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7月の読書

タイトルの写真は湘南の海、遠くに見えるのは伊豆大島。
こんな風景に触れると、なんとも優しい気持ちになれるのが嬉しい。
岩場の人は何を思うのかな!

遅ればせながら7月に読んだ本たち。

開高健の「最後の晩餐」は、ある冊子に、世界の食に通じるコラムニスト
中村貴教のエッセイがあり、
「凄まじい取材力と考察で人類の生き様をも考えさせてくれる一冊」として紹介されていて、興味を持った。

開高健は私より1世代前の1930年生まれのようだが、私の学生時代には
よく話題になっていた作家だ。だが遊ぶことにばかりに目が行っていた
学生時代に彼の本に触れることはなく過ぎてしまった。

読み始めて、まず思ったのは難しい文章ということだ。
冗談や皮肉の中に、ウイットもあり昭和の時代を彷彿とさせる文章だが、
引用されている言葉や事象が知らないことが多い上に漢字も難しい。
教養ないな〜と我が身を嘆きたい気分になる。

ベトナム戦争に従軍し、九死に一生を得て帰国、釣りが大好きでアマゾンの
ジャングルにも出かけて大物を釣り上げる、という著者の経歴そのままに、
読んでいてあまりに残酷であったり、ゲテモノであったりにうんざりしつつも、何か惹きつけられるものがあり読了した。

マリーアントワネットが「パンが買えなければお菓子を食べれば良い」と言ったとか言わなかったとか・・・の検証、世界各国の料理談義、中国料理、特に一流シェフに頼んで食した精進料理についての詳細、打って変わって
動物の内臓料理本来の旨さの話、果ては人間の極限状態にある人肉嗜食に
至るまで、その食にまつわる話はとどまるところを知らない。

元々文春社の「諸君!」という冊子に2年間にわたって連載されたものなのだが、その食指は世界を駆け巡る。

この本の半分も理解できただろうかと、甚だ心許ないが、
その好奇心と観察眼には大いに刺激を受け、知らない世界を覗き見た感覚が心地よい。

加藤シゲアキ「なれのはて」はタレントが書いた小説がどんなものか・・という全くの野次馬根性で借り出したものだ。

1枚の絵を巡るミステリー調の小説は読み出したら止まらなくなった。

秋田は明治時代から油田の開発が盛んでいくつかの油田があった。それは
歴史か地理かで学んだようで、朧げながら知っていたが現在も産出がなされているとは全く知らなかった。

その秋田の油田の開発者である「猪俣石油化学株式会社」・・全くの架空名・・の一族に関わるあれこれを描きながら、1枚の絵の作者を探し出す
ストーリーだ。
家族にはその数だけの成り立ちがあり、一見幸せそうに見える家族にもそれぞれの重い事情があったりする。

この小説はそんなところを炙り出して作り出されたものと思う。
色々と悲惨な事故があるが、最後はハッピーエンドとなり、ほのぼのとした気持ちを味わうこともできる。

ただその道程には禍々しい出来事もあり、現実の秋田油田をテーマにして、複雑な筋立てになっている。アクリル絵の具の開発などにも触れている。

この小説を読んで、史実として、秋田油田が産出量は少ないものの、現在も産出を続けている事、終戦の前日に油田が空襲に見舞われ、亡くならなくても良い命が失われていた事・・・(終戦が1日早ければと嘆いた人は日本の各地に大勢いたことだろう)など知らなかったことを、認識できたことは良かった。

絲山秋子の「神と黒蟹県」とても不思議な小説だった。
私は基本的にこのような小説は苦手だ。読み始めてすぐに読み終えるかしら?と不安になった。
しかし、投げ出す勇気もない。とりあえず理解できないことがあっても読み進む。ただ読み進む。
う〜ん、もう一度読み直すしかないようだ。
ただ文章の端々に表される言葉、文章には納得させられるものがある。「神」という存在を登場させて、人間世界の理不尽さを、単純に迎合集合する社会など、核心をついた言葉にこの作者のものを見る目を感じた。

平松洋子の「酔いどれ卵とワイン」は軽妙な語り口が読みやすく東京へ
出かけた電車の往復で読み終えた。
日常のささやかな発見や、感動、思いつきなど、その一つ一つはとても
ささやかなことだけれど、そこに目を止めて観察する力に刺激される。

「うん、うん、そうそう!」と納得するものもあれば、
「へえ〜そうなんだ、今度試してみよう」と思うレシピがたくさんあった。

結局、手元に置いておきたくて、Amazonに頼んでしまった。

巻末で藤原辰史(農業史、食の思想史・京都大学教授)との対談があり、大切にしている本、3冊が挙げてある。

大岡昇平  「野火」
池部良   「風の食い物」
山崎佳代子 「パンと野いちご」

機会を見つけて読もう。

異常気象の暑さの中で、なるべく外出しなくて良いようにお惣菜を考え、
工夫して空いた時間で読書できるのは、酷暑の効用かな!


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