HYBEオタクのMV感想-LE SSERAFIM 'UNFORGIVEN'
実は、ハイライトメドレーでちらっと聴いた時には、「あ、タイトル曲はヒップホップになったのか~…」と若干期待できずにいたのですが、実際に公開された'UNFORGIVEN'のMVを見て、何だか泣きそうになりました。見終わって初めに思ったことは、
「男性を賛美して励まさなくても、「ついてこい」と言える世界の'The Boys'だ」
です。'The Boys'は、もちろん少女時代の楽曲のことです。
少女時代は、'The Boys'の中で、「主人公はまさにあなた!/世界中の男たちよ、私はNO.1の知恵を授けるアテナ/楽しんでみなさい、挑戦のトキメキ、すでに全てを手にしている世界中の男たち、そのまま真っ直ぐ進みなさい」と歌うと同時に、「Girls bring the boys out/世界を引っ張る男たち、素敵な女たち、ここに集まれ」とも歌っています。当時、しっかり歌詞の意味を解釈して理解できる程の年齢ではありませんでしたが、パフォーマンスや歌詞を見れば、可愛くても美しくても、いつでも私の憧れだった少女時代が、これまで以上にカッコよく見えたことはよく覚えています。今になって振り返ると、'The Boys'の主要なメッセージは、「Girls bring the boys out」にあったということがよく分かると同時に、このメッセージのために、男性を励まし、讃える表現を加えて婉曲しなければならなかったことも分かります。(それでも、既に全てを持っている、というのは皮肉とも受け取れる気がしますが)少女時代は、その時代にできる最大の表現で、その存在で、私たちを勇気付けてくれました。しかし、2023年にはそんな婉曲は必要ないんだ!ということを、今回のLe Sserafimが示してくれたように感じます。
Le Sserafimは、女神になる必要もヒーローになる必要も、誰かにその全ての選択を許される必要もない、ということを強くアピールしています。
まず、西部劇というモチーフを使ったことに対して、私は、MVでは「(白人)男性の強さ、男らしさを誇示し、それに憧れさせる」ものである西部劇を、あえて女性であるLe Sserafimがそれを取り入れることで、荒く表現すれば、男基準の世界を踏み荒らす、マイルドに言えば、彼女たちにその基準は通用しない、ということを表している、と考えました。
続くカズハも、天使の羽を自ら折ってしまいます。彼女たちは、天使である必要はありません。ただありのままの彼女たちなんだ、と捉えることもできると思います。そして、カズハはまだボーカルもラップもダンスも経験が浅くはありますが、スキル云々よりも、センスがあるタイプじゃないか、という推測が確信に変わってきました。結局は、こういったセンスのある人のパフォーマンスは、有無を言わさず魅力的です。
続いて、歌詞も含めて見ていきたいと思います。
この一言の強烈さ、簡単には言い表せませんが、とにかく、許された範囲の中で表現を行い、無害で善良であれ、それでいてクリエイティブで主体的な存在だと感じさせてほしい、という無茶な要求に応えてきたKPOPアイドルから出る言葉としては、ファンや世間へのカウンターでは?と思ってしまいました。もちろん、そこまでの意図はないかもしれませんが…
これは、UNFORGIVENな存在であるとは、の答えを教えてくれる歌詞ですね。どんな風に「タブーを狙う」存在になるのか、今後示してくれるのだろうと楽しみになりました。
例え、彼女たちが直接作詞したのではないとしても、女性アイドルの口からこのフレーズが出てきて違和感のない時代なんだ、ということに多少の希望を感じます。
一番感動したのはこのパートです。私もUNFORGIVENな存在になって彼女たちに着いて行きたいです。コンセプトフォトに、「連帯」をテーマにしたものがありましたが、ここで手を繋ぐ振付にも、「連帯」への意識を感じます。あと、'FEARLESS'のオマージュというか、再登場させた振付でもありますよね?何か、過去の振付も入れているという話を聞きました。もちろん、'UNFORGIVEN'な存在なら、boysでも(本来、そのどちらでなくても)彼女たちと一緒に行くことができます。
Le Sserafimと連帯し、UNFORGIVENであることを願う人たちは、きっとloudでないと声が届かない、と日々思っていることでしょう。デカい声をあげることにとやかく言われることも多くもどかしいですが、この歌詞くらい堂々としていたいものですね。
曲としても、キャッチーさを残したままヒップホップに挑戦していて、カズハのラップが短期間でとてもレベルアップしたこと、ユンジンはラップまでできるスーパーオールラウンダーであることが分かった、大満足な作品でした!
最後に一つだけ願いを言わせてもらうと、HYBEはLe Sserafimにこう歌わせるからには、本当に彼女たちがUNFORGIVENでもいいと思える環境を作る努力を見せてほしいです。言葉だけで終わらせないで。あまり期待もしてないけど…
あと、いずれLe Sserafimの衣装についても書いてみたいと思っています。彼女たちの挑戦や表現を、私も考える時間を設けて丁寧に受け取りたい、と思っています。