する発電所が出始め、2040年までに全ての発電所がFIT期間終了となるポートフォリオとなっている。

直近の営業収益の確認

直近の営業収益

 8期(2023年6月1日~2023年11月30日):4,202,265千円(約42億円)
 9期(2023年12月1日~2024年5月31日):4,054,578千円(約40億円)

経費(減価償却費を除く)

 8期(2023年6月1日~2023年11月30日)
  公租公課:201,613千円
  保険料:72,348千円
  修繕費:63,854千円
  支払地代:114,579千円
  信託報酬:9,105千円
  その他費用:19,559千円
   合計:481,058千円(約4.8億円)
 9期(2023年12月1日~2024年5月31日)
  公租公課:246,106千円
  保険料:77,854千円
  修繕費:78,555千円
  支払地代:110,861千円
  信託報酬:12,499千円
  その他費用:25,634千円
   合計:551,509千円(約5.5億円)

分配金総額

 8期(2023年6月1日~2023年11月30日):1,243,367千円(約12.4億円)
 9期(2023年12月1日~2024年5月31日):1,669,232千円(約16.7億円)

直近の営業収益のまとめ

 直近1年間で、営業収益が約82億円、経費が約10億円、分配金として約30億円を支払っている状況となっている。

分配金予想

予想算出の前提条件
・直近の営業収益をベースとする
・発電所の新規取得を行わなかった場合とする
・FIT後の売電価格は厳しめの5円/kWhと仮置き(参考:最新の取引価格
・経年劣化1年あたり0.5%とする
・借入金は2040年時点でLTV50%程度となるように返済しているものとする

ここで、借入金の返済が少々問題になる。
現状の年間分配金5990円を維持した場合、2040年時点でLTV50%程度となるように返済することが出来ない。
2040年時点でLTV50%とするために、2パターンで検討する。

①すぐに減配する場合

年間分配金4400円程度が適切と計算される。

②徐々に減配する場合

FIT期間が終了する発電所が出始める2033年以降の収益の減少が予想される。また、借入金の返済を考慮すると、①4400円程度への減配もしくは②徐々に減配することが想定される。①であれば年間分配金4400円で2039年までの維持が可能と計算される。

分配金予想に基づく投資口価格の試算

複数シナリオで投資口価格を算出。
なお、9期(2023年12月1日~2024年5月31日)決算時点での1口当たり純資産は79570円とのこと。

パターン① 最悪シナリオ
・条件
 FIT後の売電価格:0円/kWh(FIT後の発電所が無価値化)
 必要な利回り:10%(超インフレ・高金利環境継続)
・理論投資口価格
 31316円

パターン② 厳しめシナリオ
・条件
 FIT後の売電価格:5円/kWh
 必要な利回り:8%(インフレ・高金利環境継続)
・理論投資口価格
 39363円

パターン③ 標準シナリオ
・条件
 FIT後の売電価格:7.5円/kWh
 必要な利回り:5%
・理論投資口価格
 52757円

パターン④ やや楽観シナリオ
・条件
 FIT後の売電価格:10円/kWh
 必要な利回り:3%
・理論投資口価格
 66552円

パターン⑤ ゼロ金利環境に戻るシナリオ
・条件
 FIT後の売電価格:10円/kWh
 必要な利回り:1%
・理論投資口価格
 80484円

上場インフラファンド投資の注意点

上場インフラファンドは、見かけ上、超高配当(直近では8%や12%)に見えるが、FITの電力買取に期限があることを考慮すると、実質的にはそこまで高配当ではない。その点を考慮して実質的な利回り(利回りから逆算される投資口価格)を試算する。
制度上、導管性や出力抑制といった分かりにくい点があることや、債券に近い性質から利上げは価格下落の圧力となることも理解が必要。
利益超過分配金については、減価償却費から支払われるため所謂タコ足配当ではないものの、資産が減る=規模の縮小になり、持続性の観点からは望ましくないかもしれない。
他の上場インフラファンドの予想一覧

いいなと思ったら応援しよう!