見出し画像

【生成小説】なんか

なんか、今日から「なんか」が見えるようになった。

そう、文字通り見えるんだ。私が「なんか」と言うたびに、淡い青白い光の玉が、フワッと口から漂い出てくる。最初は目の錯覚かと思った。でも、電車でも、会社でも、自分の部屋でも、確かに見える。私の「なんか」は、まるで綿菓子みたいにふわふわと空中を漂って、やがて消えていく。

「なんか、この企画書まだ改善の余地があるかなって…」

午後のミーティングで私が話し始めると、また一つ青白い光の玉が生まれた。同僚たちは気付いていないみたいだけど、私の目には光の玉が天井に向かってゆっくりと上昇していくのが見えている。

不思議なことに、その日から徐々に気づき始めた。私の「なんか」は、その時の感情によって色が変わるんだ。迷っているときは青白く、嬉しいときは黄色っぽく、悲しいときは紫がかっている。まるで私の心を映す万華鏡みたいだ。

「なんか、素敵な人に出会ったんだ」

友達に恋バナを話すとき、ピンク色の「なんか」が踊るように部屋を舞った。私は思わず笑みがこぼれた。

ある日、駅のホームで気づいたんだ。私だけじゃない。よく見ると、周りの人たちも様々な色の「なんか」を放出している。青白い光、緑色の光、赤みがかった光…。人々の「なんか」は、まるでオーロラみたいに街中を彩っていた。

そういえば、小さい頃から口癖を直そうとしていた。でも今は違う。この見える「なんか」は、私たちの言葉にできない気持ちの形なのかもしれない。完璧な言葉が見つからない時、心が揺れている時、そっと出てくる小さな光。

今日も私は、自分の「なんか」を大切に飛ばしている。この不思議な現象がいつまで続くのかは分からない。でも、なんか、それもいいかなって思う。だって、私の心から生まれる小さな光たちは、きっと誰かの心に届いているんじゃないかな。

そう思いながら見上げる夜空には、無数の「なんか」が星のように煌めいていた。

(終)

いいなと思ったら応援しよう!