20年くらい前
当時常連だったおばあちゃんがいて、しばらく来ていないなぁと思っていたら、ひょこっと来院した。
久しぶりに見たら随分頬がこけていた。
どうしたの?と聞くと、乳がんで入院中だという。多くを語らずメモを見せてくれた。
「乳がん第四期 ホルモン剤が効かないタイプ 抗がん剤の名前」他にも2つくらい何か専門的な言葉が書かれていた気がする。
驚いていろいろ聞いてみると、がんについてはもう諦めているが、抗がん剤の副作用で吐き気がひどく、それさえ楽になればいいとのこと。
私としては、入院中ということもあり、気が進まなかったので「あまり効かないかもしれないよ」と答えた。
実は以前に薬の副作用の患者さんの治療をやったことがあって、多少は効果があったものの、納得のいく効果ではなかったという事実がある。
それでもいいから先生に治療してもらいたいと言うので、自信はないがやってみることにした。
О-リングテストでは通常の胃の治療と同じような反応だったので通常の鍼治療をした。
それと同時に体力が極端に落ちている反応が出ていたので、活力核酸を1本あげて飲んでもらった。
治療後その場で吐き気が止まり、表情が劇的に変わった。
そこで、しばらくは毎日のように通ってきた。
自費治療なので治療費もかなりの金額になる。
なので「活力核酸は治療の一環として必要だから無料でプレゼントするよ」と伝えて、どんどん飲んでもらった。
癌センターに入院中だったので、同室の人たちはみんながん患者らしい。その人たちがみんな食事ができずに痩せていくのに、自分だけはモリモリ食べて元気いっぱいと言っていた。
自覚症状もほとんどないので退院することになり、間隔をあけながら治療を続けていた。
検査のたびにがんが小さくなり、ついには無くなってしまった。
5年後の検査でも問題がなく、はれて完全治癒ということになった。
その後はがん以前と同じようにたまに治療に来るというパターンだったが、だんだんとボケ様の雰囲気が出てきた。
そして、ある時からパタッと来なくなった。
長い付き合いの忘れられない患者さんのひとり。
こういう患者さんたちが、私の人生を支えてくれているのだと思う。
本当に私にとっては、この治療こそが天職なんだなぁと感じる。
秋の心地よさを感じながら、しみじみと幸せに浸っている