〜解けた靴紐〜・【三題噺】「夏至」「スニーカー」「高校生」
夏至、それは昼の時間が1年の中で最も長い日のこと、これはそんな夏至の日のことだった。お気に入りのスニーカーを履いて、出かけたときだった。普段は、高校に行く以外通ることの無い道を通り、気分転換をしに、歩いていた。すると、目の前で、小学生くらい女の子が、転びかけていた。
「危ない!」
そう言いながら走り、どうにか間に合いその女の子が、転ぶことは無かった。足元を見ると、靴紐が解けているではないか。
「お兄ちゃんありがと」
そう、純粋な笑顔で言われたのだがひとつの疑問があった。
「お嬢ちゃんお母さん達は何処?こんな靴で一人で歩いてたら危ないよ?」
すると、その女の子の顔が暗くなった。
「お母さんもお父さんも忙しいって、遊んでくれないの」
所謂ネグレクトと言うやつだろうか。そんな親がいるとは思ってもいなかった。
「じゃあお兄ちゃんと一緒に遊ぼっか」
俺は、女の子の親に対する怒りを抑えながら、女の子靴紐を結びその子にそんなことを言った。
「うん!」
笑顔で女の子は俺に返してきた。相手は小学生だ日が暮れる前に家に帰さなければ、そう思いつつも女の子の笑顔にノックアウトされかけていた。俺とその女の子が会う回数はだんだんと増えて行った。
「何見てるの?」
そう思い出を振り返っていると、妻からそんなことを言われた。
「いやお前と会った時の写真見つけて懐かしくなってな」
「毎回この時期その話するよね…やめてよ恥ずかしい…」
「いいだろ別にそれで今があるんだから」
そうあの時の小学生は今の俺の妻である。1度は疎遠になったものの妻が高校生になった頃、再会しすぐに告白された。最初は10数個年齢が離れている俺で大丈夫なのかと、不安に駆られたが、妻のアタックを断りきれず、そのまま恋人、夫婦となった。
「会えたのが夏至で良かったかもな」
「え?なんで?」
「夏至ってのは、昼の時間が1年の中で最も長い日だろ?昼の時間が長いってことはそれだけ明るいってことだろ?あの日会ったことでお前の未来が明るくなったんじゃないかなって思ってさ。」
そんなよく分からない事をいい、俺と妻は夏至を過ごすのだった