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仕事も家庭も順風満帆だった。
なのになぜか「こんなことをやっていていいのだろうか」という得体の知れない焦燥感のようなものを感じていた。
何なのかはよくわからないが、なにかこのままではいけないような感覚がいつも頭の片隅にあった。


ある時フッと
「こんなことをするために治療という仕事を目指したわけではない」
と気が付いてしまった。

保険中心の仕事では、私が患者さんに触れるのはどうしても短い時間になる。パパっと治療してどんどん人数をこなしていく。
それでも安い金額なので患者さんには喜ばれていた。

でもそれは私の目指した治療ではない。
「人の人生を変えてしまうような仕事。そんな仕事があるのなら何が何でもやってみたい」
そう思って親に頼み込んでこの道に入ってきた。

今やっているのは、その仕事ではない。

そういう仕事にするには保険治療ではできない。
しっかりと時間をかけて、自分でも納得のいくような治療をしたい。
しかし、保険治療をやめるとなると間違いなく収入は激減してしまう。
私には家族の生活を保障するという義務がある。
ここで収入が激減するというのは私の中ではありえない。

万が一生活ができないくらいに収入が減ってしまったらどうすればいいのだろう。迷いが頭をめぐる。

迷いに迷ったとき、ふと10年後の自分は今の自分をどう思うのだろうかと考えた。
仮に自分が目指した治療に切り替えたとして、最悪の場合食べていけなくなったとしたらどうなるだろうか?
たぶん今の時代に飢え死にすることはない。どこかで雇われながらやっているかもしれないが、私のことだからそれなりに一生懸命に働いて、食べてはいけているだろう。
その自分が目指した治療をする決断をした、今の自分を後悔するだろうか?

たぶん10年後の私は後悔していないだろう。やるだけやってダメだったのなら、私はたぶん後悔していない。
能力がなかった自分を残念には思っているかもしれないが、後悔しているよりはずっといい。

じゃあ、安定した収入がある今の状態を、そのまま続けていたら、10年後の自分はどう思うだろうか?
たぶん10年後にも、やっぱりやってみたかったなぁと思い続けているだろう。きっと決断できなかった自分を後悔し続けている。

ということは
目指した治療に切り替えたとしたら、うまくいけばラッキー。最悪うまくいかなかったとしても収入は下がるが、後悔はしていない。
切り替えなかったとしたら、収入は下がらないがずっと後悔をし続けている。

そう思ったら、やるという結論以外にはあり得ない。
収入が減るのなら、その分一生懸命働けばいい!

あれほど悩んでいたことが、突然吹っ切れてしまった。

今振り返ると、覚悟が決まるというのはこういうことなのだと感じる。
そんなことが私の人生には何度もある。
思いっきり悩んだ後に、突然スポーンと吹っ切れてしまう。いつもどういうわけか突然吹っ切れてしまう。
そして、覚悟が決まった瞬間から周りで起きてくることが、その流れに沿ってスムーズに流れだす。
単なる偶然としてはとても考えられない。
いつもそうなのだから。

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