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12月の読書
タイトルは、お隣のベランダに咲くサザンカ。
我が家からお隣のベランダに咲くサザンカが、毎年鮮やかな色を見せて
くれる。色の少ないこの時期の楽しみだ。
昨年1年間に読んだ本の感想をプリントアウトしていて、12月に読んだ本の感想をnote にUPしていないことに気づいた。
(あの本を確か読んだとか、内容を思い出せない時パソコンを立ち上げて
調べるよりプリントアウトしたものを見るほうが早いので、1年ごとにまとめてプリントしている)
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・・・ということで遅まきながら、UPします。
ただ12月は図書館間に依頼した本が最近の著書が多かったので
「用意できました」の連絡が少なく2冊しかない。
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2024.12 「とあるひととき」 三浦しおん他
12月は何かと忙しいので軽い本が良いと思い、エッセー集を選んだ。
三浦しおん・池澤夏樹・道尾秀介・綿矢りさ・
西加奈子・吉本ばなな・角田光代・高橋源一郎・
重松清・村山由佳・川上美映子・小川洋子・
森絵都・浅田次郎
以上14名の作家の、朝、夕暮れ、午後11時 に関わるエッセーをまとめたものだ。どの作家も読んだことのある作家なので、親しみを持って読めた。
どれも作家の私生活が偲ばれるものだった。
2024・12 「スティルライフ」池澤夏樹
池澤夏樹が芥川賞をとった作品というので、手にとってみた。
中身は「スティルライフ」と「ヤーチャイカ」という
二つの物語からできている。
全く違う物語だ。
どちらも1度読んだだけでは理解が追いつかない。
いや、正確にいえば2度読んでも理解できたとはいえない。
できれば手元に置いて何度でも読み直してみたい衝動に駆られる。
それは著者の透明感に満ちた表現、語彙、言い回しに
「なんて綺麗な表現だろう」と魅せられることに起因している。
「スティルライフは」で2人の青年を通して著者は何を訴えようとしているのだろうか?
冒頭に出てくる
「世界と君は、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれに真っ直ぐ立っている。・・・・外に立つ君とは別に、君の中にも一つの世界がある。君は自分の内部の広大な薄明の世界を想像して見ることができる。君の意識は二つの世界の境界の上にいる」
難しい!!
宇宙から降ってくる微粒子カミオカンデは、この研究で日本人が、
ノーベル賞を取ったことで知っているが、チェレンコフ光というのは
その宇宙から降ってくる微粒子をいうらしい。
遠い宇宙で星の一つが爆発すると、その微粒子が何千年と宇宙を飛行して、
いくつかがこの地球に降ってくるのだという。
その微粒子の数はグラス1杯に毎秒Ⅰ兆ぐらいというのだ。
この手の話には全く弱く、あまり興味のない私でもそう聞くと、なんか
ロマンチックと思ってしまう。
こんな理科的な話を物語の中に組み込んでくるのが著者の特徴に思える。
全く自分の中にない話に・・普通なら引き込まれないはずの話に
なぜか引き込まれてしまう魅力がある。
「スティルライフ」は横領をしてしまった男が時効を前に展開する行動を
描き、本当は不穏な雰囲気になる話が、ここでは平穏で静寂が支配する。
そして、私には物語が何を語りかけて読者に何を感じて欲しいのか、
よく理解できないままだ。
ただ、とてつもない大きな宇宙に住んでいる私たちが、日常の些細なことに
囚われていることを認識させようとしているのか・・・。
そして、スティルライフというのは静物画を表す言葉だと初めて知った。
「ヤーチャイカ」の方は前編よりは理解しやすかった。
少女が恐竜を飼うというSFチックな話を交えて、少女と二人暮らしの
父娘の話だ。そこにロシアのスパイ?と思われる人物を登場させて、物語は進む。
これも不思議な話だ。
父親がシベリアの材木商と称するロシア人と知り合い、お互いに幼い頃の話で共通点を見出し打ち解けていく。父親の話にはSFチックなところはないが、やはり科学的な話を盛り込んでいる。父親に自分がロシアの情報機関で働いていることを明かし、情報機関の役割が世界の均衡を保つことに貢献していると語る。
軍備の話の中で「平衡注水」という話が出てくる。これは、船が損傷を受けて浸水した場合、浸水した水を船の下部に導き重心を下げて、船の平衡を
保つという物理的な方法を言うらしい。
ここで交わされる世界の平和への想い、ロシアの立場などの会話は深く、
重みを見せる。
色々の葛藤を抱えていたそのロシア人の友人は、その仕事から手を引き故郷へ帰り、日本語学校の先生となる決意をする。
父親はその気持ちをおめでとうと寿ぎ、将来ロシアに遊びにいくと会話をかわす。
普段は全く普通の中学生の娘が恐竜を飼っているという話を、どう言う意図で盛り込んでいるのか、何を示唆しているのか、私にはよく理解できなかった。