
写真がない!事件
母が亡くなった時、遺影用の写真を決めるのに、父と母のアルバムを開いた。
すると、最近のモノがない。古いページも所々剥がされて(はがされて)いた。
父と二人で「なんだ!?」と首をかしげる。
だいたい、年齢を重ねた人の遺影は礼服姿から切り取る。
そして仕方なく、若かりし頃(20代)の写真を選んだ。
そして、葬儀の遺影として、飾る。
すると、直接今の母をしらないご近所の男性が遺影を見つめ
「お若いのに」と呟く。
思わず、立ち上がり「違います!」と叫びたい衝動に駆られてしまった。
葬儀がひと段落して、母愛用の本棚をみつめていると、本棚の上、天井の板がずれていた。
それを開けると、あるわあるわ。
最近の親戚の結婚式の集合写真や喪服姿の母の写真がごっそり。
やられたよね。
一応、生活に疲れていない、輝いていた若かりし、
みんなから美人と言われていたころの母の姿だけが
アルバムには残っていた。
これが、母の強いメッセージ。
「今の私は嫌い。」
そう言っているようにわたしには思えた。
香坂 秋