家族旅行
お父さんの余命が分かったのは私が大学3年生の頃だった、と思う。
余命2,3年って言われたけどいまいちピンとこなかった。通院はしてたし癌なのも分かってたけど、まだお父さん働いてるし元気だよなあ〜、ぐらいにしか思えなかった。ただ、お父さんは私の結婚式には出られないんだなって、その事実が悲しかったのは何となく覚えている。
大学4年生の秋、家族旅行を計画した。みんなで青森に行こうとした。でも台風が来そうで危ないからってやめちゃったね。結局台風は来なかったけど。
なんであの時、家族旅行を諦めてしまったんだろう。『まあ、今回無理して行かなくても次があるよね』ってみんなで言ってたけど、次は無かったね。
お父さんの病状が急激に悪くなったのは、私が大学院1年生になる少し前。どんどん弱っていくお父さんを見るのは辛かったよ。今まで自分のことを守ってくれていた人が弱っていく姿を見るのは、とにかく不安だったんだろうなあ。
急いでもう1度家族旅行を計画したけど、間に合わなかったね。
どうして余命2年を信じられなかったのだろう。
どうして次があるなんて思ってしまったんだろう。
どうしてあの時、旅行に行かなかったのだろう。
私の心残りは、お父さんとの時間を大切にできなかったことです。
あの経験のおかげで、今を大切にできるようになりました!とか言いたいところだけど、まだまだ同じような後悔をすることもあります。お父さんごめんね。
来世でもお父さんの子どもになれますように。
来世ではみんなで青森旅行ができますように。