嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~十五の歌~
《つついづつ》 原作:光孝天皇
雪ちゃん、おぼえとぅ?
あれ、いつやったかな、子供んとき二人で七草粥の若菜摘んだな。
お下げの髪が春の陽ぃに揺れてきれいやったなぁ。
笑うけど、あの時から好きやったんやで。
もし、良かったら、また手ェつないでもエエか?
幸せにするさかい・・・。
(注) つついづつ=筒井筒。幼ともだち。幼なじみ。<伊勢物語より>
定家 「立春も過ぎたし、季節も目覚め始めた頃。若い人の心もときめく頃やね。この歌はそうした気持ちをよく表してるな。君がため 春の野に出でて 若菜つむ 我が衣手に 雪は降りつつ」
蓮生 「せや。眩しゅうて、明るい空。そこに風花が舞ってやな。野に青葉。真っ白い指先を手に取れば、青い春や」
定家 「ま、一杯やろ。美しい時はあんたにもあった」
蓮生 「せやな、定家はんにもな。ははは」