【上場インフラファンド5社】15年後(2040年)の純資産額を予想
2024年の上場インフラファンド市況
2024年の日本のインフラ投資法人市場は、大きな変動に見舞われた年であった。
日銀の利上げや、いくつかの投資法人が減配を発表したことに、制度上の不透明さが拍車をかけたのか、多くの投資法人の価格が急落した。カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人が2024年12月期の1口あたりの分配金予想額を従来の3,775円から3,066円に見直し、ジャパン・インフラファンド投資法人が12月9日に分配金予想額を5,850円から4,000円に大幅減少させた。制度の不透明さについては、今回は割愛するが、導管性や出力抑制といった問題がある。
各銘柄の状況
9282いちごグリーンインフラ投資法人
2024年初値: 71,000円、PBR 2.01、年間配当 4,065円、表面利回り 5.72%
2024年終値: 43,500円、PBR 1.23、年間配当 4,065円、表面利回り 9.34%
9284カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人
2024年初値: 112,000円、PBR 1.09、年間配当 7,500円、表面利回り 6.70%
2024年終値: 76,400円、PBR 0.75、年間配当 6,460円、表面利回り 8.46%
9285東京インフラ・エネルギー投資法人
2024年初値: 86,300円、PBR 1.03、年間配当 5,700円、表面利回り 6.60%
2024年終値: 47,150円、PBR 0.56、年間配当 5,700円、表面利回り 12.09%
9286エネクス・インフラ投資法人
2024年初値: 85,000円、PBR 1.07、年間配当 5,990円、表面利回り 7.05%
2024年終値: 48,900円、PBR 0.61、年間配当 5,990円、表面利回り 12.25%
9287ジャパン・インフラファンド投資法人
2024年初値: 85,000円、PBR 1.03、年間配当 5,850円、表面利回り 6.88%
2024年終値: 44,000円、PBR 0.54、年間配当 4,000円、表面利回り 9.09%
総じて、2024年は日本のインフラ投資法人市場にとって試練の年であった。価格の急落は、市場全体の信頼性を揺るがした。
上場インフラファンドの価格をどう考えるか
インフラファンドの収益は、FIT期間中はFITの固定買取額によりある程度(発電量=天候に左右される部分もあるが、下限賃料が決まっている)保証され、FIT終了後は市場価格での売電となるため、発電量と電力市況から、資産価値の算出が出来る。
すなわち、FIT期間中のある程度保証された利益(言わば債券的な価値)と、FIT後の電力市況で変動する将来的に予想される資産価値を合わせたものがインフラファンドの価値となる。
公式には、PBRがそれらを合わせたものにあたり、インフラファンド自身が考えている(実際には第三者機関の算出であるが)、インフラファンド自身の価値ということになる。当然、将来の電力市況予測や、前述の債券的な価値の部分が影響を受ける金利動向によって変動するはずである。2025年1月15日のエネクス・インフラ投資法人、2025年1月21日のジャパン・インフラファンド投資法人と決算発表が続くため、注目したい。
2040年の価値を試算してみる
前提条件
・発電所の新規取得を行わない場合
・経年劣化1年あたり0.5%
・予想発電量から収益を予想し、一口あたりの純資産額を試算
当然ながら、FIT期間が終わればリパワリングなり、コーポレートPPAなり、様々な策が講じられることを期待するが、現時点ではわからないため、何も行われないこと(ワースト)を前提条件として試算する。
9282いちごグリーンインフラ投資法人
FIT後の売電価格5.0円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産4576円
FIT後の売電価格7.5円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産6864円
FIT後の売電価格 10円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産9153円
2025年から2040年までの予想累計分配金:41046円
9284カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人
FIT後の売電価格5.0円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産13882円
FIT後の売電価格7.5円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産20822円
FIT後の売電価格 10円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産27763円
2025年から2040年までの予想累計分配金:96479円
9285東京インフラ・エネルギー投資法人
FIT後の売電価格5.0円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産11168円
FIT後の売電価格7.5円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産16752円
FIT後の売電価格 10円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産22336円
2025年から2040年までの予想累計分配金:63837円
9286エネクス・インフラ投資法人
FIT後の売電価格5.0円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産11350円
FIT後の売電価格7.5円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産17025円
FIT後の売電価格 10円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産22701円
2025年から2040年までの予想累計分配金:66912円
9287ジャパン・インフラファンド投資法人
FIT後の売電価格5.0円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産11792円
FIT後の売電価格7.5円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産17689円
FIT後の売電価格 10円/kWhの場合:2040年の一口あたりの純資産23585円
2025年から2040年までの予想累計分配金:61494円
まとめ
以上が、FIT後に残る価値と、FIT期間中に得られる利益(分配金)を試算した結果である。これらを合わせて、現時点の価値をいくらと考えるかが投資判断の一つのポイントになるかと思う。
例えば、エネクス・インフラ投資法人は、楽観的な予想となるが、FIT後の売電価格 10円/kWhとすると、2040年の一口あたりの純資産22701円+2025年から2040年までの予想累計分配金66912円=89613円となる。2024年終値: 48,900円なので、年利4.6%程度(支払われた分配金を再投資すれば、4.9%程度)となる。10年国債の利回り1.1%、15年国債1.6%、J-REITの平均利回り5%と比較して、上場インフラファンドのリスクをどう考えるか。FIT期間中の収益の安定性を考えると、J-REITよりは低リスクではないかと、個人的には思うところである。