私とあなたと冬空と
寒く雪も降り始めるだろうと思ったある日、人間が倒れていた。他の人間はその人間を無視して歩いていたが私にはその人間を無視することは出来なかった。私は力の限り人間を引っ張った。だが小さい私が精一杯体で引っ張った所で動くはずもなかった。いつもはみんなで行動していたのに、今日に限ってなぜ離れてしまったのだろう。考えるのをやめ全力で私はみんなを探しに行った。程なくしてみんな見つかったが戻ってくると人間は冷たくなっていた。
「人間なんでこんなもんさ」
とみんなをまとめるリーダーのような存在が言った。
「それでも…もう少し私に力があれば…」
「人間なんて俺らを食い物にするんだ死んだって仕方ねぇよ」
と1番素行が悪いやつが言った
キッと私が睨みつけると
「おおっ怖ぇ睨みつけんなよ」
「やめないか俺たちの中で争っても意味が無いだろう」
リーダーがそうとめた。素行が悪いやつは
「ちっ…うるせぇよ」
と悪態を着いていた。
「せめて、せめてここじゃないどこかに置いてあげませんか?ここだとこの人間が可愛そうで」
「あぁ…俺もそうしようと思っていた」
「ありがとうございます!」
そんな感じで人間を移動させた。
そんなことがあった次の年の冬、一人、いや1匹に話しかけられた。
「あの時私の事助けようとしていた方ですよね」
「まさかあの時の人間!?ど、どうして私と同種に!」
「私がもといた人間の世界で輪廻転生という言葉があります。車輪が回るように生まれ変わるという言葉です私はあの日、助けようとしてくれたあなたに感謝を伝えたくて動物に転生させてもらいました」
「ごめんなさい…あの時、助けられなくて、まだあなたも生きていたかったでしょうに」
「そんな、謝らないでください。私は感謝しているんです、あの時、人間は誰も助けてくれず一人で死ぬ苦しみを味わうのだろうと思っていたのにあなたが必死に私を助けてくれようとしていたんですから」
「ありがとう、ありがとう」
と私は元人間に感謝を述べた。
「これからはたぬきの先輩としてよろしくお願いしますね」
「うん!」
と私は涙混じりにそう答えた。
あとがき
最初から最後の方まで体の小さい群れで行動する人間では無い何かでたぬきということを隠しました。それでどんな動物かを考えてもらおうと思いました。お題に書いてあるので関係ないですけどね。最初は二人称で書こうと思っていたけれど難しくて結局いつも通りの書き方になりました。