新世紀マーベラスnovel episode1(13)
エマたちが通された食堂は子どもたちでごった返していた。
楽園の大きさから考えれば少ないくらいだが、ざっと数えて五十人くらいはいるだろうか。みな一様に白い貫頭衣を身に纏い、弾けんばかりの笑顔を浮かべている。
案内役の言っていた通り、食堂で配膳されたトレイには街ではまずお目にかかれないような食べ物が並んでいた。
フカフカのパンと温かなスープ、分厚い肉と瑞々しい野菜、デザートには数種類の果実。
「どうしよう、涎が止まらない」
ルミナが呟く。その目は目の前の料理に釘付けだ。
「ルーミン、妹ちゃんはいますか?」
「ん、さっきから探してるけどいないの。まだ来てないのかも」
「かもですねぇ。ちょっとエマはマーベラスのみんなに報告してきますね」
「わかった。気をつけてね」
「はい!」
子どもたちの流れに逆らって食堂を後にする。ひと気のない場所を探して歩き回り部屋を見つけてそろりと忍び込んだ。
耳に掛けている通信機をごそごそと弄る。
「えーとスイッチは入れてあるからーここを押せばいいですかね?」
通信機からノイズが聞こえた。
「今日もハッピーハッピー、こちらエマなのです!」
『エマか。四人とも聞いているぞ。今度は忘れなかったな』
「えへーエマはやればできる子なのですよ」
『それで? どうなの?』
「あーメアっち! えっとですね。みんな楽しそうなのです。ニコニコ笑顔でした」
『……そう』
何か諦められたような気がする。エマは首を傾げた。
『とりあえず今のところは平和ということですね。エマさん、わたくしたちが侵入できそうなところはありましたか?』
「えーと、まだ自由に動く暇がなかったので見つけられてないのです。今日明日である程度見当をつけようかと思うのです」
『こちらも引き続き街で聞き取り調査を行います。エマ様、ルミナ様も一緒なので、あまり無理はしないようにお願いします』
「わっかりましたー!」
通信が終了する。
「メアっちはお疲れ気味なのですかねー?」
下手人の自覚なくエマは独り言ちた。
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