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10月の読書

タイトルの写真はひと叢のススキ。私は若い頃からススキが好きだ。
なぜか自分でもよく分からないが、ススキが原のススキが風に一斉に靡いて遠目に波のように揺れる様は立ち止まって眺めていたい。
三、四本のススキがわずかな風に反応して震えている様も好きだ。

野の花も摘んで来て家にも持ち込む

さて、11月に入り立冬も過ぎてしまったが、遅ればせながら10月に読んだ本の記事を書こう。

表紙は盲目の写真家 ユジェン・バフチャルの作品

10月は図書館に登録した本が1冊しか配本にならなかったので、他は以前読んだ家にある本を飛ばし読みなどして過ぎた。

「光の指に触れよ」池澤夏樹  2008年初版
池澤直樹・・初めて読む作家だ。どうしてこの本を図書館に予約したのか
定かでないが、たしかnoteの中でこの本に触れている記事を読んで興味を
そそられたのだったと思う。
この作者が今までどのようなものを著してきたのか、全く知らないままに読み終えた。

大きな電気会社で風車の設計をしていた林太郎と環境問題についてニュースレターの編集をしていた妻アユミ、男女二人の子供の4人家族に起きた出来事を通じて、男女の中に潜むわだかまりと環境問題などへの提起が描かれている。

この家族が一時バラバラの生活になるも、お互いを拘束しない、干渉しない中で見えない糸で繋がれており、理想に向かって歩み出す諸々が描かれる。
息子がとても好ましい役割をしている。

題名からも想像されるようにスピリチュアルな部分もあり、
「ふーん、こうゆう世界もあるのね・・」と思う部分もあるが、著者が最も著したかったのは、自然農法やパーマカルチャーについてではないだろうか?

permanentとagricultureを合わせたパーマカルチャー・・・
何か自然環境に良いことらしいと言葉としては触れたことがある気がするが、それに関する知識は皆無に近かった。

「エネルギー資源の無駄を省き、自然環境に配慮した持続可能な暮らし」
をコンセプトに1974年にオーストラリアのタスマニア大学で教えていた
教授とその弟子によって考案されたものだそうだ。

自然環境や生態系への破壊などから環境問題への関心が高まり、その考え方が世界中に広まり、日本にも1996年にパーマカルチャー・センター・ジャパンが設立されている。実際に実践されているコミュニティーもあるようだ。
国連でSDGsが採択され、この考え方が一層注目されている。

著書の中では、主人公たちが集約農業ではなく、多品種の植物を扱い土地に負担をかけないで自給自足できる農業を目指し、エネルギーも自給出来る
ような共同体・・「家族よりゆるくて家族より広い」・・
を目指すようになる過程が描かれる。

そこに至るまでの作中人物たちの想いや葛藤の中に、善意の人たちが多く描かれ気持ちよく読み進んだ。

池澤夏樹は世界各国を旅し、自然と人間の関係について深く考え、そうした作品も多いようだ。

2008年初版からもう10年以上が過ぎ、地球環境はますます悪化し、気候変動も著しい。一主婦のささやかなSDGsでは何ともしようがないが、蜘蛛の糸を弄るようにそこに希望をつなげるしかないのだろうか?

芥川賞をはじめ多くの文学賞も受けているようなのに、全く知らなかった。関心を持てる新しい作家に出会え、なんとなく心踊る気分になる。



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