鬱病、変な同期に嫌気がさす
共通の先輩の祝い事があり、大学院時代の同期と夕飯でも奢って祝おうという話になる。私はご飯代を奢ればそれでいいかと思っていたが、同期が「プレゼントも買おう!」と言い出した。別に買いたいなら買えば?くらいの気持ちで「いいよ」と返した。
その後、言い出した彼が「プレゼント選んでくれる?そしたら俺がAmazonで買っておくから!」とLINEを送ってきた。
なんやそれ。
彼は所謂イケメンで、所謂商社で、所謂金持ちのボンボンで、大学時代は着る服をお母様に買って貰うマザコンである。いろいろツッコミどころはあるが今回のやり取りを踏まえて、改めて「お前のこと、好きな奴おるん?」と思った。
彼はいつも飲み会に遅刻してきては、激務アピールをして、人見知りなりに必死に場を暖めた我々からの労いの言葉を欲する。自分が大好きで世界は自分のために回っていると信じている愚かな王子様である。東大卒なので勿論頭は良いが自分の間違いは認められない馬鹿者なので、周りに間違いを訂正されたら、自分の意見を押し通すためにムキになり言い返してくる。周りが大人だから、アラサーの彼の間違いを訂正しなくなるし、彼がかけて欲しい言葉を飲み会序盤でさっさとかけて、満足感を満たして黙らせるというのが定石だ。
プレゼントの件でも改めて彼が成長していないことを確信した。彼は見てくれが全てなので、物理的なプレゼントを渡す自分に酔いたいから、プレゼントなどと言い出したんだろう。しかし、自分が言い出したことに責任を持てない彼。一番鬱陶しいプレゼント選出を他者に押し付け、自分はAmazonでワンクリックするだけの役割を買って出る。そのくせ、彼の家にプレゼントは届くから、先輩にはさぞ"自分が企画して選びました"みたいな顔をして、鼻の穴を膨らませながらプレゼントを渡すのだろう。そこまでが瞬時に想像できてLINEをブロックしたくなったが、大人なので堪えた。堪えた分、こちらで言語化してストレスを分解している。
哀れな奴だな。
親友とかいないんじゃなかろうか。
彼の顔面や収入に騙されて結婚する女性が本当に可哀想でならない。彼は現在進行形で彼女と同棲していて、サプライズで年内にはプロポーズしたいと息巻いていた。結婚相手の仕事を辞めさせて自分の駐在に連れていく予定だし、その計画を伝えずに結婚すると話していた。ゾッとした。あいつは自分とママしか愛してないゴミ屑である。私だったらあいつと同じ家で暮らすなんて2秒が限界である。隕石が衝突する地球最後の日も、実家でママと二人きりファッションショーでもしてな!と思いながら、プロポーズの計画を練る彼と目線を合わせないようにやり過ごしていた。
当日もちゃんと遅刻をしてきては空けてあげた良い席に座り、ペラっペラの人生故に生演奏の良さを理解できないのか両親に買ってもらったApple Watchで何度も演奏の残り時間を気にして、挙げ句の果てには堂々とスマホを開いてLINEを送っていた。スマホをいじらない時間はうつらうつらしていた。私が選んだ店とプレゼントに対しても「ナイスチョイス!」と感謝の言葉は無しで、自分は何にもしてないのに上から目線で宣う。こいつは本当に人を不快にさせるのがとてつもなく上手い。大学院の同期でなければ、絶対に関わらないタイプの人間である。ここまで来ると、期待を裏切らない彼に感心する。
早めに現地について一番忙しい下座に着席したり、結局私がプレゼントを選んで買ったり、皿を分けたり、他人を誉めたり、後輩に対して傾斜をかけて奢ったり、周りのグラスの減り具合を見ながらメニューを渡したり、もう使わないサラダ用の深皿を回収したり、酒に弱い先輩には「ここのソフトドリンク美味しそうですね」と頼みやすい空気を作ったり、酔ってる人間がいるのでチェイサーを頼んだり、全員が当然と言わんばかりに無視している店員さんの仕事に毎回感謝をしたり、全ての作業を厭らしくなく相手に話題を振って気を逸らしながら然り気無く実行したりして、久しぶりに飲み会の席でどっと疲れた。帰宅して湯船に浸かり、ドライヤーで髪を乾かしていたら、ふと懐かしい匂いがした。休職後に初めてつけた仕事用の香水であった。私も私で、彼に対して見栄を張ろうとしていたことがBVLGARIの残り香から解らさせられて、思わず顔を歪めて苦笑した。無意識に張り合おうとしている時点で同レベルではないか。
私も彼と同じくらいくだらない生物なのだ。
明日は自分に優しくできますように。