ウサギの斜頸発症から2年の経過観察
2022年3月に飼っているウサギが斜頸を発症しました。
目立った前ぶれはなく、ある日、仕事から帰るとウサギの首がグルンと床まで傾きフラフラになっていました。
「斜頸」の存在は知っていましたが、いざ発症したらどうすればいいのか、、具体的なイメージはなくとっても焦りました。
翌日急いで病院に駆け込み、その後3ヶ月ほどの介護生活を経て、2年経った2024年6月現在は少しの後遺症がありつつも元気に暮らしています。
発症した当初はどう看病すればいいのか、このまま衰弱して死んでしまうのではないかと、色々心配に駆られてネットや飼育書を調べまくっていました。
その時、実際に斜頸を経験した飼い主さんの体験談がとても頼もしかったので、自分の経験も誰かの役に立てばと思い書き残してみます。
ちなみに、
「斜頸それ自体で命を落とすことは(ほぼ)無い。気をつけなければいけないのは、斜頸症状からくる食欲低下と鬱滞だ」
という獣医師のアドバイスがありました。
斜頸症状を初めて目の当たりにすると驚いてしまうかもしれませんが、落ち着いて治療をすれば、仮に症状が残っても不自由のないウサ生をおくることも十分に可能のようです。
発症しないに越したことはないですが、仮に発症しても悲観的にならずドンと構えていけたらいいのかな〜と思ってます。(当時の私は動揺しまくりでしたが、、)
🐰ウサギ基本プロフィール
2022年の発症当時 5歳6ヶ月(オス・去勢済み)
ネザーランドドワーフ 体重810g
大きな病歴なし。性格は(ネザー男子の割に)おおらか。
環境変化や食事の変化に無頓着。(去勢手術の時、麻酔から覚めてすぐに牧草をもりもり食べて獣医さんを驚かせていた)
生活環境はアパートで人間ひとりとうさぎ1匹。
3畳ほどのスペースをサークルで囲い、その中で24時間自由行動。
サークル外への部屋んぽは朝晩2回、10〜30分ほど
1️⃣発症初期(初日〜3日目)
発症後は重度の斜頸と絶え間ない眼振が続きました。
特に3日目までは全ての症状が最も酷く、支えていないと常にローリング(横回転の転倒)してしまいそうで、小さなダンボールに隙間なくタオルを詰めて身体を固定。
眼振につられて頭が大きく上下に動くため、よく寝られず疲れている様子でした。
幸いに食欲はそこそこあり強制給餌の必要もなく、ペレットや牧草を自主的にボリボリ。水分だけは1日5〜6回に分けて人間が与えました。
私が観察してた感想ですが、ウサギ自身の意識も混濁しているように見えて、エサを食べてる最中に突然、意識を失うように寝るというようなことがしょっちゅうでした。
また一日の中で何回か症状がひどくなるタイミングがあって、自力ではローリングが止められなくなることもあり、その時は人間が手で体を支えて目を隠すように撫でると落ち着いてました。(だいたい数分で治まる)
最初の一週間は目に見える回復がなく、治るものなのかどうか分かりませんでした。
2️⃣回復初期(3日目〜90日目)
発症から10日ほど過ぎたあたりから、「今日はちょっと症状が落ち着いてるかも?」と感じることが増えました。
でも安堵した次の日にはまた悪化したり、本当に一進一退という感じ。それを繰り返すうちに、少しの変化で人間が一喜一憂してもしょうがない、ウサギの体力を信じて長い目で見守っていこう!という考えに落ち着きました。
動物病院での診断は、中耳炎ではなくおそらくエンセファリトゾーン症からくる前庭疾患だろうとのことで、駆虫薬を処方してもらって飲み始めました。
症状の変化は非常にゆっくりだったため自分の感覚と記憶だけでは心もとなく、食事や薬の、排泄の状態、斜頸や眼振その他の異常行動などをスマホで記録してはじめました。
実際の記録内容は例えばこんな感じ。
こんな感じで、眼振や斜頸の症状が本当に緩やかに解消していくにつれて、グルーミングなど今まで普通に出来ていた行動が徐々にできるようになっていきました。
動物病院で処方された駆虫薬も90日で終了し、あとは経過観察となりました。
3️⃣安定期(〜2年後現在)
1年が過ぎる頃には斜頸もほぼ目立たなくなりました。
ウサギ自身にとってはおそらく何の問題もなく日常生活を送れている、、ような気がします。
いくつか後遺症もありますが、見てわかるのは以下の3つくらいです。
下半身の運動機能の低下(垂直ジャンプができない、踏ん張れなくて転倒する、など)
