《Sorrow‐さびしさは》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~四十七の歌~
《Sorrow‐さびしさは》原作:恵慶法師
八重ちゃんと行った武田尾のお宿
草ぼうぼうの田舎の湯
つい今しがたまで愛し合うた名残の月
行き交いの頃、二人溶けるほど一緒やったのに
どないしてあんなにさびしかったんやろ?
(注)武田尾=JR福知山線沿いの温泉地。宝塚の近郊。行き交いの頃=夏から秋に移る頃合い。
定家「八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり。別れてしまった貴女とはもう逢うこともない。その寂しさのただ中、季節だけは約束を交わした恋人のように戻り来て、必ず姿を見せてくれる。孤影が揺れてる」
蓮生「人は移り気、季節は行き交う」
定家「さびしさは重なりおうて、そこはかとない哀色を帯びるんやろね」
蓮生「さることあり……」