《浮かれ女》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~六十七の歌~
《浮かれ女》原作:周防内侍
春の夜、夢のように
貴方の腕に抱かれている。
朧月に夜桜が蒼く染まる……。
いけない夜鳴鳥が貴方とうちの事を騒ぎ立てても
べつにかまわへん。
うちは浮かれ女。
(注)浮かれ女=うかれめ。歌や舞をして人を楽しませ、また売春もする女。遊女。娼妓(しょうぎ)。あそびめ。
<承前六十六の歌>
「さすれば、このように盃を式子様に奉る」
定家は朱塗りの大ぶりの盃を式子の口元に持ち寄せた。
式子はかぶりを振り、「定家様のお口からいただきとうございまする」
と訴える。
すると定家は酒を口に含み先ほどと同じように式子に口づけし、それを流し入れた。二人の舌が絡み、深く求めあった。
「もっと酒を、定家様」
ようやく唇を離した式子が喘ぐように言う。
「春の夜の 夢ばかりなる 手枕にかひなく立たむ 名こそ惜しけれ」
酔って定家様の手枕で式子は眠ります」
「つまらぬ噂話も気になされますな」
定家は今度は口一杯に酒を含んで式子に与えた。
<後続六十八の歌>
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