MOA美術館
2ヶ月に1度の掃除を心がけている換気扇のお掃除を、3ヶ月ほどさぼってしまった。
換気扇を回す度に「あ〜、お掃除しなければ・・」と思い、心の片隅に罪悪感を抱えていた。
そんな換気扇や冷蔵庫の上、キッチンの丁寧掃除を終えた翌日、目覚めて
みれば気持ちの良い青空が広がっている。
確か、夫も頼まれていた原稿の仕事を昨日発送していた。
多分開放感を感じて、何か行動したいなと思っているに違いない。
その辺は計算しつつ、洗面所にいた夫に
「ねえ、ねえ、今日、熱海のMOA美術館に行かない?」
と問いかけると、「うん、いいけど、何やってるの?」と、案の定快い返事が返ってきた。
少し話が逸れるが、定年後の夫と二人うまくやっていくにはそれなりの配慮が必要だ。女性の場合、交流関係も多く外出の機会も必然的に多くなるが、男性の場合は女性ほど引退後の交流関係は多くないと思う。(人によるかも・・)
夫の場合、海の近くに転居してからは学生時代に経験したヨットをやりたいと、障がい者をヨットに乗せるボランティア活動をしていたのだが、悲しいかな体力的にヨットを持ち上げる力がなくなってきた。(障がい者を乗せるヨットは不慮の事故を防ぐために船底に錘がつけられていて、普通のヨット
より重いらしい)自分がお人に迷惑をかけたのでは意味がないと引退した。
ハーモニカもやっていたが、歯の治療が続く中、休みがちだ。
そんな中、私ばかり外出が多いのは気が引ける。これはジェンダーの問題
とかではなく、たとえ同姓同士だとしても、同じ屋根の下に住まいしたら、お互いに相手に気を使うのは同じだろう。
・・・とまぁ〜、前置きが長くなったが、そんな訳で夫と外出すべく急いで朝食を済ませる。
時刻表を検索すると現地に11時30分ぐらいには到着できそうだ。
熱海駅からのバス便も昼間は10分から20分おきには出ていて、東海道線との繋ぎも良い。
展覧会は「国宝「紅梅白梅図屏風」✖️「重文 風神雷神図屏風」という物で琳派を中心にした展示だ。
この展覧会については報道で知ってはいたのだが、このnoteで「ららさん」が詳しい情報を発信していらして、ぜひとも見たいと思ったが、会期も迫っており、行けないかも・・と弱気になっていた。
それが、会期1日を残した日に実現した。自ずと歩みはステップ状態・・
出発進行!!!
久しぶりに訪れたMOA美術館はやはりとても気持ちの良いところだ。
どこまでも青い、雲一つないお天気に恵まれて、見晴かす海も穏やかに
広がり、初島から戻る連絡船の航跡が白く、長く、陽を受けて美しい
(タイトル写真)
以前に車で訪れていた時には駐車場からだと直接美術館に入る入り口が
あり、知らなかったのだが、まず驚くのは入り口から美術館に通じる長い、
長いエスカレーターだ。
青い照明でちょっと神秘的な長いエスカレーターを3回ほど乗り換えて円形ホールに着く。万華鏡のようにクルクルと照明が変わる天井に圧倒される。
このエスカレーターを登っていくときのワクワク感は演出された物であると実感する。
さらにエスカレーターを登ると、ようやく外界に出る。
期待通りの風景に思わず深呼吸をして、しばしこの景色の中に身を置く。
(タイトル写真)
館内に入ると左手に、秀吉の黄金の茶室がある。解説によればこの茶室は組み立て式になっており、各地に持ち運んで茶会を開いたという。
この茶室、確か他でも見た覚えがあるが、どこだったか記憶にない。
いよいよメインの展示室へ。展示については「ららさん」のnoteにとても
詳しく解説されているので、ここでは割愛する。
(ごめんなさい!!ここに「ららさん」のnote記事の情報を転載したかったのですが、能力不足で出来ませんでした。)
尾形光琳、乾山の作品はもちろんのこと、琳派を彩った俵屋宗達、酒井抱一の作品もたくさんあり、琳派の先駆けとなった宗達と本阿弥光悦の関係の
展示もあり嬉しかった。宗達、光悦の手掛けた作品としての
「鹿絵下図和歌巻」が出ていた。
これも美しかったが、残念ながらこの巻物は皆断簡になってしまっている。