切歯のねじれ(1年後から症状が出て、現在進行形で悪化中。月1回カット)
耳と首の僅かな傾き
それよりも後遺症に関連する一番重大な変化は、牧草をほぼ食べなくなったことです。非常に頭を悩ませています。
元々チモシー大好きで、オーツヘイは最高のオヤツだったのですが、、
発症から1年経った頃から牧草の食いつきが悪くなり、2年経った今はオーツヘイになど見向きもせず、どうしてもお腹が空いた時にチモシーの柔らかそうなところを渋々つまむ程度です。日に1〜2グラム食べるか食べないか。
牧草を食べて欲しいけど、少しペレットを減らしてお腹を空かせてもろくに食べてくれず、そのままだと体重が減ってしまうため今は「完全ペレット食」状態です。
ウンチの状態は決して悪くはないですが、とは言え黄金に輝くコロコロには程遠く。。。
動物病院で毎月、お口の中もチェックしてもらっていて、切歯も臼歯もお手入れしているので、おそらく歯の調子が原因ではない、はず。
もしかすると噛む筋肉のどこかに麻痺があって固いものが咀嚼しにくいのかな、、?など想像しますが、答えはわかりません。
もうすぐ8歳のウサギさんが今から牧草トレーニングして成果が出るのか怪しいですが、諦めず少しでも食べてもらえるように試行錯誤しています。
💊投薬と食事
発症翌日〜10日目までは炎症を抑える抗生物質、
それ以降はエンセファリトゾーン症の駆虫薬を90日目まで与えました。
消化促進と食欲増進のシロップもそれぞれ処方され、
最初の1ヶ月くらいは毎日、落ち着いてからは必要に応じて飲ませました。
駆虫薬は粉末でしたが、薄めたリンゴジュースと混ぜるとグビグビ飲んでくれたので、ウサギさんにとって投薬のストレスが少なかったのは幸い。
食事は、90日目くらいまでがペレット8割、牧草2割、野菜をアクセントに少々。
気を抜くとすぐ痩せてしまうので、とにかくペレット食べるだけ食べさせてました。
発症前のペレットは1日15〜18gでしたが、闘病中は30gくらい食べる時期も。(食欲増進剤の影響が大きそう)
それでも体重が減ってしまうこともあり、獣医さんから「回復にはエネルギーが必要だからもっと食べさせて」と言われました。
安定期以降は1日25gのペレットで体重820gをキープしています。
🏠療育環境
1日目〜3日目は小さなダンボールにタオルを敷きつめて、ローリングしにくいように敢えて狭い場所で過ごしました。
転ぶことも多く、水皿や牧草など固いものは何も置けませんでした。
餌と水は人間が口元に差し出せば、自分から食べてくれました。
あと、ウサギ介護で常識となっているマイクロファイバーマット。
これも使いはじめましたが、本当に快適で、もう手放せません。
2年経った今もトイレがわりに使っています。
(ダンボール時代の写真や動画を一つも残してませんでした。当時は動揺してて撮影する気持ちになれなかったのですが、今思うと記録しておけばよかったな〜)
4日目〜1ヶ月は80センチ四方のサークルに移動。
まだまだ斜頸や眼振がひどかったのですが、狭い段ボールがかえってストレスのようで、よろけながらも激しく動き回るようになってしまったため、仕方なく引越し。
狭いダンボール内で回転するよりも、ある程度広さのあるサークルの隅を回る方が快適そうでした。
1ヶ月〜3ヶ月はサークルを80×150の長方形に拡張。
少しダッシュするようになりました。
3ヶ月目以降からは、発症前と同じ3畳弱のサークルに。
ただケージやトイレは撤去して、日常生活における段差は全て無くしました。
一方で、元々は高いところが大好きなウサギなので、気が向いたら登れるようにと高さ15センチほどの木箱とスツールを置きました。
今のところ1日1回登るか登らないかです。運動機能に何かしら後遺症が残ってるようです。
平地をダッシュする時の勢いは病気前とあまり変わらないように見えるのですが、上にジャンプするのはどうも苦手みたいです。
また、同じく以前から好きだったジャバラトンネルも復活してみたのですが、トンネル内で滑って転倒することが何回かあったので撤去しました。
横の踏ん張りが上手くいかないのか、、?身体の調子がどんなふうに以前と違うのか、言葉で聞けないのがもどかしいです。
📕参考資料
ウサギさんのことを知るために調べた書籍やウェブサイトの一部を紹介します。
(よくある飼育書は書店でもネットでもすぐ見つかると思うので、それ以外を中心にピックアップしました)
【書籍】新版 よくわかるウサギの健康と病気
🔗Amazonのリンク
ウサギの病気やケガについて、原因・症状・治療の概要など分かりやすく解説されています。健康と病気にフォーカスした書籍だけあって、情報量も一般のウサギ飼いにとっては十分過ぎるほど豊富。普段から何気なく眺めておくと、いざ自分のウサギに怪しい症状が出た時に「そういえば本に書いてあったかも!?」と閃くことができる気がします。
【書籍】本気でうさぎを飼いたい人の うさぎの飼い方 育て方
🔗Amazonのリンク
ブログやYouTubeでウサギ飼育について熱心に情報発信してくれている獣医さんが書いた飼育書です。写真がほぼ載っておらず文字だけという読む人を選ぶスタイルですが、それもこれも「本気でうさぎを飼いたい人の」というタイトルに全て著者の熱い思いが込められてるように感じます。
内容は本当に実践的で役立つものばかりですし、電子版なら880円という良心的な価格なので、ぜひ1人でも多くのウサ飼いさんに手に取ってみて欲しいです。
【YouTube】うさぎちゃんねる
🔗https://youtube.com/@usagi_channel
上記の飼育書の著者である獣医師のYouTubeチャンネルです。
現在は更新されていませんが、うさぎ飼育に必要な情報を2年ほどかけて100本の動画として無料開放してくれています。(飼育書はこのチャンネルの集大成という形で発行されていました。)
飼育書に比べればまだ写真があったり音声で解説してくれるので、分かりやすいと思います。
が、それでも巷に溢れるうさぎ情報動画の中では非常に文章や情報量が多いかもしれません。
動画として楽しむというより純粋に有益な情報源として、無料で専門家の講義を受けられると思って見るのが良さそうな。
🎥ちなみに斜頸の解説回はこちら
うさぎをたくさん診療する現場の方々の色々な思いや葛藤が垣間見れるのも個人的なおすすめポイントです。
【ブログ】あなたがうさぎに出来ること
🔗https://www.usagi.cn
これまた上記の飼育書&YouTubeと同じ獣医さんのウサギ情報ポータルサイトです。
この獣医さんの活動として、ブログ(20年以上前から)→YouTube(2020年から100本)→飼育書 という順番なので、このブログが元祖と言えるかもしれないです。
臨床の現場で日々どんなことが起きているのか、そういったウサギ医療の現実がある中でいち飼い主として自分ができることは何か。色々と参考になります。
【ブログ】さかい動物病院 院長ブログ
🔗https://sakai-vh.com/diary/category/ウサギ/
名古屋市の動物病院さんのブログです。2014年から続いていて、ウサギ関連カテゴリだけでもめちゃくちゃ読み応えがあります。
飼育に役立つ実践的な知識はもちろんですが、やはり臨床の最前線で何十年(?)も頑張ってる方の意見は重みが違うのでとても参考になります。
【ブログ】オダガワ動物病院ブログ/エキゾチックアニマル情報室
https://www.odagawa.net/blog/cat-4017/cat26/2018/04/
https://exoroom.jp/usagi/2022/03/06/encephalitozoon/
上記2つのブログは、エンセファリトゾーンに関する記事の内容がとても良くて、何度も何度も読ませてもらいました。
🐰最後に
ここまで文章だらけだったので、最後に動画をいくつか繋ぎ合わせてYouTubeにアップしてみました。
スマホに残ってる動画記録を見直すと、本当に半年くらいは「三歩進んで二歩下がる」状態だったなぁと改めて感じます。
うちのウサギは幸いにも斜頸の再発はしていませんが、すこし体調悪そうなときは首の傾きが目立つことがあります。
発症前の体調と同じ状態に戻ることは難しそうですが、焦ったり過剰な心配をせず、悪化や再発が無いように食事と住環境に気をつけていこうと思います。
最近は長生きするウサギさんが増えて、SNSでも高齢ウサギさんの介護生活の様子を見ることがあります。とても可愛いです。
ウサギさん自身が生きる気持ちでいてくれる限り、麻痺だろうと寝たきりだろうと、私もトコトンお手伝いさせてもらうつもりなので、好きなだけ生きて欲しいなと思ってます。
おわり