私の中ではなんといっても「鶴図下絵和歌巻」が大好きだ。
これは京都国立博物館の所蔵品だ。
宗達が長い巻物に描いた鶴の上に下に斜めにと流れるような飛翔の様子の
美しさ、それらを生かす光悦の和歌の散らし具合と墨の濃淡の美しさは
見飽きることがなく引き込まれてしまう。
話が逸れてしまったが、とにかく宗達、抱一の作品をたくさん見られて満足だ。宗達から始まった琳派が100年後に光琳によって花開き、そのまた100年後に抱一に受け継がれた。光琳も抱一も先人に強い憧れを持って自分の絵に昇華してきたのだ。
最後の部屋で、光琳の2点の屏風絵が展示され賑わっていた。明日が最終日で、好天となればそれも仕方ない。
面白かったのは、現代でも作家がそれぞれにイメージした風神雷神図を描いている。つい最近では、村上隆が京セラ美術館で展示した風神雷神図が耳に新しい。
現代物の展示もあった中で、安田靱彦の風神雷神図は興福寺の阿修羅像を加味して鬼になる前の姿を若々しい姿で描かれているのが、
面白かった。
展示は、日本人であることを意識させられる展示も多かった。
たとえばお香を包んだ包み紙の裏側に梅の絵を描いて、折り目を
開くごとに現れる梅の枝に感嘆する心持ちは、日本人が受け継いでいる現代にも見られる雅な特性ではないだろうか。
そんな気持ちを理解できる日本人に生まれてよかった〜との思いを強くしてくれる展覧会だった。
ここからは余談
ゆっくり鑑賞したので、2時過ぎてしまった。美術館にのレストランはどこも満席で、順番を待つ人が列を作っている。
とてもその列に並ぶ気持ちにはなれないので、セルフのティーコーナーで、
コーン入りのソフトクリームをいただく。
ここのアイスクリームがとても美味しいとどこかで聞いたような・・と思い出したのだ。
夫と「ソフトクリームなんて何年ぶりだろうね!」と景色を楽しみながら
食したソフトクリームは確かに美味しかった。
熱海駅まで戻りランチをしようと周りを見回したとき、10月に同窓会の帰りに1泊した折の熱海の運転手さんが、
「駅前の第一ビルの地下の食堂が美味しいよ」と言っていたのを思い出して、観光客のあまりいない駅前のビルに向かう。
いかにも観光客向けではない雰囲気の地下街には食堂(レストラン・・ではありません)が何軒かあり、空いているお店は3件ぐらいだった。ところが時間は3時を回ろうとしている。ランチ時間は過ぎていて空いているのは
中華そば屋さんだけ。運転手さんが勧めてくださった海鮮物を扱う店はもう看板を下げている。
今からアーケードの方に戻るのも億劫(年寄りはお疲れ気味)で、そのお蕎麦屋さんに入る。
食券を買って入るようになっているのだが、自販機のメニューに載っている写真が小さい上、食べたことのないようなものばかりでイメージが全く湧かない。つけ麺が多いようだ。なれない行動に、オドオドしながらようやく見つけたのが「シンプルラーメン」というメニュー。980円!
それと外の看板にあった「マグロトロコロッケ」200円・・これならお味は想像できると、このボタンもエイッと、押して食券を確保。
店には先客の女性が一人、中まで踏み込む勇気がなく一番入り口近くの椅子にとりあえず着席、食券を渡す。若い店員さんは感じ良い。・・というかごく普通・・当たり前??
「麺や」とあったので、麺が売りらしい。前の壁に貼ってあるポスターを見れば、「当店の麺は米粉を温泉水で練り上げ、もちもち食感を出しています。」とある。なるほど、そういえばラーメンの麺とは少し違う。確かにシコシコしている。分厚いバラ肉の煮込みと温泉卵、シナチク、海苔が添えられている。
他のポスターに目を移せば、「ヒルナンデス」に紹介されました。とあり、
「熱海に来て、ここの麺を食べないなんてないでしょう」みたいなコメントが踊っている。宣伝に踊らされた訳ではないが、
「ふーん、そうなんだ。確かに割と美味しい!!」
・・・というわけで、熱海に行ってまさかラーメンをいただくとは思いもよらなかったが、老人の社会経験とはなった。そして何より安上がりだった。